第215話 余裕の5人

【 4日目 PM 7:25 洋館 本館 1F エントランス 】




「牡丹ちゃん!!タロウさん!!」


ーーヘンカーとの戦闘を終えた牡丹と慎太郎の元へ美波とアリスが駆け寄る。


「美波さん、アリスちゃん。無事で良かったです。」


「それはこっちの台詞だよっ。運営からの通知を見てすごく心配だったんだからっ!!」


「やはり私たちの事だと気付かれましたか?」


「もちろんっ!!ね、アリスちゃん。」


「はい!」


ーー牡丹と美波とアリスの3人が談笑している。先程までヘンカーとしのぎを削っていたのが嘘のような光景だ。


「美波、アリス、お疲れ。」


ーー慎太郎が3人の所へと歩み寄る。


「お疲れ様ですっ!」

「お疲れ様です!」


なんか久しぶりに会った感じだな。そりゃーそうだよな。4日ぶりだもんな。いつも毎日一緒にいるのに4日も会えないなんて違和感ありありだよな。


「みんな大丈夫だった?」


「はいっ!なんとか大丈夫ですっ!」


「それなら良かった。こっちもどうにか大丈夫だったよ。ま、全部牡丹のおかげなんだけどな。」


「そんな事ありません。騎士様が姫を命の限り守ってくれていたからです。ふふふ。」


やめてくれ牡丹。美波がジト目で俺を見てるじゃないか。

こういう時は話題をそらすしかない。牡丹の話の意味がわからずキョトンとした顔してるアリスを撫でるに限る。


「アリスも凄く頑張ったんだろうな。」


俺は安定のアリス頭ナデナデを行う。


「えへへ、頑張れたかはわかりませんがみんなの為になれたなら嬉しいです。」


「アリスちゃんはすごく頑張ってくれたよっ!!アリスちゃんがいなかったら大変な事になってるもんっ!!」


よし、話題が逸れたな。


「お疲れ様です。」


振り返ると楓さんが近づいて…え!?


「タロウさんも牡丹ちゃんも無事で良かったです。やっと全員揃いましたね。」


……え?何で誰も触れないんだ?俺の目が腐ってんのか?願望ダダ漏れなのか?楓さんのドレスみたいな衣装が胸の下から破れて下乳見えてんだけど。ブラも少し破れてるから下乳見えてんだけど。Bカップ貧乳の下乳が見えてるんだけど!?


「楓さんもご無事で何よりです。」


いや、無事じゃないよね!?下乳見えてんだから重症じゃない!?


「ウフフ、どうにか無事に乗り切れたわ。」


いや、無事じゃないっす。下乳は戦闘不能ですよ。


「楓さんが居てくれなかったら私たちは全滅でした。」


アリス、俺の理性も全滅しそうだよ。


「そんな事無いわよ。アリスちゃんが回復してくれなかったら私は死んでいたわ。本当にありがとう。」


「いえ!!美波さんが瞬時に判断して指示を出してくれたおかげです!!私は震えて頭が真っ白になっちゃってましたから…」


「そんな事ないよっ!!私は口出しただけ。アリスちゃんのおかげだよっ!!」


「ウフフ、美波ちゃんもありがとう。2人は私の命の恩人よ。えいっ!」


「きゃっ!」

「わ!」


ーー楓が美波とアリスに抱きつき、キャッキャしている。小ぶりな胸を揺らしながら。それを慎太郎はめっちゃガン見していた。


「楓さん程の方が敗れたのですか?」


「さっきの奴に負けたのよ。丈でお腹を貫かれてね。」


「あ、だから下乳丸見えなのか。」


「「「「えっ?」」」」


「あ…やべ…」


ーー慎太郎の言葉に楓はようやく自分の状態に気付き顔を赤くしながら両手でドレスの破れている部分を抑える。

美波とアリスはジト目で慎太郎を見ている。でも牡丹はニコニコしているだけで怒ってはいないようだ。


しまった…隠れて堪能してたのに自分でバラしてどうすんだよ…てか何で牡丹はニコニコしてんだ?普通ならヤンデレモード入って剪定バサミ出してるはずなのに邪気が出てないのがまた怖い。


「そんな事よりも牡丹ちゃん!!アレは一体何なの!?あの紅い剣は!?」


ーー恥ずかしさを誤魔化す為、楓は声を大にして牡丹に尋ねる。そしてそんな楓を見て慎太郎は今日のオカズは楓にしようと心に誓っていた。


「フリーデンの事でしょうか?アレは”特殊装備”です。」


「”特殊装備”!?武力に特化したのもあったのね。納得だわ。」


ーー楓は牡丹と会話しながらドレスの腹回りの部分を破って胸当てを作り、下乳丸見え状態をどうにか解消した。

だが腹回りが露わになる事で慎太郎が大好きな楓のくびれとヘソが丸出しになる。慎太郎は写真撮りたい気持ちを必死で堪えていた。


「でも牡丹ちゃんが”特殊装備”を手に入れてくれて心強いですねっ!!私たちのクランがもっと強くなりましたっ!!」


「ふふふ、そう言って頂けると嬉しいです。」


「それにしてもそのフリーデンの力は尋常じゃないわね。悔しいけどブルドガングを呼んでも勝てる気がしないわ。」


「そ、そんなにですかっ!?」


ーー美波とアリスは楓の見立てを聞いて驚きを隠せなかった。スキルを使ってもいないのに”具現”を上回る力があると聞かされたら驚いて当然だ。


「普通にプレイヤーを狩るだけなら牡丹ちゃん1人で全滅させられるわよね。寧ろスキルなんて必要が無いんじゃないかしら?」


「残念ですがそこまで万能ではないのです。制約があるんです。使用時間は30秒とか。」


「あ、私のプロフェートと同じだね。」


「なるほど。だから牡丹ちゃんは要所要所でしか使っていなかったのね。」


「はい。ですので瞬間火力は凄まじいですが持久戦には不向きです。」


ーーここで楓は奇妙な事に気付く。

それだけのデメリットもあるのに牡丹は終始ご機嫌でニコニコしている。いや、寧ろ余裕さえある。それがどうにも不思議で仕方がなかった。


「ねぇ、牡丹ちゃん。随分とご機嫌ね?他にも制約があるんでしょ?それならば気を落とすのが普通じゃないかしら?」


「ふふふ、実はですね、このフリーデンは二本で一組の双剣なのです。そしてもう一本の剣、フライハイトが近くに無ければ使用する事が出来ないのです。」


「どういう事かしら…?もう一本牡丹ちゃんが持っているって事?」


「ふふふ、それはタロウさんが持っております。」


「「「えっ?」」」


「つまり私とタロウさんは離れられません。いつも一緒でないと”特殊装備”を使えないのですから。」


ーー牡丹のニマニマしている顔が最高潮になっている。それに反比例するように楓、美波、アリスの顔が絶望に染まっていく。


「これはもはや夫婦と言っても過言ではありません。2人で協力をしていく。素晴らしき響きです。」


「がはっ!!」

「ぐはっ!!」

「ごほっ!!」


ーー牡丹の言葉を聞き、楓、美波、アリスの3人が膝から崩れ落ちた。


「…何やってんのこの子ら。」


ーーそしてイベント終了の時間が来る。

視界が闇に包まれ、リザルトへと向かう。

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