第138話 私の扱いおかしくないですか?

ーー私は今とても不満である。


だってさ…私の扱い酷くないかな?最近本編で忘れられてないかな!?

今日の朝だってタロウさんと楓さんの空気がおかしかったし…牡丹ちゃんに至っては最初から空気がおかしいし…私だけ出遅れてる感じする…

そもそもさ、私って正ヒロインじゃないの!?タロウさんとの付き合いは私が一番長いんだよっ!?それなのに雑じゃないかな!?


…まぁ、こんな愚痴を言っても仕方が無い事はわかってる。この状況を打開するには私ががんばらないといけないって事ぐらいはわかってるっ!!だからっ!!私は今日、タロウさんに想いを伝えるっ!!!


そうと決めたからには段取りをしないと。呑気に洗濯物を干してる場合じゃないわよ美波。なんせ家で告白するのはハードルが高いわ。楓さんは夕方には帰るけどアリスちゃんは必ずいる。それに牡丹ちゃんもいるわ。

それも羨ましい事にタロウさんのお迎えで一緒に帰って来るのよっ!!私だってお迎えしてもらった事ないのにっ!!

…いやいや、落ち着きなさい美波。クールよ、クールになるのよ。今は段取りを考えるのが先決!絶対に今日告白するんだからっ!!


冷静に考えればアリスちゃんと牡丹ちゃんを先に寝かせるしかないわよね。アリスちゃんは子供だからすぐに寝ちゃうけど牡丹ちゃんが問題よね…


「うーん…困ったなぁ…どうしよう…」


『薬でも盛れば良いであろう。食事はミナミが作っておるのだ、それに睡眠薬を入れれば事は済む。』


「睡眠薬なんて簡単に手に入るわけないじゃない…それにそんな事をするのは卑怯というか……は?の、ノートゥング!?」


『どうした我が友よ?』


「ど、どうしてここにいるの…?」


『ククク、妾を誰だと思っておる。剣王ノートゥングであるぞ?このような事造作もない。』


「こっちでも使えるって事…?」


『それは妾だから出来るのだ。バルムンクではこうはいかん。』


またドヤ顔してる。可愛い。


「じゃあみんなにも見えるって事…?」


『プレイヤーには見えるだろうな。だから家の中だけでしか出るつもりは無い。クランメンバー以外に見られると厄介な事になるからな。』


「確かにそうね。ていうか何でノートゥングはホイホイと外に出られるんだか…」


『ククク、妾はおとなしくしているという契約はしておらぬからな。妾に命令出来るのは妾だけなのだ。』


「はいはい。でもノートゥングと話せるのは嬉しいわね。」


『ふ、ふん!ミナミはそんなに妾と話がしたいのか…!仕方のない奴だな…!』


嬉しそうな顔しちゃって。全く素直じゃないんだから。


『それはさておき、ミナミよ。貴様の心の叫び、妾はしかと聞いたぞ。』


「えっ…?心の叫びって…」


『私は今日想いを伝えるっ!!から全て聞いておったぞ。』


「うわぁぁぁぁ!!!全部聞いてたのっ!?」


『フッ、ミナミの考えておる事は大体は妾にも聞こえるのだ。なぜか妾の事に関してだけは聞こえないのだがな。』


「うぅ…死にたい…」


じゃあ今までのも全部筒抜けって事じゃない…恥ずかしい…


『よし、ミナミ、身体を貸せ。』


「え?なんで?」


『あの誑し…シンタロウを妾がオトしてやる。なぁに簡単な事よ、妾のテクニックで骨抜きにしてやればイチコロだ。男なんて気持ち良くしてやればすぐに従順になる。』


「だっ、ダメに決まってるでしょっ!!!」


『むっ?ミナミの身体でやるのだから別に構わぬだろう。』


「構うに決まってるじゃない!!はっ、初めてなんだから…その…ステキな体験にしたいし…」


『やれやれ、ウブな生娘は困るの。』


「と、とにかくそれはダメっ!!!」




ーー


ーー


ーー




「洗濯物干しながら美波ちゃんは何を騒いでるのかしら?」


「電話でもしてるんでしょうか?楓さん、このプリンセスガールズって漫画面白いですね!」


「ウフフ、そうでしょう?この漫画は私が中学の時に連載が始まったの。主人公のアテネが地球外から迫り来る悪の軍勢バラリボルグから地球を守る為に戦う愛と友情の物語なのよ。」


「私はアテネも良いんですけど4巻で仲間になったジュノーが可愛くて好きです。」


「ジュノーも良いわよね。でも私は断然アテネ派よ。このどら焼きのようにフワフワしてる所が可愛いわ。」


「あ!楓さん、どら焼き全部食べちゃったんですか!?」


「このどら焼き凄く美味しいわね。」


「楓さんって良く食べるしお酒も飲むのに全然太ってませんよね。モデルみたいな体型です。」


「なぜか食べても飲んでも昔から太らないのよね。」


「羨ましいです。楓さん帰ってからもプリンセスガールズ読んでてもいいですか?」


「もちろん。他にも漫画とかアニメの円盤が送られて来ると思うから好きにダンボール開けて見てていいからね。」


「そんなにたくさんあるんですか?」


「うーん、荷物部屋の半分が埋まるぐらいはあるかな?」


「そ、そんなにあるんですか!?」


「漫画とアニメとお酒は私の命だからね。プリガルのアニメもあるわよ?」


「み、見たいです!!」


「ウフフ、もう円盤と漫画の箱は発送したから明日には着くんじゃないかしら?来たら好きに見ていいからね。その代わり…アリスちゃん、頼んだわよ?」


「タロウさんに見つからないように楓さん専用のお酒冷蔵庫を増やせば良いんですよね?」


「そう。このままじゃ私の一日一缶令がいつ解かれるかわかったもんじゃないわ。電気屋さんで小さい冷蔵庫を注文してタロウさんが仕事に行ってる間に荷物部屋の隅に設置して欲しいの。」


「そして中身を補充しておけば隠れて飲めるという寸法ですね。」


「流石はアリスちゃん、賢いわね。ごめんね、タロウさんの言う事に背くなんて本当は嫌よね。」


「それは仕方がありません。プリンセスガールズの為ですから!それに楓さんの事も大好きなのでお願いを聞いてあげたいです。」


「この子は可愛い事言っちゃって…!お姉さんが可愛いがってあげるわ!」


「うわぁー、ふふふっ!」



ーーだが楓は気づいていない。この企てが慎太郎にバレ、一缶どころかしばらく禁酒になる事を。

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