第10話 ミニイベント

美波が風呂から出た後に俺も風呂へ入り、メシを食べて後は寝るだけになった。食事の時に美波がオレヒスをやるに至った理由を聞いた。美波が俺に懐いてるのはきっと俺をお父さん的なアレに思ってしまったんだろう。色々と納得がいった。それに伴い俺は全面的に美波に協力する事に決めた。俺たちは”赤い糸”とかいうシステムでお互いに協力できるらしいから俺も美波の歴史の改変を助ける事ができるのは好都合だ。まずはメモリーダストを手に入れないとな。それが無きゃ過去に行く事ができない。そしてそれを手に入れる為にはイベントへの参加が必須だ。だが、どういう周期でイベントが開催されるかわからないのは厄介だ。明日はオレヒスについて情報収集に充てた方がよさそうだな。




「さて、片付けも終わったしそろそろ寝ようか。」


「手伝ってもらっちゃってすみません。助かりましたっ。」


「いや俺こそありがとう。美波の肉じゃが本当に美味しかったよ。」


「時間が無かったので染み込んでませんでしたけどね。でもきっと明日の朝には染みて美味しくなってると思いますっ!」


「明日の朝が楽しみだな。じゃあ早く寝て肉じゃがを食べよう!さて、美波はベッド使ってよ。俺は向こうの部屋で布団敷いて寝るからさ。」


「え?一緒に寝ないんですか?」


…そこまで甘えるか?いくら俺をお父さん的なアレだと思っていても一緒に寝ちゃダメだろ。俺の理性効かないよ?


「…それはダメだろ。」


「むぅ…じゃあ同じベッドは諦めますけど隣あって寝るならいいですよね!?」


グイグイくるな。それだってダメだろ。何より俺が辛い。


「ダメだって。部屋は別。」


「だって…怖いです…恐怖がとれません…」


ズルいよなぁ…それ言われたら何も言えねーじゃん。


「…じゃあ隣でなら。」


「ありがとうございますっ!すぐにお布団敷きますねっ!ベッドが邪魔になるからこっちの部屋で寝ましょう!」


美波はすごいテキパキと布団を2組敷き始めた。

なんだかなぁ。


「できましたっ!じゃあ寝ましょうか!」


「…おう。」


美波と肩を並べて床につく。最近処理してないから辛いな。こんな事なら風呂場で処理しとくべきだった。

そんな事を考えてる時だった。俺の布団の中に美波の手が進入して、俺の手を繋ぐ。


「…美波?」


「安心するから…お願いします。」


我慢だ。我慢をしろ田辺慎太郎。美波は俺を慕っているんだ。ここで襲いかかっちゃいけない。クールになれ。


だが、ここで俺を救う出来事が起こる


スマホの通知音が部屋に鳴り響く。俺たち2人のスマホが同時に鳴る時点で察しはつく。俺たちは目配せをしてスマホを確認すると、予想通りオレヒスからの通知だった。



『いつもご利用ありがとうございます。俺'sヒストリー運営事務局です。今回はミニイベント開催のお知らせを致します。只今のお時間よりミニイベントを開催致します。このミニイベントはプレイヤー同士で争うものではございません。我々が用意しましたゾルダートという敵を倒して頂くイベントとなっております。プレイヤーの皆様はエリアに5体いるゾルダートを倒すとメモリーダストを入手する事ができます。ただし、メモリーダストを持っているゾルダートは1体となっております。メモリーダストを入手され次第リザルトを行います。参加される場合は只今から10分以内にエントリーをお願い致します。皆様のご参加をお待ちしております。』



「こんな時間でもイベントやるんだな。俺たちはどうする?」


「私はタロウさんの指示に従います。」


「俺としては参加したいけど美波は大丈夫?」


「タロウさんと一緒なら大丈夫ですっ。」


「わかった。じゃあ参加しよう。それに美波の事は俺が守るから安心してくれ。」


「…」


ん?なんだ?美波が沈黙してしまったぞ?

