第52話 芹澤楓
私の親友は中学生の時に男に強姦された。男は捕まった。だけど男は不起訴になった。男の親は社会的地位の高い人間で事件を揉み消した。そして親友は校舎の屋上から飛び降り、自殺をした。
私は親友に何もできなかった。何の言葉もかけてあげられなかった。私は無力だった。
男は大嫌いだ。私の親友を死に追いやり、あまつさえ自分はのうのうと生きている。女の痛みや苦しみがわからない男が大嫌いだ。男は許さない。弁護士になって苦しんでいる女性を救いたい。卑怯な男どもに正義の鉄槌を下してやる。そう心に誓った。
親友が死んだ日から私は心身ともに鍛える事に精を出した。男に負けない力を手に入れようと剣道を必死に頑張り、男に負けない知恵を付けようと勉強を必死に頑張った。それだけをひたすら頑張った。
その甲斐があって高校の時には剣道三大タイトルである玉竜旗、インターハイ、選抜をそれぞれ個人で優勝し、高校三冠に輝く事もできた。
勉強面では世界三大大学である東京中央大学法学部にトップで合格する事もできた。在学中に弁護士資格も取得し、飛び級で卒業する事ができたから司法修習の際の休学期間を合わせても4年で大学を卒業できた。そして卒業と同時に業界最大手の弁護士事務所に働き始める事ができた。
とうとう私の夢が叶った。親友への償いが少しでもできただろうか。いや…できているわけがない。まだまだこれからよ。私が正義の鉄槌を下していかなければ償う事はできない。頑張らないと。
ーー仕事を始めてから1年が経った。
クライアントと接する仕事面では非常に充実した毎日を送る事ができたが、同僚の男性やパーティなどでの男性との絡みは苦痛だった。
学歴や社会的地位があっても男の本質は変わらない。私に近づいてくる男たちは皆、私の顔や身体を見ているのがわかる。その視線が気持ち悪くてトイレで吐いてしまった事もある。
女性のみの事務所に移ろうかと考え、パソコンで調べようとした時に気になるバナーが現れた。
『あなたの歴史を変えませんか?』
普通なら馬鹿らしいと思うだろう。でもこの時の私はその文言にすごく心が惹かれた。私の指は何の躊躇いも無くバナーをクリックした。
すると私のスマホにアプリのダウンロードが強制的に始まった。その不可思議な現象に薄気味悪さを感じ、ダウンロードを中止しようとスマホを操作するが制御できない。電源を落とそうとしてもできない。そうこうしている内にダウンロードが終わってしまった。アプリには俺'sヒストリーと記されている。
こんな気持ちの悪いアプリを普通なら開こうとしないだろう。でもこの時の私は開く事に躊躇いは無かった。
アプリを開いてみると急に辺りが暗くなった。暗いというより何も見えない真っ暗な空間に私はいた。こんな得体の知れない状況にも関わらず私の心は恐ろしい程に冷静だった。辺りの様子を伺っていると闇の中から仮面をつけたナニカが現れた。
『随分と冷静なのでスネ。普通は取り乱したリ、冷静なフリをしようとしますが貴女は本当に穏やかでイル。カカカカカ、面白いニンゲンですネ。』
現れた仮面のナニカはツヴァイというらしい。そのツヴァイが私にこのアプリについての説明を始めた。どうやらこのアプリは歴史を変える事ができるらしい。こんな馬鹿馬鹿しい話を信じる者がどれだけいるだろう。ほとんどの人間が信用するわけが無い。
でも、私はツヴァイの言う事が真実であると感じた。嘘を吐く者は言葉に出る。このツヴァイにはそれが無かった。ならば信じるに値する。
そしてツヴァイは私にチュートリアルというものをやらせた。その内容は本物であると証明するには十分な内容だった。私の心は踊った。親友を助けられるかもしれない。あの出来事を無かった事にできるかもしれない。私は俺'sヒストリーへの参加を決心した。
ーーだがこのゲームはそんなに甘いモノでは無かった。
過去に行く為にはメモリーダストというアイテムを集めないといけない。そしてそれにはイベントへの参加が必須だ。だがゲームオーバーになったり、イベントで負けたりした時のリスクが大きかった。
