第13話 瞬殺
タロウさんが魔法陣から出て来た金髪の女の人…男の人かな?その人と会話をしている。あれが剣聖なのだろうか。私の持ってるスキルとは違って誰かを召喚するタイプのものがあるとは思わなかった。剣聖の魂…魂って事は歴史上の人物か何かなのかな。それにしてもすごい綺麗な人だなぁ。女の人にしか見えないぐらいの美しさだけど男の人なんだよね?剣聖ってぐらいだものね。
話を遮ってはいけないので私は2人の会話を聞く事にした。
「で、俺はどうすればいいんだ?」
『我に体を貸す事を許可するように考えれば良い。』
「オッケー、頼んだぜバルムンク!」
バルムンクがタロウさんの体に入っていく。それと同時にタロウさんの体の周りに金色のオーラが現れる。
「…まさか本当に今一度剣を握れるとは思わなかった。感無量だ。」
バルムンクがタロウさんの中に入っていったけどタロウさんなんだよね…?私は恐る恐る話しかけてみる。
「えっと…タロウ…さん…?」
「む?主はシンタロウと一緒にいる女子だな。我はシンタロウではない。バルムンクだ。」
「えっ?どういうーー」
「のんびり話している状況ではないな。」
私たちが話している間に、ゾルダートたちが私たちを取り囲み襲いかかろうとしている。状況的には相当マズイのは明らかだ。
「名は何と言う?」
タロウさ…バルムンクが私に問いかけてくる。
「あっ、相葉美波です!」
「ふむ。美波よ、その場から動くなよ。」
私にそう告げると、左足で地を蹴り、ゾルダートへと向かって行く。そして手にしていたロングソードを鞘から抜くと同時に1体目のゾルダートを斬り倒す。だがその剣は1体だけでは終わらず、直線上にいた残り3体のゾルダートをも斬り裂き、一瞬のうちに4体のゾルダートが真っ二つに斬り裂かれた。残りは私たちが最初に遭遇したゾルダート1体のみ。
そして、最後のゾルダートが私に対してロングソードを振り上げ襲いかかる。私は持っている剣でそれを防ごうとした時、背後から鎌鼬のような真空の刃が飛んで来てゾルダートを沈黙させた。
それはほんの数秒の出来事だった。戦いはあっという間に終わり、辺りにはゾルダートの死体が転がっている。血生臭いなんともいえない臭いが周囲を覆っていた。
「こんなものか。つまらぬ。」
「つ、強いですね…」
「此奴らが弱いだけだ。ふぅ…せっかくの肉体だったのにもうお別れか。また次の機会に期待をしよう。ミナミよ、シンタロウによろしく言っておいてくれ。」
「わっ、わかりましたっ!」
タロウさんの体から薄く透けたバルムンクが出て行き消えて行く。そしてタロウさんの体から出ていた金色のオーラも収まった。
「タロウさん!大丈夫ですか!?」
「う…終わったのか…?」
「はいっ!バルムンクが全て倒してくれましたっ!覚えてはいないんですか?」
「全く覚えていないな…何だか浅い眠りについてる時のような感じだったよ。でも勝てて良かった。」
「そうですねっ!」
初めて勝てたイベントだから嬉しいな。でも私は何の役にも立ててないのよね。タロウさんの為になれるように頑張らないと。あれ?ゾルダートの死体が無い…。さっきまではあったのに…。
「タロウさん…。ゾルダートの死体がありません…。さっきまでは確かにあったんです。」
「灰になって風で飛ばされたのかな?」
「それならいいのですが…。」
血だって出ていたのにその跡すらも消えている。なんだろう…気味が悪いな…
「さて、これで全部倒したはずだけどメモリーダストはどこだ?」
「あそこ虹色に光ってませんか?」
最後にバルムンクが倒したゾルダートが倒れていた場所が微かに光っている。私たちはそこに近づくとメモリーダストを発見した。
「やっぱりありましたねっ!よかった!」
「そうだな。はい、じゃあこれは美波の分ね。」
「はい…?」
何を言ってるのだろう?メモリーダストは一個しかないのに。
「美波はまだ一個もないじゃん。だからこれでお互いに一個ずつ。」
「だっ、ダメですよ!!タロウさんが活躍して手に入れたんですから!!」
「美波。俺は美波の事を大切に思ってる。だから自分1人で得をするような事はしたくない。2人で分かち合いたいんだよ。」
「…そんな優しいと胸が苦しくなります。」
「ん?ごめん、聞き取れなかったんだけど。」
「なんでもありませんっ!……タロウさんの言葉に甘えてもいいんですか?」
「もちろん。」
そう言ってタロウさんはメモリーダストを持った手を私に差し出す。それを私は笑顔で受け取った。
「ありがとうございますっ!」
そしてーー
辺りがブラックアウトを始め、闇に包まれるとアイツが姿を現わすーー
『さテ、リザルトを始めましょうカ。』
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