第133話 入替戦 慎太郎 side 3

俺は楓さんの事を侮っていたのかもしれない。召喚系アルティメットと互角…いや、上回る程の力を個人で持っているなんて夢にも思わなかった。現状で楓さんがブルドガングを使っても牡丹には間違いなく敵わないと思う。だが楓さんが”具現”を習得したらそれを凌ぐんじゃないだろうか。末恐ろしいとは正にこの事だろう。


戦いを終えた楓さんが俺の方をチラッと見る。可愛い。いいよなぁ楓さん。あの折れそうな腰が堪らねぇんだよなぁ。Bカップの貧乳も最高だよなぁ。揉みてぇなぁ。


「とんでもない女やな…あそこまでとは思わんかった。」


澤野がいつになく険しい顔をして楓さんの批評をしている。どうだ見たか!俺の楓タンを舐めんなよ!!


控え室へと戻った楓さんが牡丹と綿矢って子と何だかキャピキャピしてる。あの綿矢ってお姉ちゃんも可愛いよね。楓さんと牡丹と美波が綺麗系なら綿矢ってお姉ちゃんは可愛い系だ。レベルの高い女の子3人がキャピキャピしてるのは絵になるな。

それにどうやら席替えをしたみたいだ。綿矢って子は左端の席だったが牡丹の隣に座っている。しかも何だか俺を見て喋ってないか?そういえば最初から綿矢って子は俺を見ていた。ま、まさか…もしかして…



『ねね、楓ちゃんと牡丹ちゃんは一緒のクランなの?』


『ええそうよ。ね、牡丹ちゃん。』


『はい。私たちのリーダーはあちらにいらっしゃる顔は微妙ですが性格の素晴らしい方がやられております。』


『顔が微妙って左から2番目の?』


『ええそうよ、その顔が微妙なのが私たちのクランのリーダーなの。』


『ええぇ…2人ともそんなに美人なのにあの顔が微妙なのの所でいいの…?』


『みくちゃん、人は顔ではありません。あの方はとても優しい心をお持ちなのです。顔は微妙ですが。』


『そうよ、顔で判断はしちゃダメ。タロウさんは良い人なんだから。顔は微妙だけど。』


『ふーん、そっかー、あの人は良い人なんだね!顔は微妙だけど!!』



てな会話をしてるんじゃないだろうな…なんかお腹痛くなってきたな…帰りたいな…


ーーそんな馬鹿な事を考えていても入替戦は順調に進んでいく。



『でハ、入替戦第5戦を始めさせて頂きマス。サワノヒロユキサマ、誰を指名致しますカ?それとも回避致しますカ?』


とうとう澤野の番か。楓さんと牡丹にはもう当たらないから心配はいらない。それに俺は回避するつもりだから俺たちはみんな無事に帰れる事が確定した。一安心だな。きっと澤野はあの綿矢って子を指名するだろう。最悪コイツが勝ってあの子を奴隷にするような事があれば俺は参戦する。偽善者と言われようと守れるならば守ってあげたい。


「いやー、流石は”闘神”の方々や!みんなお強い事で!ワイらチャレンジャー側は4連敗って!カカカカカ!!正に笑い話やな!!」


澤野が立ち上がり一人喋り始める。コイツの余裕はなんなんだ…?確かにいつも余裕こいでる奴だったがクランイベントの時から妙ではあった。いくら三國の野郎と組んだからってあそこまでの余裕があるはずが無い。あの時だって執拗に楓さんを煽ってたって美波が言っていた。楓さんを怒らせて何かをするつもりだったって事か…?


『御託は結構デス。意思表明を明確にして下さイ。』


「ハイハイ、すんまへんなツヴァイはん。それじゃワイは回避ささてもらうで。」


回避だと…!?コイツが回避をするなんて信じられない。楓さんの方へと目をやるが、楓さんも驚いたような顔をしている。やはり意外だったのだろう。

余裕があるように見えたのはコイツの虚勢だったのか…?考えすぎか。所詮は澤野って事か。


『回避でよろしいのですネ?』


「ええで。その際のワイの序列ってどうなるんや?このまま5位になるんか?」


『好きな序列を御選び頂いて構いませン。』


「なら3番目にしてもらおかな。その方がイロイロと都合がエエからな。」


澤野の意図がわからないな。3番目にして何が都合がいいんだ?コイツの考えている事は全くわからない。


『かしこまりましタ。でハ、序列第6位タナベシンタロウサマ、誰を指名致しますカ?それとも回避されますカ?』


「俺も回避する。」


当然だ。リスクを犯す必要は無い。残りの”闘神”に勝てる保証は無いし”闘神”になる必要も無い。楓さんと牡丹がいるんだから尚更だ。


『かしこまりましタ。序列はどうなさいますカ?』


「一番最後にしてくれ。」


一番最後にしておけば次の入替戦で万が一楓さんか牡丹が敗れたとしても俺が乱入する事ができる。そうすれば俺たちみんなが生き残れる可能性が高まる。この場所取りはベストなはずだ。


『かしこまりましタ。でハ、序列第7位ミマサカハルトサマ、誰を指名致しますカ?それとも回避されますカ?』


ーーここで澤野が俺に話しかけてくる。


「シンさん、コイツをよう見とけ。今回の一番面白い対戦や。」


マジで澤野の言葉の意味がわからない。一番面白い?この三間坂って奴が面白いってのか?特別強そうな奴には見えない。典型的なお坊っちゃんって感じの中学生ぐらいの少年だ。正直ここに選ばれたのも信じられない。この少年の何を見ろというんだ。


「ぜひやらせてもらいます。”闘神”の方は皆さんお強いので胸を借りる気持ちでやらせて頂こうと思っておりましたが、一人だけ明らかに弱い方がいられる。僕はその方を指名します。序列第6位の七原さん、あなたの席を頂きます。」


指名された七原は不愉快そうな顔をしている。それはそうだ。あんなコケにしたような言い方で不愉快にならない方がおかしい。中二病入っちゃってる感じか。人外のスキルを手に入れて自分は特別だと勘違いしちゃったパターンかな。


「さぁ、始めましょう。素晴らしいショーを皆さんにお見せ致します。」

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