第183話 試練の夜
【 楓・美波・アリス 組 1日目 PM 11:34 洋館 東棟 2F 美術庫 】
ーー美術庫内にある絵画を3人が調べ始めて小一時間が経過するがパスコード入手に至る成果は未だ得られていない。
3人はすぐに『カリュウド』、『ハハイヌ』、『コイヌ』とコード入力をしてみたがどれもヒットしなかった。6通り全ての組み合わせで打っても解除されなかった事からもそれがコードで無い事は確かだった。
絵画にタイトルでもあれば少しは楽だったのかもしれないが何も無い以上は自分たちで考えるしか無い。そうでなければ先に進む事も出来ないのだから。
「全然わかりませんね…」
「そうね…一体この三枚の絵から何を読み取れって言うのかしら…」
「頭の良い楓さんと美波さんがわからないのなら私なんかじゃ全然見当もつきません…」
「それは関係無いわよ。確かに知識は必要だけどこれはナゾナゾみたいなものだから頭の柔軟さは大事。私たちみたいに凝り固まった脳よりもアリスちゃんみたいに柔らかい脳の方が気づく事もあるかもしれないわ。些細な事でも気になったらすぐに言ってね。」
「はい!わかりました!」
絵だけを読み取るのでは無くて配置も関係あるのかしら?左に子犬、正面に狩人、右に母犬。狩人が子犬を狩ろうとしてる…?仮にそうであったとしてもそれが何を表しているの…?一つのパスコードならまだしも三つも必要になるとやはり一枚一枚にパスコードの答えがあるとしか思えない。何か共通点があるって事よね…?
「何か共通する事って無いかしら?」
「共通する事…ですか…?」
「単品で考えててもあまりにもヒントが無さすぎるわ。それなら答えなんて出ない。でも解かせる気が無かったらこんな仕掛けを用意する必要も無いわ。解ける事は間違い無い。ならばこの部屋だけで答えは導き出せる。そうするとヒントと言ったらこの三枚の絵しか無いわ。きっと三枚全てで答えに辿り着けるナニカがあるのよ。」
「なるほど…確かにそうですね。でも共通点かぁ…」
「難しいです…人間がいるのがわかりません…」
「そうだよね。わんこだけなら答えに辿り着けそうだけど人間がいると…ね…」
ーー唸りながらのシンキングタイムが始まる。
だが数十分が経過しても誰も答えに辿り着け無いかに思えた時にある者が口を開く。
『星座か…?』
「え?」
『この絵画は、こいぬ座、オリオン座、おおいぬ座、それらを表しておるのではないか?』
「あ!冬の大三角形…!!」
「という事は…!!」
「ええ。プロキオン、ペテルギウス、シリウス、それらを表している…!!」
「にゅ、入力してみましょうか!?」
「やってみましょう。」
プロキオン、ペテルギウス、シリウスの順にコードを入力する。
するとーー
「開いた…!!」
「やりましたね!!」
「ふふっ、流石はノートゥング!!」
『ククク、この程度の事は妾にとっては造作も無い事よ。』
金庫を開けてみると中には予想通り鍵が入っていた。予想と違った点としてはかなり凝った作りの鍵だったと言う事だ。装飾も凝っているが頭の部分には台形のような形と、そこから伸びた線が数本彫られている。
また、鍵の色のイメージとしてはシルバーが一般的だと思うが、これはブロンズだ。決して錆びているわけでは無い所から考えるとゴールドとシルバーもあるのかもしれない。
「これで先へ進めるわね。さ、早い所タロウさんたちと合流してクリアしましょう。こんな怖い所もうごめんだわ。」
「はいっ!」
「はい!」
「でも…とりあえず今日はこの部屋で休みましょうか。ここなら寝れそうでしょ?」
「今日はここで休みますっ!!」
「賛成です!!」
『…やれやれ。』
ーー楓たちも鍵を手に入れ次のエリアへと移動を開始する。
********************
【 慎太郎・牡丹 組 1日目 PM 11:42 洋館 本館 3F 客間 】
ーー慎太郎と牡丹は入手したペガサス座の鍵で初期位置である書斎から左側方面へ進む事となった。
右側方面の扉は手にしたペガサス座の鍵では開かなかった。それにより左側方面へ進むしか無かったのだ。
ーー慎太郎たちと楓たちの鍵には違いがある。
慎太郎たちはシルバーの鍵。
楓たちはブロンズの鍵だ。
同じペガサス座の文様はあれど開けられる扉は違う。この洋館内にいくつの鍵があるかはわからないが鍵の入手が洋館内を攻略するのに重要な事は言うまでも無い。
だが、慎太郎にはこれから試練が訪れる。
それはーー
「そろそろ夜更けになりますね。」
「そうだな、今日の探索はここまでかな。明日こそゲシュペンストの野郎かゾンビ見つけような。」
「ふふふ、そうですね。では先にお風呂に入って来て下さい。」
「風呂?どこにあるの?」
「私のラウムにございます。空間転移シャワー室という物です。」
「そんなんあるんだ。流石は”闘神”。でも牡丹が先に使いなよ。俺は後でいいからさ。」
「一番風呂は旦那様が入るものです。」
「しれっと旦那様とか言わない。でも牡丹がそこまで言うなら先に入らせてもらおうかな。」
「ベッドは一つしかありませんが問題ありませんよね。」
「え?」
ーーゲシュペンスト探しに躍起になっていた慎太郎は周りが見えていなかった。ここは客間。当然ベッドがある。
「ふふふ。ごゆっくり入って来て下さい。」
「え?」
ーー慎太郎に試練の夜が訪れる。
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