第210話 どこまでも呑気な2人
【 慎太郎・牡丹 組 3日目 PM 10:38 首狩り村 入口付近 】
ーーヘンカーを消す為”呪符”を破りに来た慎太郎と牡丹。目標である村長の屋敷を目指す為、首狩り村の入口付近まで来ていた。
慎重に木々の間に隠れながら来た為時間はかかったが誰に見つかる事も無くここまで来れた。村へ入れば少なからず村人との戦闘は起こるだろう。慎太郎は深く息を吐き、気持ちを落ち着けた。
「だいぶ道が拓けて来たな。村まであと少しってところだろうな。」
「そうですね。村へ入れば村人との戦闘は避けられないでしょうが、村長の屋敷にて”呪符”を破いたらすぐに撤退致しましょう。」
「だな。って事で明らかに村への入口に着いたわけですがどう思いますか姫?」
ーー慎太郎たちの前には鳥居がある。
赤く古ぼけたかなり歴史を感じる出で立ちである。これでもかというぐらいのホラー感が滲み出ている。
「……」
ーー牡丹は無言で何か言いたそうな目をしながら慎太郎を見る。
「俺には牡丹の気持ちはわかる。この鳥居を見たらそう思わざるを得ないだろう。」
ーー慎太郎がドヤ顔をしながら牡丹へそう言う。
「…少しだけ探検しちゃう?」
「…少しだけなら私も探検したいです。」
ーー慎太郎と牡丹がキャッキャしている。此の期に及んでもこの2人は緊張感が無い。
「なぁ、牡丹。」
「はい、あなたの牡丹です。」
「この村の名前を変えようと思うんだ。首狩り村よりももっとピッタリな名前がある。」
「ふふふ、仰らなくてもわかります。私もそう思っておりました。」
「フッ、流石は牡丹だな。じゃあここを今から杉沢村と改名する!!」
「タロウさん、少しお待ち下さい。」
ーー牡丹がそう言うと、ゼーゲンを引き抜いて近くにある岩に斬撃を加える。高速の剣を十数回振った所でその岩を持って慎太郎の元へと戻って来る。
「この岩を鳥居の傍に置きましょう!」
「凄え…凄えよ牡丹!!完璧にここは杉沢村だ!!」
ーー見ると髑髏の形をした岩だ。牡丹が造形していたのはこれだったのだ。
(注) 杉沢村について知りたい方はウィキペディアで確認をして下さい。
「例の看板を立てられなかったのは残念ですがこれでも十分かと思います。」
「ああ!やっぱり牡丹がいてくれてよかったよ。俺は今まで生きて来た中で一番今が楽しいぜ!!」
ーーまたこの馬鹿は余計な事を言う。
「ふふふ。私はあなたと出会ってからが毎日幸せです。これからももっと楽しく幸せな日々を過ごしましょう。永遠に。」
「おうっ!!」
ーーまぁ、見方によればこの2人は非常に相性が良いのかもしれない。
ーー慎太郎と牡丹が鳥居を潜ろうとした時にふと左を向くと、看板の様なものがある事に気付く。
暗くてよく見えないので2人が看板の前に行く。
そこにはこう書いてあった。
『警告
ここから先は首狩り村。村人と出くわした際、命の保証は無い。村から出る事も不可能。命が惜しければこのまま後ろを向き、来た道を戻るがいい。これが最終通告だ。』
ーー看板を見る慎太郎と牡丹が不愉快そうな顔をしている。
「もうここは杉沢村だろ。」
「もうここは杉沢村です。」
ーー慎太郎がゼーゲンを引き抜き看板に書かれている首狩り村の字を削ぎ落とし、杉沢村の文字を大きく刻む。
「ふむ。悪くないな。」
「そうですね。これでここは立派に杉沢村と成りました。」
ーーいや、ここ首狩り村だから。
「さて、それじゃあ憧れの杉沢村の鳥居を潜るか。ちょっとドキドキだな。」
「はい、私もです。」
「なあ、手を繋いで潜らない?せっかくの初体験だし記念になりそうだからさ。」
ーー慎太郎のその言葉に危うく牡丹は昇天しかけた。慎太郎の口から『手を繋ごう』、『初体験』、『記念』といったパワーワードを聞けるとは思っていなかったからだ。
だが牡丹はブレない。この好機を前にして昇天などしてる場合ではない。
「ふふふ、2人の記念日ですね。これからもたくさんの記念日を作って参りましょうね。」
「そうだね。じゃあ行こうか。」
ーー慎太郎が牡丹の手を自分から繋ぐ。
牡丹は幸せそうな顔をしてそれを受け入れる。
ーーそして2人は鳥居を潜り、首狩り村へと足を踏み入れた。
呑気な2人の首狩り村探索が始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます