第11話 ゾルダート

…誰かに呼ばれてる


…起こされてる?


「タロウさん起きて下さい!!」


ーー美波に起こされる。昨日もそうだったな。


「おはよう美波…何時…?」


目が開かない。俺は朝弱いからなぁ。


「タロウさん!イベント中ですっ!!しっかりして下さいっ!!」


「…イベント?あっ…!」


そうだった。ミニイベントに参加したんだよ。何寝てんだよ俺。


「ごめん美波…!」


「何事もないならよかったです。明るくなったと思ったらタロウさんが倒れてたので心配しました…」


「本当にごめんな。で…ここは…」


辺りを見渡すと、完全な廃墟と化している場所に俺たちはいた。建物は空襲でも受けたかのように破壊されている。とても人などがいるような気配は感じられない。


「この前のバディイベントの時の街が破壊されたみたいな場所ですね…」


「そうだな。バトルエリアって何か意味があるのかな?」


「どうなんでしょうか?でも全く無意味とも思えませんよね。もしかしたら隠しアイテムとかがあるかもしれませんよ?ふふっ。」


美波の言うことは一理ある。マップに隠し武器とかユニットがあるゲームだってあるんだからオレヒスにあってもおかしくはない。


「そういえば美波のスキルってどんなの?」


「私は全然大したスキルはありません…。持ってるのは《剣の心得》と《打撃無効》と《脚力強化》です。詳しくは…これで見れます。どうぞ。」


美波がスマホを操作して俺に手渡した。



《レア 剣の心得 効果 剣士としての心得を得る事ができる。ただし、1度のみ。 Lv.1 》



《レア 打撃無効 効果 打撃攻撃を無効にできる。ただし、1度のみ。 Lv.1 》



《アンコモン 脚力強化 効果 自身の脚力を1%上昇させる事ができる。ただし、1度のみ。 Lv.1 》



「へー、こんなのが見れるんだ。どこで見れるの?」


「スマホ借りますね。ここをこうして…これですっ!」


時代についていけなくなって来たなぁ…



「ありがとう美波。ほいよ、俺のも確認しといて。」


「いいんですか?ありがとうございますっ!……なんだかすごそうですねアルティメットって。どんなスキルなんですか?」


「使った事ないからわからないんだよね。」


「あ、そっか。私とが初めてだったんですもんね。」


…なんだろう。今の台詞だけ聞くといかがわしい事したみたいだよな。


「きっと今回は使う事になりそうだけどね。どんなスキルか確認する必要もあるし。」


「…今何か聞こえませんでしたか?ガシャンガシャンって音があっちの方から聞こえたような…」


「廃墟だし何か崩れたのかな?」


「そういう音ではなかったです…映画とかで鎧を着た人が動いてる時のような音でした。」


「て事はゾルダートって奴かな。様子を見てくるから美波はここで待ってて。」


「私も一緒に行きます!」


美波はそう言うと思ったよ。


「わかったよ。でも俺の後ろについてるんだよ?」


「はいっ!」




俺たちは美波が音を聞いたという方角へと向かい、廃ビルの陰から向こう側の様子を伺ってみる。すると、西洋の甲冑を着た人間みたいな奴がいる。手には俺たちと同じロングソードのような剣を持ち、何かを探しているように徘徊していた。


「完璧ゾルダートだろ。アイツどれぐらい強いんだろう。そういえば美波は剣って使った事あるの?」


「いえ、ありません。私は中学の時からずっとテニスをやってました。」


美波のテニスウエアってなんか…いいよね。うん。後で見せてもらおう。


「じゃあ武道とか格闘技の経験は無いんだね。」


「そうですね。タロウさんはあるんですか?」


「一応剣道は高校までやってたよ。柔道も二段までなら持ってる。」


「すごいですねっ!流石ですっ!」


「そんなに威張れる程のもんじゃないけどね。でも正直

1体だけなら勝算は結構あるかな。倒さないと始まらないんだから戦ってみよう。美波は俺からあまり離れないようにして。」


「わかりましたっ!」


俺はラウムからロングソードを取り出しゾルダートの背後から斬りかかる。

だが、ゾルダートがくるりと俺の方へ向き直り、自身の剣で俺の剣を受け、攻撃を防ぐ。


「流石。やるな。」


その時だった。ゾルダートの体から赤色のエフェクトが現れる。

それを見た時、嫌な予感がしてゾルダートから距離を取った。あのまま鍔迫り合いをしていると不味いというのが感覚的に理解したからだ。

そしてゾルダートは禍々しいような赤いオーラを出しながら俺へと斬りかかってくる。俺も応戦をするが数回の切り返しで悟った。俺とゾルダートにはかなりの剣技の差がある。とてもじゃないが勝てない。真っ向勝負では1分持たないだろう。一先ず撤退だ。

俺は美波を連れて退却を試みた。


「美波!撤退だ!」


「はっ、はいっ!」


美波が瞬時に俺の考えを理解し撤退を始める。

何とか来た廃ビルへ戻り、その先へと戻ろうとした時だった。

廃ビルの陰から4体のゾルダートが現れ、逃げ道を塞ぐ。


「マジかよ…どっから現れたんだよ、ゴキブリかっての…つーか、ハードモードすぎんだろ…」


背後に最初のゾルダートがいるのを感じる。自分の実力より上の相手が5体もいて、更には挟まれている。どう見ても万事休すだ。



……切り札さえ無ければ。


「どんなスキルかわからねーけど…頼むぞ剣聖!」



俺の体を金色のエフェクトが包み込むーー

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