第14話 嫁かよ

『リザルトを始めましょうカ。』


「お前のその驚かせるような現れ方は何とかならないのか?」


『以後気をつけまス。今回の立ち回りは御見事デシタ。流石はアルティメットという所でしょうカ。』


「俺はバルムンクの戦いを見てないから何とも言えないけどアイツらを瞬殺するんだから相当だよな。実際に剣を交えたからわかるけどゾルダートの強さってかなりのもんだろ?」


自分で言うのもなんだが、俺の剣の腕はなかなかのものだと思う。高校まで俺は剣道をやって来たが、インターハイで個人ベスト16まで行った事がある。その俺がサシでの勝負で1分持たないと感じた。経験上の推測としてゾルダートの技量は高段者クラスだと思う。そんなレベルの奴がこれからもゾロゾロと湧いてこられたらたまったものではない。


『カカカカカ!御名トウ!貴方方が対峙したゾルダートはスーパーレアのスキルを使えるのデスヨ。赤いオーラはスーパーレアの色デス。ダブルスーパーレアは銀色のオーラ、アルティメットは金色のオーラとなっておりマス。』


「あー、なるほど。スーパーレアってずいぶん強いって事だな。」


『そうデスネ。1つ忠告しますガ、アルティメットだからといって驕らない事デス。スキルのレアリティで勝負が決まるわけではありませン。戦略も大事デス。特にタナベシンタロウサマは《剣聖》しか攻撃手段がありませン。それも1回のミ。前回のバディイベントの報酬のスキルアップカードを使っても2回デス。もっと考えて行動しないと死にますよアナタ?』


「ずいぶんと今日は饒舌だな。そんなに心配してくれてるなんて思わなかったよ。」


『私は貴方に期待しているのでス。こんな所で死んでもらっては困りまス。明後日までには通知が来ますガ、大きいイベントが開催されまス。』


「大きいイベント?」


『はイ。簡単に概要を説明するト、10組のプレイヤーが1つのエリアに集められて3日間戦って頂くイベントを開催シマス。』


「10組ですか!?まさかその中で生き残れるのは1組だけって事じゃ…」


『カカカカカ!御安心下さイ。3日間生き残れば全員がクリアとなりマス。』


「それじゃあ誰も動かないんじゃないか?」


『1位の組にはスキルアップカードを報酬として差し上げマス。ですから勝手に潰し合いが起こりますヨ。』


「そんなにスキルアップカードなんて欲しいもんかね?メモリーダストなら欲しいけど。」


『カカカカカ!それはアイバミナミサマに聞けば解ると思いますヨ。貴方はスキルアップカードの価値を理解してイマセン。』


「え?そうなの美波?」


「はい。スキルアップカードは貴重ですよ。トレードで高レアリティのカードと交換できますから。」


「トレード?そんなのあるの?」


「はいっ!私はした事ありませんが、現実世界でプレイヤー同士なら譲渡と交換ができるみたいです。」


「へぇ。なるほど。戻ったら詳しく教えてくれないか?」


「わかりましたっ!色々教えちゃいますっ!」


なんかさ…美波って言い方がエロいよね…うん


『これにてリザルトを終了とさせて頂きマス。御機嫌よウ。』



闇が深まり、全てを飲み込み意識が途切れた






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



……誰かに呼ばれている


……あ、美波か



「タロウさんっ!朝ですよ!」


美波に起こされるのも少し慣れて来たな。


「おはよう美波。ん?おはよう?ミニイベに参加したのって夜だったよな?」


「あ、疲れてると思ったので朝まで起こさなかったんです。でもリザルトが終わって私たちの部屋に戻って来たのは深夜3時過ぎでした。オレヒス内での時間と現実世界での時間は合ってませんよね。」


今、しれっと『私たちの部屋』って言ったよね?もうここにいる気満々だよね?


「時間のズレがあるのか。そもそもオレヒスをやってる時に現実世界での俺たちはどうなってるんだ?消えてるのかな?」


「考えた事もなかったですね…。オレヒスをやっている時でも時間は経過してるんですから消えている可能性の方が高いですよね。」


「ますます意味不明なゲームだな。て言うか…腹減ったな。」


先程から室内にいい匂いが充満して俺の胃袋がメシをよこせと轟叫んでいる。


「朝ごはんの準備はできてますっ!昨夜の肉じゃががいい感じになってますよっ!」


「この匂いだけでも米が食べれるよ。じゃあ食べようか。」



いただきますをして早速俺は肉じゃがを口にほうばる。…味が染み込んでいて半端なく美味い。これは米が進むぞ。


「昨夜のもすごく美味しかったけど1日寝かせたやつは比べ物にならないぐらい美味いね!」


「ふふっ!ありがとうございますっ!喜んでもらえたのなら嬉しいですっ!」


いや、これは美味いわ。美波がいてくれるって事はこんな美味いものが毎日食べれるのか。それって最高じゃないか。こんなに可愛い子が俺の為にメシを作ってくれるなんて。

…でもそれでいいのか?美波に甘えすぎじゃないか?


「でも美波にこうして毎日食事を作ってもらっちゃってなんか悪いよな。」


「そんな事ありません!私が勝手にやってるだけですからっ!」


「でもいい歳した大人が甘えてるのもなぁ。」


「…タロウさんは迷惑ですか?」


「そんなわけがない。迷惑じゃないからこそ申し訳ないんだよ。」


「じゃ、じゃあご褒美をもらってはダメですか!?」


「ご褒美?」


「お仕事をすればお給料がもらえます。それと同じようにタロウさんが私にご褒美をくれればいいんじゃないでしょうか!?」


おぉ…!なんだか美波が力強いな。ご褒美が欲しいのか。ブランド物のバッグとか?


「美波がそれでいいなら俺は問題ないよ。つまりはバイト代って事だよね?」


「お金なんて要りませんっ!」


「違うの?じゃあご褒美って何が欲しいの?」


「…何でもいいですか?」


そうやって上目遣いで見てくるのはズルいぞ美波!そんな事されたら俺はチョロいんだから何でも聞いちゃうじゃないか


「いいよ。美波にはお世話になってるからな。」


「やった!じゃあ合鍵下さいっ!」


「…………何の?」


「タロウさんの部屋のですっ!」


「いや、それはダーー」

待て


待つんだ田辺慎太郎。何でもいいって言ったのにダメなんて言ったらお前の信用は失墜するぞ。それは言っちゃいけない。でも何だって美波は合鍵なんか欲しいんだよ。武器にでもするのか?


「じゃなくて、何で合鍵なんか欲しいの?」


「だって、合鍵があればいつでもごはん作りに来れますからっ!そうすればタロウさんの健康管理もできますし。」


そうか…俺の為に合鍵が欲しいって事か…美波は何の得もしてないって事じゃないか…美波はいい子だな。


「美波がそれでいいならいいよ。はい、合鍵。」


「やっ、やった!……もう彼女だよねこれって。」


また小声でブツブツ言ってるな。ん?でもここに住む気満々なのにいつでもごはん作りに来れるとか関係ないよな?あ、でも住むなら結局合鍵渡さないといけないのか。


「あ、今日土曜日だから俺は朝から仕事だからもう行かなきゃならないけど留守番任せていい?」


「もちろんですっ!お洗濯とか、お掃除もやらないといけないですし。やる事いっぱいだなぁ。」


「ありがとう美波。じゃあ時間だから行くね。行ってきます。」


「いってらっしゃい!早く帰って来て下さいねっ!」




嫁かよ

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