第217話 ゲリライベント終了
「随分と遅かったじゃねぇか。そのせいで俺は恥書いたんだけど。」
ーー慎太郎は不満げな顔でツヴァイへと八つ当たりをする。
『…申し訳御座いませン。』
ーーだがいつになく元気の無いツヴァイに慎太郎は罪悪感を感じてしまう。
「いや…冗談だよ…?どうした?なんかあったか?」
『…相変わらず優しいのデスネ。』
「相変わらず?」
『いエ、なんでもありまセン。リザルトを始めましょウ。高難度エリアである洋館をクリアされた事を心より嬉しく思いまス。』
「ま、確かに色々あったよ。やたら長く感じたもん。」
「そうですよね。1ヶ月以上洋館にいた気がしますっ!」
『このエリアを生き残ったのはタナベシンタロウサマたちとサワノサマのクランのみとなっておりまス。』
「え!?澤野!?アイツも居たの!?」
あの野郎がいやがったのか。て事は三國のクソもいたのか。
「そうなんです…私たちまた澤野と遭遇して…」
「遭遇したの!?何もされなかったか!?」
あの野郎俺の美波に手出したらブッ殺すからな。
「エントランスに行く前に遭遇したんですけど何もして来なかったんですっ。何だかやる事があるとかで。」
「何もされなかったんなら良かったよ。」
ま、楓さんいるんだから大丈夫なのはわかってるけど心配だよな。
「タロウさん、三國という男が次に会った時は殺すと言ってました。」
「…生意気な野郎だ。俺だって簡単にやられたりしませんよ。」
「大丈夫ですよ。私があの男を斬りますから。」
「俺を姫ポジにするのやめません!?浸透するからやめましょうね!?」
『話を続けまス。そして一番の功績は首狩り村から生還した事ト、ヘンカーから逃げ延びた事デス。』
「杉沢村です。」
『ハ?』
ーー真面目な顔で意味のわからない事を言って来る牡丹に対してついツヴァイは反射的に素っ頓狂な言葉を返してしまった。
「首狩り村ではなく杉沢村です。看板にも書いてあります。」
『…貴女は何を言っているんでスカ?』
「そうだぜツヴァイ。あそこは杉沢村だ。」
『……』
ーー何言ってんだコイツら。
ツヴァイはそう思いスルーする事に決めた。
『首狩りむ「杉沢村です。」』
『……首か「杉沢村だって。」』
『……杉沢村は現段階ではまだ行くべきエリアではありませン。今後は無闇に進むのは控えるべきですヨ。』
ーー面倒くさくなったツヴァイはもう杉沢村でいいやと思った。
「ま、今回は色々しゃーなかったもんな。」
「はい。エリアが悪いです。」
ーー悪いのはおめーらだよ。ツヴァイは心底そう思っていた。
『リザルトは以上デス。では御機嫌ヨウ。』
また相変わらずの身勝手なリザルトで幕を閉じられた。コイツって本当に自己中だよな。
ーー長きに渡るゲリライベント、洋館エリアの死闘がここに終了した。
「あっはっは!こんなツヴァイを見れるのは貴重だねー。」
『うっさい。』
ーー慎太郎たちが消えた空間から葵とサーシャ、リリが現れる。
『何が杉沢村よ。訳のわかんない事を呑気に言って。馬鹿じゃないの。こっちがどれだけ心配したと思ってんのよあの馬鹿。』
「ツヴァイちゃん、ヤキモチ〜?いや〜ん!!カワイイ〜!!!」
「ねー!可愛いよねー!」
『……』
ーー葵とリリが悪ノリしている状況を見てツヴァイは反論するのをやめた。きっとリリが絡むと手がつけられないのだろう。
「はいはい、2人とも弄るのはやめなさい。」
「はーい!」
「は〜い!」
ーーサーシャの一言により独特の雰囲気が収まる。
「今回はアインスにしてやられたわね。で?どうだったの?」
『タロウと島村牡丹にはフライヘルの爵位が与えられる事になったわ。』
「うおっ!?マジかぁ。”サイドスキル”持ちになるって事じゃん。それで牡丹ちゃんは”神具”に”神”まであるんだから相当ヤバくない?」
「そうね。計画が随分と変わる事になるわ。これで島村に覚醒されたら私に匹敵する事になりかねないわ。」
「わぉ!!それってチョ〜デンジャラスじゃな〜い?こわ〜い!!」
『アインスの奴…何で”神具”を渡したのかしら…?島村に渡したら自分の首を絞める事になるかもしれないのに…』
「可能性としてあるのはアインスの目的が島村なのかもしれないわね。だからこそ田辺慎太郎にもフライハイトを渡した。ま、扱えないけどね。」
「あっはっは!たーくんは弱いから…あ、すいません…睨むのやめて下さい…」
『まったく。でもタロウに”サイドスキル”を持たせられるなら正直ありがたいわ。これで少しは能力のかさ上げになる。どんなスキルを得られるかはわからないけど”サイドスキル”は強力だからね。例え”1番目”だったとしても。』
「そうね。でも島村の件は一度白紙にした方がいいわ。ヘンカーを二体も葬っているわけだし。覚醒されたら面倒よ。場合によっては始末するべきだわ。」
「えぇ!?じゃあ計画はどうすんの?楓ちゃんだけだとミリアルドにも勝てないよ?」
「その時は相葉を覚醒させればいい。」
「え…だって…ねぇ、リリちゃん?」
「ん〜?あ!ツヴァイちゃんが更に嫉妬に狂って何するかわかんなくなっちゃうって事?や〜ん!!嫉妬ってこわ〜い!!」
「それぐらいは我慢しなさい。事が終わった後に自分で相葉を好きなだけ拷問して殺せばいいでしょ。」
『…それは考えるわ。島村にしたって覚醒させなければいいわけだし。最悪覚醒したらタロウと一緒にこっちに引き込めばいいわ。』
「島村と田辺慎太郎を共有する事になるのよ?耐えられるの?引き入れてから殺したんじゃ田辺慎太郎はあなたに憎しみを抱く事になるわよ?」
『…それは我慢する。あの子なら我慢出来るよ。でもあのぶりっ子は無理。』
「…はぁ。とりあえずは検討しましょう。先ずは三日後のクランイベントよ。リリが田辺慎太郎に付いてないといけないんだからね?わかってる?私たちは行けないのよ?」
「わっ!!リリちゃんもしかして責任重大!?みんなのカリスマ!?いや〜ん!!」
「このシリアス展開でも構わずぶっ壊していくリリちゃんの姿勢私は好きだよー。」
「ありがと!私も葵ちゃん大好きだよ!!ラブの方で!!」
『とりあえず帰るわよ。私はこれから定例会だからサーシャ、頼んだよ。』
「わかったわ。」
ーーリザルト部屋から4人が消える。
ツヴァイ、アインス、両者の思惑の上に踊らされながらも慎太郎たちはまた、戦場へと駆り出される事となる。
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