わからん。俺の事をじっと見てるけど何を訴えてるのかわからん。ていうかそんな可愛い顔にガン見されると困るからやめてくれ。


「じゃっ、じゃあエントリーするか!」


変な空気が出ているが俺たちはエントリーをする為にオレヒスのアプリを開いたーー



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


真っ暗な空間に俺と美波はいる。この前のリザルトの空間と同じだ。


「お互いの同意があれば”赤い糸”で結べるとありましたけどどうやるんでしょうか?私たちは同意してますもんね?」


「そうだよな。もう結んであるのかな?」


そんな話を美波としていると、空間の中に家みたいな物が現れた。


「家…ですよね…?」


「家だね。めっちゃ怪しいんだけど。」


その突如現れた建物は、普通の一階建ての長屋みたいな感じだ。外観は結構ボロっちい。幽霊屋敷と見てもおかしくはない。


「あ!あれがマイページなんじゃないでしょうか!」


「あー。それはあるかも。とりあえず俺が入ってみるよ。10分経ったらエントリーできなくなるし。」


「私も行きますっ!私はタロウさんについて行きますっ!」


「でも罠だったら一網打尽だぞ?」


「タロウさんと一緒なら本望です。」


「わかったよ。一緒に行こう。流石に罠って事はないだろうし。」


俺たちは幽霊屋敷のドアを開けた。

中に入ると薄暗い照明が1つだけあり、ボロボロの箱が隅に置いてあるだけで後は何も無い殺風景な部屋だった。


「あの箱最高に怪しいんだけど。」


「ふふっ。開けたらバトルになりそうですね。」


「でも開けないわけにはいかないよな。じゃあ開けてみるか。美波は離れてて。」


「わかりましたっ!」


俺は恐る恐る箱を開けてみる。すると中にはダイヤモンドみたいな石が1つ入っていた。


「なんだこれ…?ダイヤじゃないよな…?」


手に取って見てみるとそのダイヤモンドみたいな石は虹色のような光を放っている。こんな薄暗い照明しか無い部屋でこれだけの輝きを放ってるって異様な光景だ。明らかに地球外物質だろ。


「うわぁ!綺麗ですね!」


「これなんだろう?」


『それはメモリーダストで御座います。』


急に頭の中に誰かの声が響き渡る。俺たちは警戒態勢に入るが辺りには誰もいない。窓から外を見ても誰かがいる気配も感じない。


『ご安心下さい。私は危害を加えるわけではありません。俺's.ヒストリー運営事務局の者です。』


「運営?」


『はい。今後は私がエントリーの受付を担当致します。エントリーの際はこのマイページにて私と通信が行えますのでよろしくお願い致します。』


「なるほど。ここがマイページなのね。マイページっていうよりマイハウスだよな。んで、これがメモリーダストなのか?」


『はい。そのメモリーダストを3つ集めるとシーンへ挑む事ができます。』


「あ、そっか。この前の報酬か。て事はこれがプレゼントボックスか。」


「これって私が1人で入っても同じ場合なんですか?」


『他の方は違いますが、貴方方は共有のマイページとなりますよ。”赤い糸”で結ぶのでしたら。』


「ふーん。でも一緒の方が便利だからいいんじゃないか?俺たちにデメリットは無いよ。な、美波。」


「そうですねっ!…どこでも一緒なら私にデメリットなんてあるわけないもん。」


また小声でブツブツ言ってるな。まさかこの前の後遺症じゃないだろうな。


『では”赤い糸”で結んでよろしいでしょうか?』


「ああ。それとミニイベントのエントリーも頼む。」


『かしこまりました。それではこれより田辺慎太郎様と相葉美波様は”赤い糸”で結ばれました。只今からのミニイベントをお楽しみ下さいませ。』


その声が聞こえたと同時に俺の視界は真っ暗になった。





ミニイベントが始まるーー

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