第227話 夏に勝負をかけますっ!

夏ですっ!8月になりましたっ!私は今日から夏休みですっ!今年の夏は色々なイベントが楽しみだなぁ。夏祭りに花火、それに旅行!!今から待ちきれませんっ!!

あと…タロウさんとの仲をもっと進展させられたらなぁ…


あ、そうそう。この2ヶ月の間に色々な事がありました。


まずはオレヒスです。

楓さんの嘘泣き騒動があった晩の事、運営から長期メンテナンスのお知らせが来たんです。期間がいつまでかの連絡も無く、ただ長期メンテナンスの為に暫くログインできませんとだけ私たちは知らされました。”闘神”である楓さんと牡丹ちゃんにも特別な通達も無く、私たちと同じ情報しか与えられませんでした。そして2ヶ月が過ぎた今でも何の連絡もありません。もうオレヒスをやる事は無いのかな…?それならそれでいいと思っている私がいるのも事実です。お父さんの死を無かった事にしたいと思う気持ちに変化は無い。でも…この生活を壊したく無いという気持ちが強いのも事実です…


二つ目が楓さんのお引越しですっ!

とうとう茨城に職場を移し、タロウさんのマンションで一緒に暮らす事になりましたっ!それによりみんなとの時間がもっと楽しくなりましたっ!でも相変わらず楓さんはお酒が好きで飲み過ぎるからタロウさんにしょっちゅう怒られていますっ!


三つ目はアリスちゃんが小山小学校での生活をスタートした事ですっ!

アリスちゃんはすごくしっかりしているから夏休みの宿題は7月中に片付けて日中はタロウさんともっと先のお勉強をしていますっ。まだお友達を連れて来た事は無いけど、夏休み明けに上手くいくといいなぁ。


四つ目は牡丹ちゃんのお店が軌道に乗った事ですっ!

あの後私と牡丹ちゃんでお店のホームページを作成したらこれが大当たり!安定してお客さんが来てくれるようになったんですっ!私も大学がお休みの時はお手伝いに行ってるんですよっ!


五つ目は私とタロウさんの仲が……全く進展してない事ですっ!!

2ヶ月経ったのに何も進展が無い…キスだってたまにしかしてくれないし…私じゃダメなのかなぁ…


『だから言ったであろう、妾に身体を貸せ。あんなチョロい男など妾無しでは生きられぬようにしてくれるわ。』


だって…それは私じゃないし…やっぱり初めてはその…2人っきりでロマンティックなムードでしたいし……………ねぇ。


『何だ我が友よ?』


「何で私の心の声を読んでるのよっ!!!」





ーー



ーー



ーー




「…また美波ちゃんは洗濯物干しながらブツブツ言ってるわね?クセなのかしら?」


「あ!!楓さん、またどら焼き全部食べちゃったんですか!?」


「エアコン効いた部屋で食べるどら焼きは最高よね。」


「牡丹さん帰って来たら大変な事になりそう…」


「さて、アリスちゃん。そろそろ行くわよ。今日こそはSASUKEを倒すんだから。私はアテネをこの2ヶ月で完全に極めた。ランクも”戦姫”まで上げた私に死角は無い。もう負けないわ。」


ーーアリスは思った。

『SASUKEって人は”戦姫”よりも五つ上の最高階級”神姫”なのだから絶対勝てないと思います。』

と、心の中で思っていた。





********************





「週末の花火大会楽しみだよな。」


夕食時にタロウさんが口を開く。


「ふふふ、そうですね。花火大会なんて何年振りでしょうか。」


「だよなー、俺なんて10年以上行ってないよ。」


「…女性と行かれたのですか?」


牡丹ちゃんがハイライトを若干消しながらタロウさんへ問いただす。それには私も楓さんもアリスちゃんも興味津々だ。


「…あはは、俺はモテないからそんなのある訳ないんだよなぁ。」


「ふふふ、そうなのですね。今年から良い思い出を作りましょうね。これからもずっと。ずうっと。」


それを聞いてホッとしたけどタロウさんが悲しい目をしていたのを私は見逃さなかった。

そうよ、私の使命はそれなのよっ。

アインスが私に見せてくれたタロウさんの過去を私が癒してみせる。タロウさんの全てを受け止めて絶対癒してみせるっ!それが正妻としての務めよ美波!!


「ウフフ、お兄さんはー♪私たちの浴衣姿見たかったりするんですかぁー?」


若干悪酔いし始まっている楓さんがタロウさんに絡み出している。


「楓さん飲み過ぎですよ。また禁酒にしますよ。」


「こら!答えなさい!!」


「…そりゃ見たいですよ。」


ーーこの時4人の目が鋭く輝く。

4人がスマホを取り出し各々が何かを検索し始める。


「え、何その連携。怖いんですけど。」


やはりみんな考える事は同じ。この夏に勝負をかけるつもりなのね。

いいわっ!やってやるわよっ!!

タロウさん好みの可愛い浴衣を見せて私にメロメロにさせるんだからっ!!

そしてっ!!この夏、美波は大人になりますっ!!


ーーそれぞれの浅ましい想いが交錯する中、舞台は週末の花火大会へとシフトする。

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