その為まず私は装備スキルを充実させる事に努めた。チュートリアルで3連ガチャを引いたがSSしか出なかった。勝率を上げる為には最高レアリティであるアルティメットレアの入手が不可欠だろう。ガチャ1回の料金は法外だが致し方無い。私は課金する事を決意した。幸いな事に300万円程課金した所でアルティメットレア《剣帝の魂》を手に入れる事ができた。スキル名から察するに剣を使う事に対する強化なのは間違いない。それならば私にとってはかなり有利だ。大学になってからは剣道と疎遠になってしまっているが、剣道はブランクがあっても技術は下がらないというし問題ないだろう。
私は《剣帝》を使ってみる為にイベントへ参加した。私の相棒はブルドガングというらしい。少し口が悪いけどとってもいい子。彼女とは上手くやれそう。
だが課題も見つかった。複数名のプレイヤーで争うイベントに対して《剣帝》は1度しか使えない。これは相当危険な要素だ。どんなにブルドガングが強くても私ではSレアスキル相手に勝てるかどうかもわからない。イベントに参加するにはまだリスクが大きい。何か情報を得ようと攻略掲示板みたいな所を閲覧していると、どうやらスキルアップカードなるものがあるという事がわかった。そしてそれはSS3枚程度とトレードする事もできるらしい。SSならガチャを回した時に3枚手に入れた。それなら工面できる。
早速私はトレードのスレッドを見てみると相場よりも安いSS2枚での条件のものがあった。1枚はバトル系スキルとの事だが《騎士の証》があるから問題ない。それにナミというハンドルネームから察するに女性だ。男だったらどんなに好条件でも御免だ。
私はすぐさまナミさんにコンタクトを取った。プレイヤー狩りの罠かもしれない事を考慮して場所指定をしたが快諾してくれた。やりとりを見る限りでは打算的な相手ではない。信じるに値する人物だと思った。私は彼女に会う事にした。
だが待ち合わせ場所に着いた時に私は愕然とした。異常に綺麗な子がいるからすぐにナミさんだと察したが問題は隣にいる男だ。男連れでオレヒスの取引に来るとは思えない。そうすると男の方もプレイヤーだろう。だが仲間という線は薄い。このゲームはそんな事をすれば寝首をかかれかねない。どちらかが奴隷だ。そして雰囲気から察してみても男の方に主従権があるように見える。女を奴隷にするようなクズに会う必要は無い、帰ろう。そう思ったが私の勘違いという可能性もある。一応確認だけはしよう。そう思って席へと近づき2人に確認するが残念ながら私の予想通りだった。凄まじい嫌悪感と怒りに狂ってしまいそうだった。ここがオレヒス内ならばこの男を殺してナミさんを救ってあげたかった。だがここは現実世界。堪えなければならない。数日前にオレヒスの通知であったアルティメットを捧げてまで奴隷を解放したプレイヤーのような方もいるのに女を喰いものにす
るこの男のようなクズまでいる。ナミさんには悪いけどこの場を立ち去ろう。
そう思い彼女たちにそれを告げた時だった。意外な事にナミさんが怒りを露わにしている。私にはそれが理解できなかった。だが経緯を聞く内に私が間違っている事に気づかされた。この男性は奴隷に堕ちかけたナミさんを救った事や私が会いたいと思ったアルティメットを捧げてまで奴隷を解放したプレイヤーだという事を知った。そんな素晴らしい方に対しての私の態度は恥ずべき行為としか言いようがない。私は誠心誠意謝罪をした。簡単に許してもらえるような事では無いと思っていた。だが2人は私は許してくれた。それどころか私と友達に…いいえ、親友になってくれた。とても嬉しかった。私はこの2人の支えになりたいと思った。
2人と情報交換をする内に次のイベントの詳細を知った。残念ながら私はその内容のイベントには参加しようとは思わなかったが2人は参加する決意をしていた。
私はとても心配だった。根拠は無いが不安な感情が私の心を覆っていた。
