第182話 謎解き 2

【 慎太郎・牡丹 組 1日目 PM 9:48 洋館 本館 3F 書斎 】




ーーメモ紙を見て牡丹は悩む。


先ず最初に閃くのは角度を求める計算だ。これは図形なのだから当然といえば当然の発想である。しかし二等辺三角形の中心に記されたSの文字の意味がわからない。

それでも今は角度を求めてみようと作業に取り掛かろうとした時に慎太郎が溜息を吐く。

やはり慎太郎でも難しいのかと牡丹が思った時だった。


「つまんねぇな…こんなの楽勝だろ。」


「え…?」


ーー慎太郎が電子ロックのかかる金庫のタッチパネルに何かを打ち込む。すると、


ーーガチャン


ーー電子ロックが解除される。


それに牡丹が驚き、慎太郎へと声をかける。


「ど、どうしてわかったのですか!?」


「いやー、これは楽勝すぎだよ。これって夏の大三角じゃん。」


「夏の大三角…?あ…」


「わかった?SはSUMMERのS。頂点は順番に、ベガ、デネブ、アルタイル。それが解除コードってわけだ。」


ーー牡丹は慎太郎の凄さを改めて理解した。

勉強だけしかしていない私とは違い、頭の回転力が全然違う凄い人だと心底感じていた。


ーーそして牡丹は慎太郎を更に好きになっていた。こんなに頼り甲斐のある慎太郎を見ればその気持ちもわからなくもない。オッさんのくせに。


「流石はタロウさんです!」


「こういうのは結構得意なんだよ。牡丹に少しはカッコいい所見せられたかな?」


「タロウさんはいつでも格好良いです。」


ーーこのバカップル、甘々である。


「よし、じゃあ金庫を開けてみるか。」


「はい。」


俺は金庫を開ける。予想通り中には鍵が入っていた。鍵を調べてみると割と凝った装飾が施されている。頭の部分には台形みたいな形から所々に線が伸びている不思議なデザインが彫られている。一体何を表しているのだろうか?


「星座…でしょうか…?」


俺が考えていると牡丹が呟く。


「星座?」


「はい。先程タロウさんが夏の大三角と仰っていたのでこれを見てピンと来たのがペガサス座でした。私は夜空を見上げるのが好きで88星座の形を覚えております。間違い無くこれはペガサス座です。」


「ペガサス座か。夏の大三角といい何か関係あるのかな?」


「これだけではまだ何とも言えませんね。」


「それにしても牡丹は凄いな。俺だけだったらペガサス座だって気づかなかったよ。ありがとうな。」


ーーそう言いながら慎太郎は手慣れた手つきで牡丹の頭を撫でる。すると当然のように牡丹は頬を染めて悦に浸る。これにより牡丹はモチベーションが上がる。相性の良いペアなのは間違い無いようだ。


「よし。じゃあ新たな場所の探索へと乗り出しますか。今度こそゾンビいるかもな。」


「ふふふ、楽しみですね。」


ーーバカップルの探索は続く。




********************





【 楓・美波・アリス 組 1日目 PM 10:02 洋館 東棟 2F 通路 】




ーーノートゥングを先頭にようやく多目的ホールから出た楓たちは洋館内の探索へと乗り出す。乗り出すといっても彼女たちにスピード感は無い。じっくりと一歩一歩踏み出して牛歩の如く進んでいた。


『…おい。いつまでたっても進まんぞ。』


「しょ、しょうがないじゃないっ!!物陰から何か現れるかもしれないしっ!!」


「そ、そうですよ!!いつの間にか背後から5人目が付いてくるかも知れません!!」


「ウフフ、アリスちゃん、不吉な事言うのやめてね?殿は私なんだから後ろに誰かいたら心停止するわよ?」


『…はぁ。何で妾がこんな苦労をせねばならんのだ。』


ーーそんな楓たち一行が進む先に小部屋らしき扉と、両開きの扉の2つを発見する。


『どっちへ行く?』


「そ、それは両開きの扉じゃない!?きっと別の場所へと繋ぐ為の扉だと思うし!!それにそこは絶対小部屋だと思うもん!!何かいそうだもん!!」


「そうですよ!!開けたら何かいます!!」


「ウフフ。」


『わかった、わかった。では行くか。』


ーーノートゥングが扉へと手をかける。

だがーー


『むっ?鍵がかかっておるな。』


「そ、そんなっ…!?それじゃあ…!?」


『入るしかないな、そこの部屋に。』


もし本当に何か居たら多分私は死ぬと思うわ。もうすでに精神崩壊しそうだし。


ーー他に進める道は無いので楓たちは渋々小部屋へ入る。

中に入るとそこは畳6畳程の小さな部屋だった。壁3面に絵がかけられ、部屋の中央には箱が置かれている。


「…何もいませんね…?」


「…そうですね。」


「…ウフフ、ほっとしたわ。」


一時はどうなるかと思ったけど一先ずは安心ね。それにこの部屋は怖い雰囲気も無いし。


「普通に考えたらこの箱…金庫かしら?ここに鍵があるはずよね。」


私は金庫を開けようとするがロックがかかっていて開かない。良く見ると電子ロックがかかっており、3つのパスコードで開くタイプのものになっている。


「どこかでパスコードを入手しないといけないのかしら?」


「でも一本道でしたよね?そうしたらドコで…」


「3つ…ここに飾ってある絵がヒントなのでしょうか?」


美波ちゃんがそう言うので改めて絵画を見て見る。


左側の絵に描かれているのは子犬、右側は母犬らしき大きな犬、そして正面には狩人が描かれている。


「これがヒントなのだとしたら一体何を表しているのかしら…」

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