第116話 クラン完成

リザルト部屋に着くと体の痛みは完全に消えた。ようやく生還したって感じだ。本当に今回ばかりは死んだと思っただけに感慨深いものがある。それもこれも牡丹のおかげだ。本当に感謝しかない。


「タロウさん!!牡丹さん!!」


声のする方を向くと楓さんたちが居た。良かった、3人とも無事だったんだな。


「楓さん…?どうして楓さんがここにいるのですか?」


2人とも知り合いなのか?美人が集まる美女会があって2人ともそのメンバーなのかな。


「タロウさんは私のクランのリーダーなんです。」


「リーダー…?という事は支配下プレイヤーを解放したという方はタロウさんなのですか?」


牡丹が俺をじっと見つめながら聞いてくる。


「そんな大した事をしたわけじゃないよ。当たり前の事をしただけ。」


「やっぱりあなたは素晴らしい方です。私はその方と一度お会いしたいと思っておりました。それがタロウさんだったなんて。」


牡丹が目をキラキラさせながら俺を見つめている。こんな美女にそういう目で見られるのは凄く気分が良いが何だか照れるな。


「ていうか牡丹と楓さんは知り合いなんですか?」


「私たちは”闘神”の会合で知り合ったんです。」


「えっ!?牡丹って”闘神”なの?」


「はい。恐れながらそのような位を拝借しております。」


マジかよ。だからあんな鬼のように強いのか。


「…楓さん、あの時のお話はまだ大丈夫でしょうか?」


「クランへ誘った話の事ですか?」


「はい。一度はお断りしてしまった身で大変恐縮なのですが私を皆様のクランへ入れて頂けないでしょうか?」


「もちろん!それに関しては私たちももう一度誘うつもりだったんです。ね、美波ちゃん、アリスちゃん。」


「はいっ!タロウさんを助けてくれた島村さんとなら絶対に仲良くなれますから仲間になって欲しいですっ!」


「島村さんが仲間になってくれたら心強いです!」


何だか話がトントンと進んでいる。俺だけが置いてけぼりくってる気がする。


「タロウさん、事後報告になってしまいましたが牡丹さんをクランへ誘っていたんです。理由があって一度は断られてしまったのですがたった今受け入れてくれました。加入を認めてくれますか?」


「タロウさん、よろしいですか?」


楓さんと牡丹が俺にそう言ってくる。そもそも断る理由もないからな。牡丹の事は良く知ってるし。


「楓さんも美波もアリスも納得なら断る理由は無いよ。牡丹がいてくれれば心強いし。じゃあよろしくね牡丹。」


「はい!ありがとうございます。」


「やった!えっと、相葉美波です!20歳の大学2年生ですっ!これからよろしくお願いしますねっ!牡丹さんって呼んでもいいですか?」


「美波さんより年下ですので呼び捨てて構いません。それと敬語もやめて下さい。」


「じゃあ牡丹ちゃんだねっ!よろしくねっ!」


「こちらこそよろしくお願い致します。島村牡丹と申します。17歳の高校2年生です。」


「えっ!?牡丹って高校生なの!?」


「はい…?言ってませんでしたか…?」


聞いてないよ。美波と同じくらいだと思ってた。なんか未亡人みたいなオーラが出てたからなぁ。しょうがないよな、状況が状況だったし。でも女子高生か…犯罪臭が強くなってきた気がするな。


「結城アリスです。12歳の小学6年生です。よろしくお願いします牡丹さん。」


「よろしくねアリスちゃん。」


牡丹はアリスとも挨拶を交わす。


「じゃあこれを機に私も牡丹ちゃんにするわね。」


「はい、よろしくお願い致します楓さん。」


「ところで牡丹ちゃんはタロウさんとどういう関係なの?」


「実家が花屋を経営しているのですが最初はお店のお客さんだったのです。」


「花屋…?」


ーー相葉美波は気づく。最近家にある花の出所に。そしてメッセージカードの主に。



「それで…楓さんにはお話したと思いますが、タロウさんが私の人生を救ってくれたんです。どん底にいた私を助けてくれた…凄く嬉しかった。」


ーー芹澤楓は気づく。牡丹が気になっている男性がいた事を。そしてその相手が誰かという事も。



ーー結城アリスは気づく。牡丹が自分が置かれた状況と酷似している事を。そしてそれを話す牡丹の顔が恋する乙女の表情になっている事を。




ーー3人は気づく。ライバルが1人増えた事を。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る