第136話 告白 2

…今何て言った?俺の事好きって言わなかったか?耳が腐ったのか?楓さん程の美女が俺みたいなブサメンに告るわけないだろ。でも…一応聞いてみよ。


「すみません楓さん。今何て言いました?酔ってるみたいで聞き間違えちゃったみたいで…」


「タロウさんの事が好きです。」


…マジか。聞き間違えじゃなかったのか。

…え?楓さん俺の事好きなの?マジで?もしかしてこの美人を俺の好きにしていいの?眼鏡にぶっかけてもいいの?

いやいやいや、違うだろ慎太郎。好きって言ってもライクの方の話だろ。ラブなわけ無いじゃん。全くこれだから童貞は困る。


「…あれですよね、ライクですよね?」


「いいえ、ラブです。あなたの事しか考えられないぐらい大好きです。」


…マジか。ラブなのか。俺の事大好きなのか。

…え?本当に楓さんが俺の事大好きなの?マジで?あの腰を舐め回したり、Bカップの貧乳を俺が揉んで大きくしちゃってもいいの?

いやいやいやいや、違うだろ慎太郎。楓さん酔ってるんだよ。だから言動がおかしくなっちゃってるんだって。俺なんかにラブなわけないだろ。全くこれだから暗黒魔道士は困る。


「…あれですよね、楓さん酔ってますよね?」


「全く酔っていません。一缶で酔えるわけありません。心からあなたを愛しています。」


…マジなのコレ?夢でもないんだよね?え?じゃあ楓さんが俺の彼女?いや、嫁か?マジっすか!?この美人が俺の嫁になんの?勝ち組じゃん。超絶勝ち組じゃん。嫁が世界に数人しかいない美人で弁護士とか最強じゃん。て事は…楓さんで童貞卒業できんのか…マジかよ!?ここで今から童貞卒業かよ!?くぅー!!生きてて良かったー!!!

いやいやいやいやいやいや、違うだろ慎太郎。マズいって。牡丹はどうするんだよ。明日楓さんと結婚するとか伝えたらなんか大変な事になる気がするぞ。下手したら刺されかねない。こう言っちゃなんだが牡丹って若干ヤンデレ入ってるし。それに最低な事を言うと牡丹の事も大好きだ。正直どっちも大好き。ぶっちゃければ二人とも嫁にしたい。

…選ばないといけないよな。でも今は選べない。それに牡丹は一年後は気持ち変わってるだろ。それに楓さんだって俺の事を友達として好きな気持ちと異性として好きな気持ちとごっちゃになってるんだよ。今まで友達が少なかったから勘違いしてるんだよ。もっと視野が広がれば勘違いだって気づくよ。うん。

とりあえずはきちんと伝えよう。


「楓さん。」


「はい。」


「正直に言うと俺も楓さんの事が好きです。いや、大好きです。」


「…本当ですか?」


「楓さんに嘘は言いません。」


「じゃあ相思相愛ですか?」


「そうなりますね。でも…言わないといけない事があります。」


「なんですか?」


「最低な事を言いますよ?」


「わかりました。」


「この前牡丹にも好きって言われました。そして俺は牡丹の事も大好きです。」


楓さんが俯いてしまった。心が痛むぞ。ブサメンのくせに美女を悲しませるとかどんだけだよ。


「その時にはアリスの事とかあるんで断ったんですが、成人するっていうか18まで待つって事になったんです。それまでに俺を振り向かせるって事で。だから…楓さんともそういう関係になる事は出来ません。アリスの事が大事なので困惑させるような事はしたくないんです。すみません。」


「…なるほど。わかりました。」


…なんかデジャブ感じるんだけど。


「わかってくれて何よりです。」


「つまりはアリスちゃんを私たちの子として考えろという事ですね。」


「だからあなたたちは俺の話ちゃんと聞いてます!?」


やっぱり酔ってるんじゃないだろうなこの人…


「それに楓さんが俺に対して思ってる気持ちはきっと友達としてですよ。今まで思った事の無い初めての気持ちだから自分でもよくわからないんだと思います。だからそれに気づいた時はきっと俺への気持ちは無くなりますよ。」


「それは無いですね。私の気持ちは本物です。そんな勘違いでこんなに切なく苦しくなりません。あなたを想うと胸が熱くなり、あなたを見ると嬉しくなる。そんな気持ちを友達に持つはずありません。本当にあなたの事が大好き…この気持ちに偽りはありません。」


楓さんが力強い目で真っ直ぐ俺を見つめる。本当に本気の目だ。意志は固いって事か。


「…私も参戦します。」


「え?」


「あなたを振り向かせます。心から惚れさせて私がいないとダメにします。」


「本気ですか?」


「本気です。他の子にあなたを取られたくない。私だけのものにします。」


牡丹といい、楓さんといい、信念が強いな。こんな男の何が良いんだか。でも…本気の想いならそれにきちんと応えないといけないな。


「わかりました。どんな形でも返事は出します。」


これが俺にできる精一杯だ。もし楓さんと牡丹の気持ちが変わらなければ必ずどちらかは選ぶ。それは約束する。


「では早速。」


「え?」


楓さんがソファーから立ち上がり俺に近づく。そして目の前まで来ると俺の上に乗って来る。

た、対面座位じゃないか…!!何やってんのこの人!?


