第219話 殺意に惹き寄せられて
「DVDを借りに来る事なんて久しぶりです。とてもワクワクしております。」
「俺も結構久しぶりだなー。」
「美波さんたちと来た事は無いのですか?」
「ないなー。寧ろ女子と来たのが初めてだわ。」
「ふふふ、そうですか。初めてですか。」
何を嬉しそうな顔してんだか。
俺と牡丹は約束通りホラービデオを借りる為、近所のビデオ屋であるモリリンにやって来た。モリリンといっても牡丹の実家近くの所では無い。モリリンは全国に展開するチェーン店なので割とどこにでもあるのだ。
美波は夜食の用意、楓さんとアリスは買って来たゲームに勤しんでいるから俺と牡丹だけ行く事になった。これってデートだよな?女子とビデオ屋行くとか憧れだったんだよなぁ。それもこんな美少女とだぞ?生きてて良かったな。
車から降りた俺たちは店内へ入る。ウチの近所のモリリンは結構デカい。レンタルコーナー、書籍、ゲーム、文具とかなり豊富に揃えてあるので見てるだけでも結構な時間が潰せる。早速ビデオコーナーへと行くと結構ガラガラであった。土曜の夜にも関わらずこの客入りではそのうちレンタルコーナーはお取り潰しになるんじゃないだろうか。
「随分と空いておりますね。」
「だな。もう需要ないのかな。」
「あまりDVDは見ないかもしれませんね。私はアナログ人間なので電子媒体は好みませんが、殆どの方は電子書籍や電子機器を使用しての映像視聴をなさるのでしょうね。」
「なんか悲しいな。俺も本は紙じゃないと嫌だし、タブレットやPCで動画見るのも好きじゃないなぁ。やっぱ家でビデオ見てるのが最高だよ。」
ーー牡丹は突っ込まないがビデオはおっさん臭いぞ慎太郎。今時ビデオなんて言わないんだからな。
「ふふふ、やはり私たちは価値観が同じですね。」
「そうだな。牡丹といると楽しいからな。」
ーーまたこの馬鹿はいらん事言ってる。
「そんじゃホラーコーナー行きますか!今日はちょっとぐらい夜更かししちゃおうぜ!」
「ふふふ、そうですね。」
********************
「あー、彼女欲しいよなぁ。せっかくの土曜の夜なのに男だけでモリリンって悲しくね?」
「なら部活やりゃーいいだろ。青春してれば女マネと付き合えんじゃね?」
「高校で部活はいーわ。プロになれる訳でもねーのにガチになれねーよ。それに勉強遅れて馬鹿大に行く事になったら人生詰むじゃん。」
ーー書籍コーナーにて立ち読みをしながら高校生と思われる男3人が会話をしている。
「琢磨もそう思うだろ?」
「別に…女なんかいらねーよ。」
「ブハハ、強がってんなよ!!俺ら3人とも彼女ナシ童貞なんだから!!」
「おいおいおい!アレ島村牡丹じゃね!?」
「は?どこ?」
「あれあれ!レジ近くで文具見てる女!!」
ーー男の1人が指を指しながらもう1人の男へと教えている。
「うわ、マジじゃん!!オーラ半端ねーな!!」
「やっぱスゲー可愛いわー。ガチめに水口杏奈より可愛いだろ。」
「顔は良いし、スタイル良いし、何よりあの胸だよな。くー、揉みてえー!!」
「どうする?声かけてみる?」
「ブハハ、無理だろ!俺らなんかじゃ相手されねーよ!それに学校でエロい目で見てるの気づいてるだろ。クラスの男はみんな嫌われてんじゃん。」
「いやー、だからここで優しくすれば…ってアレ彼氏か?」
ーー文具売場で商品を見ている牡丹の元に会計を終えた慎太郎がやって来る。
「マジかよ…超イケメンじゃん。」
「あの島村の顔見ろよ、完全に女の顔じゃん。俺らにはゴミを見るような視線向けてくるくせに。」
「やっぱ顔かー。くそー。あの男みたいな顔だったら島村とヤリまくれたのかー。あの胸揉みまくりとか羨ましすぎる!!」
「馬鹿じゃねーのお前ら。」
ーー黙って成り行きを見ていた琢磨と呼ばれる男が悪態を吐く。
「は?何がだよ。」
「元々相手なんかされるわけねーだろ。」
「何ムキになっちゃってんだよー。」
「なってねーよ。くだらねー。」
「くだらねーのはお前だろ。お前が島村は募金やってるとかクラスに広めたんじゃん。」
「うっぜ。もう帰るわ。」
ーー琢磨が男たちへ怒りを露わにしながら店から出て行く。
「なんだアイツ。」
「アイツが広めたってガチなん?」
「らしいよ。琢磨の奴と島村は幼馴染なんだって。それでウリ持ちかけたら断られたって影で言われてたから。」
「だっさ!流石にないわー。もうハブじゃね?」
「だよな。あんな奴といると俺らの内申まで下げられるからな。」
********************
ーー琢磨が店を出た時、ちょうど牡丹が慎太郎の車へと乗り、仲良さげに出て行く所を目撃した。それを見た琢磨は激しい殺意が内から湧き上がるのを感じていた。
「…ふざけやがって。」
「ははっ、イイですねその殺意。」
ーー真後ろから声がする事に驚き琢磨はすぐさま振り返る。
「だ、誰だお前!?」
「驚かせてしまいましたか?すみません。あなたの殺意に誘われてここまで来てしまいました。」
「はぁ?お前…中学生か?ガキがこんな時間までフラフラしてんじゃねーよ!!」
ーー驚かされた事により琢磨は怒りを露わにする。
「知能指数の低い下等種の様な台詞は吐かない方がイイと思いますよ?」
「はぁ…?お前拗らせてんな。それとも精神病院から脱走して来たのか?ま、どうでもいいわ。じゃあな。」
ーー琢磨はその男に関わらないようにしようとこの場を離れようとする。
しかし、
「イイんですか?島村牡丹さんをあなたの好きに出来るかもしれないんですよ?上川琢磨さん。」
ーー琢磨は男の言葉に足を止める。
「…お前何でその名前を?」
「あ、ご挨拶が遅れましたね。僕は三間坂春翔と申します。面白いゲームがあるんです。人の人生を塗り替える事が…いや、支配する事が出来るゲームが。興味ありませんか?」
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