私はエントリーの刻限ギリギリまで悩んだ末に参加を決意した。タロウさんと美波ちゃんを助けないといけない。その一心で参加した。だが1万人以上はいるであろうプレイヤーたちの中で、同じエリアに配置される可能性はかなり低い。でも私はきっと同じエリアになると思った。当然根拠は無い。女の勘だ。
トート・シュピールが始まり私は森の中を散策していた。しばらく歩いていると森の植物の種類が一部分だけ変わっている場所が現れた。まるでその空間だけ別の次元にあるような異様さが漂っている。普通ならばそんな怪しい場所は敬遠する。だが私はその空間に呼ばれているような気がして躊躇いもなくそこに足を踏み入れた。すると木々たちが、隠していたモノを私に明け渡すかのように左右に避けていく。そして木々たちが避けた先には古ぼけた宝箱があった。私はその宝箱を開けてみる。すると中には剣が1本入っていた。その剣は豪華な装飾が施されているわけではない。だが剣自体からオーラのようなモノを放ち、さらにはなんとも言えない神々しさまで放っている。私はその剣を手に取る。すると突如として不思議な感覚を感じるようになる。少し離れた所に誰かがいる気配、森を歩く足音、話す声、それらがはっきりと感じ取れた。気のせいや勘違いなどでは無いとは思
うがそれらを実証する為に気配のある方へと移動する。すると、さらなる違和感を感じた。身体が異常に軽いのだ。まるで体重が半分になったかのような軽さなので、普通に歩いている感覚でも全速力で走っているかのような速度が出る。瞬く間に気配がする場所に着くと案の定プレイヤー2人がいた。やはりこの感覚は間違いでは無い。でもこの感覚は一体どうして私に備わったのだろうか。思案していると男たちが私に気づき歓喜を上げる。
「おい!!女だ!!何だよあの女!!あんなイイ女見た事ねぇぞ!!」
「マジっすね!!やば!!」
「おい、姉ちゃん!!こんな所に急に現れてどうしたんだ?俺らと仲良くヤリてぇのか?イヒヒ!」
清々しいまでのクズっぷりだ。これが男の本性というものであろう。タロウさんは例外中の例外。やはり駆逐するのが一番ね。
「気持ちの悪い声を上げないでもらえるかしら?ただでさえ気持ちの悪い顔をしているのだから。」
「…あ?何だこの女。甘くしてりゃあツケあがりやがって。」
「女の癖に舐めてますね。やっちまいましょうよ。」
「そうだな。殴って言う事利かせる方が性に合ってるしな」
男たちが黄色のエフェクトを発動する。黄色という事はレアね。取るに足らないわ。
私の見立てではSSで達人級、Sレアで高段者級、レアで低段者級相当の技術が身につくのだと思う。私は剣を持てばSレア級なのだからこのクズどもには負ける筈が無い。ブルドガングを出すまでも無いわ。
男たちが私へと迫ってくる。私は先程手に入れた剣を鞘から引き抜く。惚れ惚れするような美しい刀身だ。やはり蒼白いオーラのようなモノが薄っすらと見える。
私は目の前で軽く剣を横に振り男たちへと斬りかかろうと試みる。だが私はすぐにその足を止めた。男たちが突如後ろへと吹き飛びその身体が大木へと叩きつけられる。男たちが纏っていた黄色のエフェクトは消え、完全に気絶していた。
私は何が起こったのか理解できなかった。だが思い返すと私が素振った時に真空の刃のようなモノが出ていた気がする。それが男たち目掛けて飛んで行き、直撃してこの有様になったのではないかという仮説を導き出した。明確な答えはわからないがこんな所で考えていても仕方がない。こいつらは木に括り付けて先を急ごう。タロウさんと美波ちゃんはこのエリアに必ずいる。早く探し出して合流しないと。
だが私の思いとは裏腹にタロウさんたちとの合流は2日目になっても叶わなかった。その間に1人のプレイヤーと遭遇しただけで何の手がかりも無い。やはりエリアが違うのだろうかと諦めかけていた時だった。
ーー美波ちゃんの声が聞こえた。
空耳ではない。間違いなく美波ちゃんの声だ。それも泣いている声だ。
私は全速力で駆け出した。
絶対に美波ちゃんを守る。
美波ちゃんを泣かせる者は許さない。
