第251話 スタート
ーー呼ばれている。
ーーいつも同じ声。
ーー知ってる声だ。
ーー懐かしい声。
ーー懐かしい?
ーー何でそう思うんだ?
ーーそれは知っているからだよ。
ーー知っている?誰を?
ーー私を。
ーーお前は誰?
ーー私は「タロウさん、起きて下さい。」
誰かに起こされた事により俺は目を覚ます。誰かって言っても楓さんだが。
「…うー、おはようございます。頭が働かないな…」
「タロウさん、イベント中です。」
「…イベント?あ!!」
だから何で俺はいつも寝てるんだよ。アホの子なんじゃないの?
「毎度毎度すみません…!!」
「ウフフ、大丈夫ですよ。」
楓さんがニコニコしながら喋っている。
「…えらくご機嫌ですね?」
「はい♪タロウさんと一緒なので♪」
「…そういう事言うのはズルいですよ。」
「惚れさせたいので仕方ありません♪」
…俺ってギャップに弱いのかもな。
「…ていうかココは…?」
辺りを見渡すと薄暗く湿ったような空間に俺たちはいる。察するに洞窟の中だろうか?
「洞窟みたいですよね。」
「俺もそう思いました。スタートが洞窟内って事は、洋館の時みたいに外に出るのは大変なのかもしれませんね。」
「可能性は高いですね。それに薄暗くて周囲が見えない分トラップを見破るのは大変だと思います。」
「確かに。なかなかに嫌なエリアですね。俺たち2人だけですか?」
「私もいます!」
後ろから声がするので振り向くとアリスがいた。
「アリス!」
「アリスちゃん、ご苦労様。何かあったかしら?」
「特に何も無かったです。でも行き止まりではありませんでした。暗くて先が見えないので確かな事は言えませんが相当長い道だと思います。」
「なるほど。どちらの道を行くかの選択がかなり重要かもしれないわね。」
2人ともしっかり動き始めてるのに俺だけ呑気に寝てちゃダメじゃん。本当にこのままではリストラされてしまう。みんなの三倍働かないと。
「見に行ってくれたのか。偉いなアリスは。」
「ふふふっ、私もみんなの力になりたかったので行かせてもらいました!」
「人の足音は聴こえなかったので探索という名目で行ってもらったんです。」
「そうだったんですね。2人ともありがとう。」
俺は2人の頭を撫でる。
「……!?」
……あ、しまった。楓さんまで撫でちまった。
「す、すいません…!?」
「ウフフ、とても気持ち良かったです。これからは私もお願いします。」
「…考えときます。」
「む…!タロウさん!手が止まってますよ!!」
「お、おう!」
やれやれ、アリスのヤキモチ焼きには困ったもんだな。
俺はアリスを撫でながら口を開く。
「作戦を立てましょう。俺たちは3人だけど美波と牡丹が2人なのでなるべく早く合流したい。戦力的に”具現”の出来る2人が一緒だから大丈夫かもしれないがトラップに掛かると相当マズい。」
「そうですね。私がいればスキル解除出来るし、アリスちゃんがいれば回復出来る。だけど美波ちゃんと牡丹ちゃんはそういう装備構成じゃないですものね。」
「でも私たちが焦るのも危険じゃないですか?暗くて視界も悪いから奇襲を受ける可能性も高いと思います。」
「もちろんそうだ。だから俺たちは無理に動くのはやめよう。慎重にゆっくり進もう。」
ーー楓とアリスが互いに顔を見合わせる。慎太郎の言葉の意味がわからないといった具合だ。
「すみません、どういう意味でしょうか?」
「いや、牡丹ならこっちに向かって来てますよ。間違い無く。」
ーーもう一度楓とアリスが互いに顔を見合わせるが、2人はハッとしたような顔をして慎太郎の言葉を理解した。
「俺たちはエリアの探索を重点的に進もう。きっと合流は早いと思いますよ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます