第115話 強制参加イベント終了
「つ…強い…!!」
圧倒的だった。敵たちが溶けるように沈黙してしまった。正直牡丹さんの力がここまでだとは思っていなかった。
「でも何で島村さんのアルティメットは肉体というか実体があるんでしょうか?タロウさんのバルムンク、楓さんのブルドガング、美波さんのノートゥング、誰もが実体は無かったのに。」
「恐らくだけどアレが”具現”なんじゃないかしら。”憑依”はその字の如く私たちの身体に憑依をして彼女たちが戦う技みたいなものよね?それなら”具現”もその字の如くこの世界に具現化できるんじゃないかしら。そしてその力は”憑依”を遥かに凌駕する。バディイベントで夜ノ森葵が言っていたでしょ、せめて”具現”ができなきゃ勝負にならないって。」
「言ってましたね。じゃあアレがノートゥングたちの真の力なんですね…もし島村さんのように”具現”できるプレイヤーと対峙したら私たちは勝てるでしょうか…」
美波ちゃんが不安そうな顔をして私に尋ねる。
「大丈夫よ。絶対勝つわ。私たちも”具現”を会得できると思うし。本当は牡丹さんがクランに入ってくれていれば良かったんだけれどね。言わなかったけど実は牡丹さんをクランにスカウトしたの。ごめんなさい、みんなに相談もせずに勝手に。」
「えっ、そうなんですか?私は大歓迎ですっ!すごく優しそうな方ですし、何よりタロウさんを助けてけれたんですからっ!」
美波ちゃんが凄く好意的にそう言ってくれた。
「私もです!島村さんとなら仲良くできそうです!タロウさんを助けてくれた人と仲良くできないはずがありません!」
アリスちゃんも同様に凄く好意的に受け入れてくれている。
「でもね…残念だけど断られちゃったの。お金が絡んでる悩みがあるみたいで。」
そう、牡丹さんに断られてしまった以上は私たちのクランに入る事は無い。お金が絡んでる以上はどうする事もできない。
「じゃあ島村さんのその悩みを私たちで解消できればいいんですよ!どんな理由かはわかりませんが、私たちみんなで考えれば何とかできるはずですっ!」
「そうです!私の件だってみんなで助けてくれたんです!きっと何とかできます!」
そうだ。私は気付かされた。1人で解決しようとするんじゃなくてみんなで解決しようとすればよかったんだ。私の悪い癖ね。みんなに相談をする、そんな当たり前の事をしなかったなんて。
「そうね!じゃあみんなで牡丹さんを誘ってみましょう!」
「はいっ!」
「はい!」
ーーだが彼女たちはまだ知らない。この直後に彼女たちはとんでもない事に気づく事を。
*************************
「ありがとう、クラウソラス。」
牡丹さんがクラウソラスへと近寄る。
『あの男の命は持って数分だと思いますが気をつけて下さいね。死の間際が一番恐ろしいですから。』
「うん、わかった。」
『いつでも呼んでね。またねボタン。』
そう言い残してクラウソラスは消えていった。
牡丹さんが瀕死の四ツ倉優吾へと近づく。
「ぐ…あ…」
「苦しいですか?その苦しみを彼も味わったのです。死にゆくその時まで苦しんで下さい。」
「いい気になるな…俺を殺した事で…お前は…お前たちはオルガニに危険視される事になる…フッ…束の間の安らぎを噛み締めていろ…」
「誰が来ようと関係ありません。彼を傷つける者は誰であろうと許さない。私が彼を守る、それだけです。」
「フッフッフッ…精々…抗うが…い…い…」
それが四ツ倉優吾の最後の言葉だった。
戦いが終わり、牡丹さんが俺の所へと戻って来る。
「牡丹さん、ありがとうございます。助かりました。あなたがいなければ俺は間違い無く死んでいた。感謝してもしきれません。」
「そんな事仰らないで下さい。感謝してもしきれないのは私の方です。こんな事ぐらいは当たり前の事です。それと…私の事は牡丹とお呼び下さい。あなたにはそう呼ばれたいです。あと…敬語もやめて下さい。距離を感じます。」
「えっと…牡丹…でいいかな?」
「はい、あなたの牡丹です。」
…あなたの牡丹…?どういう意味だ…?なんかすっごい良い笑顔で言ってるけど何とも言えない圧を感じるのは俺の気のせいだろうか。
牡丹さ…じゃなくて牡丹が俺に顔を近づけて来る。やっべ、めっちゃ可愛いな。花の匂いが香水みたいになってるし。なんかムラムラっときてしまう。
「すみません、私は回復のスキルが無いので手当てをして差し上げる事ができません。イベントが終わるまで私がタロウさんをお守り致しますので少し我慢して下さい。立てますか?」
そう言って俺の腕を取り牡丹が肩を貸してくれる。密着したら尚更牡丹の匂いが…てかさ、牡丹って胸大きいよね。俺の腹付近に胸が凄い当たるんだけど。美波がCって所を考えるとEの可能性はある。堪らんな。
「もうイベントは終わると思うよ。四ツ倉優吾がエリアボスらしいから牡丹が倒してくれたおかげでそろそろリザルトに行くはずだよ。」
「そうなのですか?それなら良かった。少しでも早くタロウさんを苦痛から解放して差し上げたかったので。」
「牡丹は優しいね。ありがとう。」
ついアリスを撫でる時の癖で牡丹の頭を撫でてしまった。ヤバイ、調子に乗りすぎたか、と思ったが牡丹が頬を染めて幸せそうな顔をしている。良かったセクハラにはならなかったみたいだ。
ーー視界が暗くなり闇に包まれて行く。
リザルトが始まる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます