第216話 安定の光景

「安定のリザルト部屋で、ツヴァイは安定の遅刻か。」


俺たちがリザルト部屋に来ても一向に現れる気配が無い。全くふざけた野郎だぜ。俺は早く帰って牡丹とビデオ屋に行かなきゃならないし、楓さんでヌキヌキしたりと大忙しなんだぞ。お前みたいに暇じゃ無いんだ。


「そういえばタロウさんと牡丹ちゃんは首狩り村を制圧されたんですか?」


美波が可愛い顔で聞いてくる。そういえば美波をオカズにしてないな。明日はとうとう美波オカズタイムの時がやって来るか?テニスウェア装着してもらおうかな。


「首狩り村…?あ、杉沢村の事ですね。」


「杉沢村…?そういう名称なの?」


「はい。あそこは杉沢村です。」


ーーいや、首狩り村だから。アンタらが勝手に改名しただけだから。


「そうなんだねっ!その名称の方がいいなっ!首狩り村なんて怖いもんっ!」


「そうですね!私も杉沢村のが良いです!」


「ウフフ、同感ね。」


ふむ、満場一致で可決されたか。なんだ、みんなも杉沢村が好きなのか。よっしゃ、杉沢村関連のビデオ見つけて来よ。


ーービデオと言っている所がオッさんくさい。


「話がそれちゃったけど、杉沢村を制圧されたんですか?」


「いやー、それがさ、杉沢村に入れたんだか入れないんだかわからないんだよね。」


「どういう事ですか?」


「杉沢村の入口に鳥居があるんだけど、そこを潜って俺たちは先に進んだんだ。そしたらまた鳥居に戻っちゃうんだよ。」


「別の鳥居ってわけじゃないんですよね?」


「それは間違いありません。何故なら私が作った髑髏岩が鳥居の傍にありましたので。」


ーー髑髏岩という名称に美波、楓、アリスの3人はビクッとしたが触れないようにしようと心に誓った。


「それでも何回かループしてたら村人っポイ奴が現れたんだよね。ま、現れたっていうか作業中っていうか。」


「作業…ですか…?」


「畑を耕したりとかですか…?」


ーー美波とアリスが不思議そうな顔をして慎太郎に聞く。


「倒したプレイヤーの首を斬り落としてたんだよ。そんで自分の首に縫い付けてたの。早い話が村人って首が無いんだよ。んで、倒したプレイヤーの首を取って自分に付けてるって事だ。これが首狩り村の所以なんだな。あははは。」


「ふふふ、あの光景はなかなか見られない貴重な時間でした。」


ーー美波、楓、アリスの3人はその話を聞いて全身に鳥肌が立っていた。そして3人は思った。そんな光景見たら絶対漏らしていただろうと。


「そんで当たり前だけど戦闘に入るわけじゃん?そしたら村人ってクソ強いんだよ。フィジカルが高いのは当然として、首を取ったプレイヤーのスキルは使えるし。だいたい村人2人とフリーデン無し牡丹で互角、俺だと村人1人に対して大苦戦って感じ。」


「そんなにですか?」


「はい。だから撤退気味に戦ってたらヘンカーが現れて牡丹と交戦したんです。」


「初見でしたのと、フリーデンを使うのも初めてでしたので使用時間を随分と使ってしまいました。ですがそのお陰で先程は圧倒する事が出来ました。」


「んで、ヘンカー倒して洋館まで撤退したら時間が4日目になってたんですよ。多分時間の流れがここと杉沢村じゃ違うんでしょうね。」


「私たちも進行する過程で聞きましたが、本来は杉沢村には現時点では行ってはいけないみたいなんです。」


「そうなんですか?だからやたらと強かったのか。装備揃ってないのに魔王城は行っちゃダメだったんですね。牡丹いなかったらヤバかったよな。」


「でもタロウさんも”特殊装備”をお持ちなんですよね?」


「えっ?あー…はい…」


ーー楓の言葉に慎太郎は気まずそうに目を逸らす。


「……?どうしたんですか?」


「………いんです。」


「はい?」


ーー慎太郎があまりにも小さい声で話す為、楓は聞き返す。


「……ないんです。」


「すみません。ちょっと聞き取れないのですが…?」


「…使えないんです。技量が足りないから俺のは錆びてて使えないんです。」


ーー慎太郎が俯きながら楓に答える。


「えっと…その…」


ーー流石の楓も気まずくなりどうしていいかわからなくなる。美波もアリスも同様だ。

だがそんな時は牡丹だ。彼女だけは絶対にブレない。


「良いんですよ。タロウさんは私がお守り致しますから。私の側に居て頂ければ良いんですよ。」


「やめてぇ!!姫ポジは嫌だぁぁ!!」


ーー相変わらずの光景だ。


ーーそして、


『御待たせ致しましタ。リザルトを始めましょうカ。』


ーーゲリライベントのリザルトが始まる。

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