第125話 休息の終わり
病院を後にした俺たちは牡丹の服を買いに行った。最初は遠慮してたけどすぐに牡丹は俺に甘えてくれたから良かった。昨日から大分甘えてくれるようになったな。良い傾向だ。
清楚系を中心にコーディネイトして8着程購入した。下着を買うのは流石に恥ずかしかったから牡丹1人で買って来てもらった。ぶっちゃけ見たかったけど。
買い物が終わり家へ戻る。部屋の扉を開けるとアリスと楓さんが出迎えてくれた。
「お帰りなさい!」
「ただいま。」
「ただいま戻りました。」
アリスはいつも通りの様相だが楓さんは何だかバツの悪そうな顔をしている。
「どうしました楓さん?」
「いえ…その…昨日はご迷惑をおかけしたみたいで…すみません…」
あ、昨日の騒動の件か。しおらしくしてる楓さんって…良いよね。唆るよね。お仕置きしたくなるよね。楓さんいいよなぁ。やりてぇなぁ。俺なんか相手にしてもらえるわけねぇよなぁ。てかなんで牡丹は俺なんかにホレてんだろ。こんなブサイクオッさんのドコが良いんだか。
「気にしてませんよ。それに楓さんの意外な一面を見れましたし。」
「お恥ずかしいです。でもタロウさんが怒ってなくて良かったです。」
「怒るわけありませんよ。」
「良かった。じゃあ今夜は一緒に飲みましょうね。」
「何言ってんですか、しばらく禁酒ですよ。」
「な、なんでですか!?」
お、楓さんが戸惑ってる。可愛い。押し倒したい。
「ビール一箱も一日に飲んだんですから禁酒です。当たり前です。」
「酷いです!!私の生き甲斐なんですから!!」
「ダメったらダメです。」
「せめて一缶…一缶だけ…お願い致します…」
その言い方。エロすぎだろ。牡丹とアリスいなかったら押し倒してるよマジで。今日は楓さんオカズにしよ。
「…一缶だけですからね。」
「…!はいっ!!」
可愛い顔しやがって。けしからんな。今日はお仕置きしたるで。
「あれ?美波はまだ帰ってないの?」
「はい、連絡もまだないです。遅いですよね。」
もう夕方5時を回ってるんだぞ…?予定では4時には帰るって話じゃなかったのか…?まさか…男か…?彼氏でもできて今頃彼氏の部屋でキャッキャしてるんじゃないだろうな…それともやっぱりテニスサークルってのはヤリサーでそこにいる男どもの餌食になってるんじゃないだろうな…
「み、美波…!!美波…!!!」
「はい?なんですか?」
俺が妄想に興奮して美波の名を叫ぶと背後から美波が返事をする。それにビックリしてちょっと変な声を出してしまった。
「み、美波!!無事だったのか…!!」
「すみません、遅れてしまって。友達の相談を聞いていたらこんな時間になってしまって…みんな、本当にすみませんでした。」
「大丈夫よ美波ちゃん。私はさっき起きたばかりだから全然待ってないし。気にしないで。」
あなたさっきまで寝てたの?何やってるの本当に。少しは気にして下さいよ。やっぱり禁酒にしようかな。
「いつも時間に正確な美波さんが遅いので凄く心配しましたけど無事で良かったです!」
「私もタロウさんと今戻ったばかりなので大丈夫です。ご無事で何よりです。」
…てかさ、友達の相談とかよくある言い訳のパターンだよね。男か…?男できたのか…?美波に男できたら嫌だなぁ…
「タロウさん、どうしましたか?」
態度に出ていたのだろうか、美波が俺に聞いてくる。でもここで『彼氏と一緒だったの?』なんて聞けないよな。カッコ悪すぎだもんな。流石の牡丹でも俺への評価が下がりそうなぐらいカッコ悪いよな。
「いや…なんでもないよ。さて、じゃあ食事に行こうか!予約しといたからさ!」
ヘタレな俺はこの問題をうやむやにして無かった事にするしかないのであった。
*************************
焼肉屋から帰り、一番風呂から出て女性陣がみんなでお風呂に入ってる中俺は明日の仕事に備える。間違っても下着漁りとかはしない。俺は紳士だからな。
「それにしても今日は色々あったよなぁ…牡丹のお母さんの件もそうだし、美波の彼氏疑惑もあったし。」
でもマジで美波に彼氏いたら嫌だなぁ。ぶっちゃけ美波の事も大好きだし。もっとぶっちゃけると牡丹の事も楓さんの事も大好きだ。
「でも美波と楓さんには相手にされるわけないもんなぁ。牡丹だって一年先は俺に幻滅してるだろ。伊達に暗黒魔道士34年もやってねーからな。そもそも俺如きがアルティメット級の3人に好意を抱いてるのが身の程知らずだよな。あははは…悲しい…」
ーーその時だった
ーー視界が暗くなる。
ーー真っ暗になり意識が薄れていった。
「うっ…あれ…?ここは…?」
目を覚ますと俺は見知らぬ部屋にいた。部屋の感じは中世ヨーロッパの古城のような作りで灯りには松明が使われている。俺は円卓に座し、周囲を伺うと他に6名がこの一室の中にいた。そして俺の左隣に目をやった時だった。俺の良く知る人物がそこに座していた。
「なんでお前が…?」
「カカカカカ!!久しぶりやなぁ、シンさん。」
クランイベント以来出会う事のなかった澤野博之がそこにいた。
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