第248話 デート

…どうしよう。何だがわからんが俺はノートゥングとカラオケにやって来ている。コイツが帰りたくないとか言い出すからとりあえずカラオケに入っちまったんだよ。基本、デートなんて数える程しかした事無い童貞の俺にはカラオケしか浮かばなかった。いや、だって暑いじゃん?涼しい所って思ったらココしかさ。つーか久しぶりにカラオケ来たけど薄暗くね?それに狭いし。こんな所でこの美人と2人っきりだと流石にドキドキするよな。性格はアレだけど顔はアルティメットだもん。

落ち着け俺。クールだ。クールになるんだ。


「な、なんか飲む?」


どもってるんだよ馬鹿!!落ち着けって!!いつもノートゥングとは普通にしてるだろ。それと同じでいけばいいんだ!!


『フッ、こんな暗がりに妾を連れ込んでナニをしようというのだ?』


「な、何が!?カラオケってこういう所なんだよ!!」


『冗談だ。中々面白い空間だな。声が空間内にしか届いておらぬ。壁に術式でもかけられておるのか。』


「それは防音壁ってやつだ。この世界の技術だよ。」


『ほう。その様な壁があるとは知らなかった。この世界は妾の知らぬ事がまだまだたくさんあるのだな。』


「知らない食べ物だってたくさんあるぜ。こういうカラオケのパフェとか結構美味いんだよ。」


『『ぱふぇ』?なんだそれは?』


「ちょっと待ってて注文するから。」


『……。』


ーー慎太郎が注文してから数分後、パフェが2つ届く。


『な、なんだこれは!?アイスもプリンも乗っているではないか!?』


ーーパフェのあまりの迫力にノートゥングは目を輝かせる。


「こういう所にはコイツがあるんだよ。家では食べられないのが残念だけど店で食べる時のデザートってやつさ。とりあえず食べてみ。」


『う、うむ。では頂こう。』


ーーノートゥングがスプーンでプリン、アイス、生クリームを同時にすくって口へとほうばる。もはや語るまでも無い。ノートゥングの顔が緩んだ瞬間であった。


『んーー!!美味い!!』


「だろ?このウエハースにつけながら食べるのも美味いんだぜ。」


ーー慎太郎がウエハースにアイスをつけて手本を見せる。


『ほう。どれ、妾もやってみよう。』


ーーノートゥングがウエハースを取り、慎太郎と同じように食べてみる。サクサクと音を立てながら幸せそうに食す。


『んー!!これも美味い!!『うえはぁす』とやらの食感も最高だ!!』


「本当に甘いもの好きだよな。そういうトコはちゃんと女子やってんじゃん。」


『黙れ。』


「そんじゃ甘いもの巡りでも行くか。いくつか良い店知ってるから女王様をエスコート致しますよ。」


『まだ他にもあるのか?』


「おう。」


『行きたい。連れて行け。』


「オッケ。んじゃ食べたら出ようぜ。」


『……。』


「ん?どーした?」


『…何でも無い。』


「なんだよ、言えよ。」


『何でも無い。』


「言えって。」


ーーノートゥングが少し何か考えたような素振りをした後に慎太郎のパフェのさくらんぼを奪い取る。


「あ!!俺のさくらんぼ!!」


『フン、油断している貴様が悪い。』


「か、返せ!!」


『あーん。』


ーーノートゥングがさくらんぼに自身の舌を絡めるようにしながら捥ぎ取る。


「あぁっ!!食べやがった!?」


『うむ。美味い。』


「この野郎…食べ物の恨みは恐ろしいという言葉を知らんのか…!!」


『隙あり。』


ーー更にノートゥングは慎太郎のウエハースを奪い取った。


「俺のウエハース!?返せ!!すぐに返せ!!」


『フン。』


ーーノートゥングがバリバリ音を立てて慎太郎のウエハースはノートゥングの腹へと消えていった。


「あぁ…!!も、もう許さねぇ…食い物の恨み…!!」


ーー慎太郎がノートゥングに摑みかかろうとする。

だがノートゥングは慎太郎の頭に拳骨を喰らわせ沈黙させる。


『さて、そろそろ行くか。』


「……はい。」




********************



【 慎太郎のマンション 】




「タロウさんとノートゥング何してるんだろう…」


「タロウさん、スマートフォン置いて行っちゃいましたから連絡取れないですもんね…」


ーー4人は昼食を摂っている。慎太郎が戻って来ない為、先に食べる事にしたのだ。


「……牡丹ちゃん、気持ちはわかるけどハイライト戻しなさい。」


「…ふふ。ふふふふふふふふ。タロウさんと逢引…ふふふ…ふふふふふふふふ。」

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