第228話 花火大会

8月4日土曜日、俺たちは花火大会へとやって来た。地元ではかなり大きい花火大会だけあってかなりの人が集まっている。そんな中でも行き交う人たちは俺たちを見る。当然だ。人類の最高点ともいえるような美女たちがここに集まっているのだから。


「人が多いですね…!」


そう言ったのは牡丹だ。自分と同じ名を持つ花、牡丹の柄が刺繍された浴衣を身に纏っている美少女が俺の隣にいる。

可愛い…可愛すぎて直視出来ない。浴衣装着の破壊力が半端じゃないぞ。もう清楚代表じゃん。清楚力が限界突破してますよ!!それに髪をサイドテールにしてるのがまた良いッ!!もうね、エロさしか出ていませんよ。暗がりに連れ込んで悪い事しちゃいたいですよ。


「そ、そうだね。牡丹はここの花火大会は初めて?」


いかん。牡丹のあまりの可愛さにどもってしまった。カッコ悪い…


「はい。基本的にこのような場には無縁な人生でしたので。」


「ウフフ、私もよ。花火大会なんて小さい頃に両親と行った時以来ね。」


牡丹の言葉に反応したのは楓さんだ。牡丹と同じように花柄である椿を基調としたレトロな作りの浴衣を身に纏っている。可憐とはこの人の為にある言葉では無いかと言いたくなる程の美しさが楓さんから溢れていた。そして髪をアップにして編み込んだスタイルがもう最高ッ!!もうね、大人のエロスですよ。お城に連れ込まれても文句言えませんよ!?


「へ、へぇー、そうなんですね。」


落ち着け俺。テンパりすぎだ。クールだ。クールになれ、田辺慎太郎。


「私もです。お父さんとお母さんがいた頃は夏には花火大会に行きましたが、去年まではそんな状況では無かったので…。でも今年は大好きなみんなと一緒に来られて凄く幸せです!!」


そう言ったのはアリスだ。牡丹と楓さんと同じように花柄で統一したのか、紫陽花柄に蝶が舞っている姿の刺繍が施された少し大人なテイストに仕上がっているお洒落な浴衣だ。可愛い!めっちゃ可愛い!楓さんとお揃いの髪型にしてるのがまたイイね!!でも全然ムラムラはしないからやっぱり俺は正常だ。心底安堵した。


「そうだね。アリス、何でも好きなの言いなね。店ごとだって買うからさ!遠慮なんかするなよ!」


「ふふふっ、わかりました!」


「良かったねアリスちゃん!めいっぱい楽しもうねっ!」


弾けるような笑顔で美波が言う。やはりみんなで統一する事にしたのだろう。美波の浴衣も花柄だ。だが刺繍は同じでは無い。美波は朝顔柄の水色を基調とした浴衣を身に纏っている。更に俺の男心をくすぐるのがそのアップにした髪型だ。下めのお団子がサイドにズレて襟足が見える事により清涼感が際立つ。正に大和撫子という代名詞が似合うのが美波だ。ただでさえエロい雰囲気の美波がもっとエロくなってるじゃねぇかッ!!最近妙に熱っぽい視線を俺に向けてくるし、やたら力強いし、優しいしさ。2人で抜け出して車の中で襲っちゃおうかな…


「じゃっ、じゃあ席に向かおうか。」


お、落ち着け俺!!クールになるんだ。この美女軍団をエスコートするのが俺の使命だろッ!!


「席…ですか…?」


ーー綺麗どころ4人が不思議そうな顔をして慎太郎へ尋ねる。


「あ、コレです。」


ーー慎太郎が4人にそれぞれ何かを配る。


「SS席って…有料のじゃないですか!?」


「どうされたのですか!?」


「どうせなら立ち見とかじゃなくてちゃんと見たいじゃないですか。だから予約してたんです。」


ーーこういう事に関しては慎太郎は本当に有能である。


「こんなに高い買い物しなくても良かったんですよ?」


「楓さんの仰る通りです。いつも良い暮らしをさせて頂いているのにこのような贅沢までさせて頂くと申し訳無い気持ちになります…」


「そんな気にしないでよ。俺はみんなと楽しみたいからやっただけだよ。俺は喜んでくれたら嬉しい。」


ーー慎太郎の言葉を聞くと4人は互いに顔を見合わせて頷く。


「では遠慮なく楽しませて頂きます。」


「はいっ!最高の思い出を作りましょうねっ!」


「本当にありがとうございます!私は幸せ者です!」


「ウフフ、花火を見ながらの一杯はさぞかし美味しいでしょうね。」


ーーそれぞれが慎太郎への感謝を態度で示す。この数ヶ月で彼らの間には確たる絆が生まれた。例え慎太郎に選ばれるのがこの中の一人であったとしてもその絆は永久に変わらないであろう。それ程までに強固な絆が彼らにはある。


「うっし!じゃあ時間まで出店で楽しもうか!」


「ふふふ、楽しみです。僭越ながら私は型抜きと射的には自信があります。」


「ほう。俺も型抜きに関しては自信があるぜ。一丁勝負するか牡丹?」


「望むところです。いくらタロウさんといえども手加減は致しません。」


「フッ、そんな心配は無用だ。俺はそれで小遣いを稼いでいたぐらいのマスタークラスだぜ?それぐらいの実績が牡丹くんにはあるのかね?」


「ふふふ、やりますね。タロウさん程の武勇伝では御座いませんが、私は小学生の時に両親と訪れた際、1万円の配当であるお団子の型だけをやって10万円程稼いだら周辺のお祭りで出入り禁止になったぐらいしかありません。」


「悪辣すぎだよね!?そりゃあ出禁になるよね!?むしろ1000円以上の型なんて換金出来たんだね!?初めて知ったよ!?参りました!!降参です!!」


「ふふふ、では僭越ながら私が御教え致します。手取り足取り、色々と。」


「ず、ズルいよ牡丹ちゃん!!私だって金魚すくいなら負けないよっ!!」


「わ、私もスーパーボールすくいなら負けません!」


「ウフフ、なら私はクジにゲーム機当たりが入って無かった時の摘発なら負けません。」


「あはは、じゃあそれぞれの得意分野の腕を見せて頂こうかな。楓さんの摘発は無しナシで。とにかく今日は楽しもう!!」


ーー楽しい花火大会の夜が幕を開ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る