「な、何してるんですか!?」


「マーキングです。」


「マーキング!?」


「私のだって匂いをつけておくんです。それと…先に頂こうと思って。」


「頂くってなにを…んンッ!?」


楓さんが左手で俺の頭をガッチリとホールドし、右手で俺の顎を掴み口づけをしてくる。早い話がキスというやつだ。俺のファーストキスが楓さんに貰われた。


「ぷはっ…!!な、な、な、な、な、何をしてんですか!?」


「私のファーストキスです。」


「え?」


「私のファーストキスをあなたに捧げました。あなたに貰って欲しかったから…この歳で初めてなんて気持ち悪いですか…?」


俺の肩に手を乗せ、少し不安げな顔で尋ねてくる。超可愛い。


「気持ち悪いわけないですよ。むしろ嬉しいって言うか…そもそも歳の話をするなら俺なんて34でファーストキスですよ。」


「え?と言うことは…?」


「楓さんが初めてです。」


「そうなんですか!?や、やった…!」


楓さんが嬉しそうに小さくガッツポーズをする。クソ可愛いんだけど、何この美人。


「タロウさんは私が初めての相手なんですね。」


「言い方。」


「どうでしたか?ファーストキスの味は?」


「普通聞く方が逆じゃないですか?正直…イキナリすぎてよくわからなかったです…」


「ウフフ、私もドキドキしすぎてよくわからなかったです。じゃ…もう一回しますか…?」


楓さんが対面座位のまま少し上目遣い気味に言ってくる。卑怯だろ…それは…断れるわけないだろ…


「…大人のキスでも良いですか?」


「あなたのしたい事をしていいですよ。」


そんな台詞を言われたら止められるわけがない。俺は楓さんを抱き寄せその唇に俺の唇を重ねる。そして互いの唇を少し開け、舌が出会える隙間を開けると後は求め合うように舌を絡ませる。顔にあたる鼻息が少しこそばゆいが楓さんの温もりを感じられる事でより一層俺の心は楓さんに溺れてしまう。もう楓さんの事しか考えられない。


「ぷはっ…ウフフ、凄く情熱的ですね…それにさっきから当たってます…」


何の事かわからないなんて惚けた事は言わない。俺の股間が抑えようが無い程に楓さんに対して劣情を催している。


「これは私に対してそういう感情を持ってるって事ですよね…?」


「言ったじゃないですか、楓さんの事が大好きだって。」


「嬉しい事言ってくれますね。いいですよ…私もあなたと一つになりたいです。」


「でも…楓さんを選ぶとは限らないですよ…?」


此の期に及んで俺は卑怯な台詞を吐く。ここで楓さんが引いてくれればいいのにと思ってしまう。ここで楓さんとそういう事をしてしまえばきっともう後には引けなくなる。だから俺は得意の逃げを選択した。

だがーー


「絶対私を選ばせてみせます。だから私をあなたの好きにして下さい。でも…初めてですから…優しくしてくれると嬉しいです…」


頬を赤らめながら言う楓さんに俺の理性は完全に吹っ飛んだ。もう一度楓さんと唇を重ね、楓さんの腰を抱いて軽く持ち上げながらソファーに押し倒す。


「そうやって淫らに誘ってくる楓さんは悪い子です。お仕置きが必要ですね。」


「ウフフ、私に興奮してるタロウさんに胸が高鳴っています。いっぱい愛して下さい。あなたの全てで私を満たして欲しい。」


楓さんの首元に舌を這わせ、キスマークをつける。俺のものだと言う所有の印として。

そして楓さんの服を脱がせようと裾に手をかける。

























ーーガチャリ




















ドアのノブが回る音が聞こえ、俺たちは光速の速さで起き上がる。




「うーん…まだ起きてたんですか…?」


「お、おう!どうしたんだアリス!?」


「トイレに行きたくて…起きちゃいました…それで明かりが見えたからまだ起きてるのかと思って…」


「そ、そうよね!?トイレに行きたくなっちゃうものね!!」


「早く寝て下さいね…」


「お、おう!!一人でトイレ行けるか!?」


「大丈夫…です…おやすみなさい…」


目をしぱしぱさせながらアリスはリビングから出て行った。

しばらく室内に沈黙が流れる。そして楓さんが口を開く。


「…私たちも寝ましょうか。」


そ、そんなぁ…こんなにギンギンなのに…フルおっきしてるのに…


「…はい。」


それでもヘタレな俺がこのまま行為を続ける事なんてできるわけがなかった。まさに天国から地獄だな。

俺はソファーから立ち上がりリビングから出ようとした時、楓さんが俺の背中に抱きついてくる。


「今日はできなかったですけど…いつだって待ってますから…したい時には言ってくださいね…?」


…だから、その上目遣いはズルいだろ。



ーーこの時の俺は気づいてなかった。翌日に起こる事について何にも気づいてなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る