声がした場所に着くと男2人と美波ちゃんとタロウさんがいる。タロウさんはスキルによって拘束されているようだ。そして美波ちゃんが男の1人から性的な事を強要されそうになっている。
ーーそれを見て私の中で何かが切れる音がした。
「オラ!!はよせんか!!」
「そんな事する必要ないわよ。」
私はタロウさんを縛り上げている鎖を断ち切り、男の前に立つ。
「誰やお前!?イイトコやったのに邪魔してくれおって!!!タダじゃ済まさんぞゴルァ!!!」
「タダじゃ済まさない?それはこっちの台詞よ。よくも私の大切な人たちを傷つけてくれたわね。」
ここまで頭に来た事は生まれて初めてだ。今どんな顔をしているか想像できない。こんな顔を美波ちゃんたちに見せられない。それぐらい鬼のような顔をしているだろう。
「楓さん…!楓さん…どうして…?」
美波ちゃんが涙まじりの声になっている。私は何とか心と顔を落ち着かせ美波ちゃんの方に振り向く。
「奇跡としか言いようが無いわね。2人が参加をするって聞いてからよく考えたの。きっと美波ちゃんたちは苦境に立たされる、それなら私が力にならないと、って。でも同じエリアに配置されるかはわからない。何と言っても1万人近いプレイヤーがいるのだから同じエリアになる確率なんて相当低い。それでも…あなたたちに会えた。奇跡ね。」
「私…私…」
美波ちゃんの顔が涙でくしゃくしゃになっている。私は手で涙を拭ってあげた。
「ほら、もう泣かないの。可愛い顔が台無しじゃない。」
「どうにもできなくて…!もう諦めるしかないって思って…!タロウさんだけは助けたくって…!」
嗚咽を漏らしながら喋っている美波ちゃんを落ち着かせようと務める。
「大丈夫よ。私が必ず守るから。」
美波ちゃんは少しづつ落ち着きを取り戻す。
だがーー
「何を女同士で乳繰り合っとるんや!!気持ち悪い!!」
…腹立たしい。八つ裂きにしてもまだ足りない。こいつだけは許せない。2人を傷つけたこいつだけは。
「…気持ち悪いのはあなたでしょう。」
「言うやん。お前、めっちゃいい女やな。美波と同等や。それに…ワイの大好きな処女のエェ匂いや!!こんなレベルの女がこの世に2人もおるなんてな。最高や。お前もワイのモンにしたる。でもその態度はダメやな。しっかり調教せなあかんわ。」
「そういう妄想はやめてもらえるかしら?反吐が出るわ。」
「気の強い女もめっちゃ好みやで。ワイに服従させる過程が最高やからな。」
「本当に屑ね。救いようが無いわ。」
「屑?ワイがか?カカカカカ!それは違うやろ。屑っちゅうんはそこに転がってる偽善者みたいな奴の事を言うんや。」
「タロウさんは偽善者じゃない!!訂正しなさいっ!!!」
「さっきまで堕ちる寸前だったのに生意気な口利くやん美波ちゃん!安心し、ちゃんと続きしたるから!でも訂正はせんで、事実やからな。そいつが美波ちゃんを救ったんは惚れさせようとしただけやろ。強制的に性奴隷にしたんじゃつまらん、身も心も支配したかっただけやん!それがコイツの作戦やったくせに善人ヅラして未だに手ェ出してへんって、偽善者以外に言葉あらへんやん。」
「タロウさんはそんな人じゃない!!」
「はぁー?美波ちゃんはホンマわかっとらんな!男はな、女とヤる事しか考えてないんや!それだけや!優しくしたり、上手い事言うたり、プレゼントあげたりとかは全部過程!ヤる為の過程や!!好きになる、愛してる、こんなのはまやかしや!虚像!!イイ女にブツを入れて、射して、それで終わりや!!」
「それはあなただけ…ううん、大概の男はそうかもしれない。でも…タロウさんは違う!!」
「ま、お前も同じや。」
「…何が?」
「結局はシンさん、シンさん言うとるけどそいつの顔ありきの話やろ?ワイみたいなん相手にはブツを咥えろ言うても嫌がるけど、シンさん相手なら喜んでするんと違うん?それは顔での判断やろ?顔のイイ男とヤりたい、そう言う事やろ?ワイと同じやん。結局は人間は皆同じなんや!!」
「違うわ!!私はタロウさんを顔で選んだわけじゃない!!」
「ならあん時ワイがお前を救ってもワイに惚れたんか?」
「それは…」
