第21話 海底探査へ

クレーン船が出港すると、ニールは水着に着替えてデッキに出た。


気温は水着でも暑いくらいで、船が進むにつれて温かい潮風が流れてくる。


ダイビングマスクを頭に着けてきたが、サングラス掛けたいほど太陽が照っていた。



ニールは海へ潜るための装備を準備がてらに背負ってみた。


頭に着けていたマスクとさらに、酸素タンクとそのレギュレーター、そしてフィンやグローブを手足にはめ、ダイビングナイフをベルトで足に着ける。


それに水着のポケットにシグナルフロートなどの道具を軽く入れると、歩きにくくなるほど体が重かった。


中でもタンクは15キロもある上に、赤い傷や凹み目立つほど古かった。



遅れてビキニに着替えてきたハルがニール装備を見るなり言った。


「結構古い道具に見えるけど大丈夫なの?」


ヒロがむきになって反論する。


「失敬な、僕はいつもこれで潜ってるんだから。これが作られた時は水中でも息ができるって大騒ぎだったんだよ」


「できたのっていつ?」


「確か、僕が三、四歳の頃だったかな」


その頃から使い回されているのが信じられないのか、ハルはあからさまに苦い顔をする。


今からでも引き返そうと言い始めてしまいそうでニールは気が気でなかった。


「二人分あるから着けて待ってて。潜る時は僕が合図するから」


ヒロの言葉にニールが驚く。


「二人分? ヒロは潜らないのか?」


「残念だけど僕はクレーンを操作するから潜れないよ。ハルなら代わりができるかもしれないけど操作が難しい。ソナーでクリムゾンレッドの場所を探すからそれまで待機してて」


何度か潜ったことのあるヒロが潜れないとなると心細かったが、背に腹は代えられないニールは「わかった」と答えた。


それから、クリムