第252話 私の将来不安ですっ!?
【 美波・牡丹 組 1日目 PM 9:00 洞窟 】
「ここは…?」
周囲を見渡すと薄暗く湿った空間に私はいる。洞窟だろうか。今まで配置された事のないエリアなのは間違いない。慎重にいかないと。
『そうだな。』
声のする方を向くとノートゥングがいた。私の親友であり相棒である心強い仲間。彼女がいるだけですごく安心する。
「ノートゥング!もうっ!また勝手に出てるんだからっ!」
「ククク、それが妾の特権だからな。残念ながらシンタロウとは別になってしまったな。」
まだ確認してなかったけどタロウさんとは別になっちゃったのか。残念だなぁ。ん?今『シンタロウ』って言った?今まであまり名前で呼ばなかったのにさらっと言ったよね?なんか…心理的距離が縮まってないかな…?やっぱりさっき何かあったんだ。まさかとは思うけどノートゥングもタロウさんの事が…ううん、今はそれを考えてる場合じゃないわ美波。まずは生き残る事が先決よっ!
「じゃあ私と一緒なのは…」
『あそこで心が折れとる花の娘だ。』
ノートゥングが指し示す方向を向くと、膝から崩れ落ちたように四つん這いになっている牡丹ちゃんがいた。
「ううっ…離れてしまいました…運命で結ばれている筈なのに…」
タロウさんと同じ組じゃないから心が折れちゃったのか。依存度強いなぁ。私が将来タロウさんのお嫁さんになった時は刺されちゃうんじゃなあかなぁ。
ーー自分も依存度強いのを棚に上げ、美波は牡丹へと近づく。
「ぼ、牡丹ちゃんっ!すぐにタロウさんたちと合流できるよっ!だから元気だそうよっ!!」
このままヤンデレモードになられたら私1人じゃ宥めるの苦労しちゃうもんね。それに私だって早くタロウさんと合流しないと匂い成分の補給が出来なくなっちゃうし。
「…合流。そうですね。合流をすれば良いだけの話ですよね。」
ーー牡丹に活力が戻り立ち上がる。
「よかったっ!じゃあなるべく早く合流できるようにしようねっ!」
「そうですね。急ぎましょう。」
ーー牡丹が洞窟の先へと歩き出す。何のアテも無いのに歩き始める牡丹を美波は慌てて止める。
「ま、待って牡丹ちゃん!!ドコに向かうの!?」
「何処…?タロウさんの元へですが…?」
ーー牡丹はキョトンとした顔で美波を見る。
「闇雲に探しても合流できないよっ!!落ち着こう!!ねっ?」
「私は落ち着いています。ちゃんとタロウさんが居られる方向へ向けて歩みを進めております。」
「えっ?な、なんでわかるの?」
「タロウさんの匂いがする方へ向かっているだけです。」
……うわぁ。そんな可愛い顔して牡丹ちゃんってクンカーなんだね。それをタロウさんに知られたら流石に引くと思うけどなぁ。節度は大事だからねっ!
ーー自分は達人級のクンカーのくせによく言うわ。
でもそれでタロウさんたちと合流できるならすごい特技よね。うんっ!ポジティブに考えようっ!
「す、すごいね牡丹ちゃんっ!!」
「ふふ、これぐらい大した事ではありません。では参りましょう。」
ーーその時だった。
2人の耳に人の足音が聴こえる。
ーー美波はその音に足を止めるが牡丹は止まらなかった。
「ぼ、牡丹ちゃん!?」
「はい?どうされましたか?」
ーー牡丹が止まらないので美波が小走りで牡丹側へ向かう。
「足音聴こえたよねっ!?」
「はい、聴こえました。」
「聴こえたんだよねっ!?それなら対策練るべきじゃないかなっ!?それに足音はこっちの道だよっ!?違う道にした方がよくないかなっ!?」
「それは無理ですね。こちらからタロウさんの匂いがしておりますので。」
…忘れてた。牡丹ちゃんはタロウさんが絡むと人が変わるんだった。ヤンデレモードに入ってなくてもそれは同じだったんだ。
ーーそして当然出くわす事になる。
「おおっ!?おいおいおいおい!?女だぜ!?女!!」
「しかも半端なく可愛いんだけど!?神クラスじゃん!?それもどっちもだぜ!?」
うっ…男かぁ…嫌だなぁ…チャラそうな感じだし…何だか気持ち悪いし…
ーー美波たちがエンカウントした男たちは2人だ。どちらも三十代ぐらいで色黒の建設現場で働いていそうな風貌をしている。美波からすれば生理的に受け付けないような清潔感のカケラも無い男たちだ。
「ウヒヒ、こんなイイ女を好き放題出来ちまうのかよ。どっちも信じられねぇぐらいイイ女だぜ?選べねぇよ。」
「ヒヒヒ、どっちも順番コにヤレばいいじゃねぇか。好きなだけヤレんだからよ。」
「それもそうだな。くぅー、早くヤリてぇ!!」
しばらく下衆な男たちを見てなかったけど相変わらずね。本当に最低な生き物だと思う。私が成敗してあげるわっ。
「なぁ姉ちゃんたちよ。大人しく俺たちに従えば痛い思いーー」
ーー男の1人が喋っている途中に首が落とされる。隣にいるもう1人の男も。
当然それをやったのはーー
「邪魔です。」
ーー牡丹であった。忘れてはいけないが牡丹は慎太郎以外の男はどうでも良い存在だと思っている。話し合いなどする必要も無いし、殺す事に何の抵抗も無い。特に今は慎太郎と離れてイライラしているのでいつも以上に容赦は無い。
「さあ美波さん。参りましょう。」
「あ、はい。」
ーー美波は思った。
『絶対私がタロウさんのお嫁さんになったら刺される。』
と。
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