「ほれ見ィ。顔ありきや。お前も!!ソイツも!!ワイと同じ、しょーもない人間なんや!!」
「ーーそうかもしれないわね。」
「ほっほー!楓ちゃんはわかっとるやん!」
「確かにタロウさんは惚れさせようとして美波ちゃんを助けたのかも知れない。」
「楓さん!?」
美波ちゃんが悲鳴に近い声で私に訴えかけている。大丈夫よ。あなたたちを否定なんてするわけないじゃない。例え世界があなたたちを否定しても私は肯定する。
「ーーでもそれの何が悪いの?」
「あ?」
「仮にそうだったとしてもタロウさんが美波ちゃんを助けた事には変わりはない。そこから惚れさせようとしてもそれは恋愛の駆け引きでしょう?」
「何を言うてんねやお前…!」
「何よりタロウさんは他の屑の男どもが挙って女を性奴隷にしようという状況の中でそれをしなかった。それは”偽善”でなくて”本性”でしょう?」
美波ちゃんから揺らいでいたような気持ちが消えた。きっと私の真意を理解してくれたのだろう。
「それに顔っていうのは心を写すのよ?顔が良いって事は心も綺麗なのよ。あなたの顔が醜悪なのは心を写しているのよ。ウフフ。」
「このアマ…!調子に乗りおって!!躾が必要やなぁ!!!お前は謝っても許さへんでぇ!!!」
男の体から銀色のエフェクトが発動する。
「あなた…何か勘違いしてるんじゃないかしら?」
「あぁ!?」
「私は今、凄まじく怒っているのよ。謝っても許さない?それはこちらの台詞よ。」
私は金色のエフェクトを発動した。
「きっ、金色…!?さ、澤野様ッ!!!」
「…チィ!!アルティメット持ちか!!和田ァ!!その女の背後を取れ!!レアリティで勝負が決まる訳やない!!それに所詮は女や!!」
もう1人の男が私の後方へと移動する。
「ずいぶんと見くびられたものね。」
タロウさんと美波ちゃんが受けた痛みを倍にして返してあげるわ。生きている事自体を後悔させてあげる。
「見せてあげるわ、剣帝の力をーー」
私の周囲に楔形文字のような文字列と魔法陣が現れ、魔法陣の中からブルドガングを召喚する。
『久しぶりねカエデ、元気にしてた?』
「元気よ。あなたはどうかしら?」
『元気と言えば元気ね。で、コイツらなの?』
「ええ、私の大切な人たちを傷つけたコイツらを絶対に許さない。」
『そうね。カエデの怒りはアタシの怒り。カエデを怒らせた事自体が罪よ。絶対に許さないわ。身体、借りるわよ。』
「お願いね、ブルドガング。」
ーーブルドガングへ戦いの場を任し、意識が薄れていく。
ーーそして目を覚ました時には全てが終わっていた。
「…ありがとうブルドガング。さて、と。無様ね。」
「…ハッ!アルティメットの力っちゅうんが身に沁みたわ!!さあ!殺せ!!殺さんと絶対後悔させたるで!!」
「その出血で丸一日以上は保たないでしょう。とどめを刺すまでも無いわ。己の愚かさを少しでも反省して勝手に死になさい。」
「絶対ワイは生き残ったる…!!とどめを刺さんかった事を後悔させたるからな…!!美波もお前も絶対にワイのモンにしたる…!!!」
愚かな男ね。ま、いいわ。早く2人を連れてここから離れましょう。
「お待たせ。じゃあ私の拠点に行きましょうか。そこならタロウさんを休ませられるし。」
「楓さん…本当にーー」
「はい、そこまで。お礼なんていらないわ。私たちは親友、友達なら助け合うものでしょ?」
「はいっ!私たちは友達ですもんねっ!」
「ウフフ!さて、タロウさんは私が運ぶわ。美波ちゃんは疲れているでしょ。」
「大丈夫ですっ!私も手伝いますっ!」
「心配しないで。何だか身体から力が漲ってくるのよ。だから全然大丈夫。私に甘えなさい。」
「じゃあ…甘えちゃいます。」
「よし!じゃあ行きましょう。」
私たちはタロウさんを連れてこの場を後にした。
だが不思議な事にイベント終了まで何も起こらなかった。
こうしてイベントは幕を閉じた。
だが数日後、私たちは強制的にイベントへ参加させられる事となる。
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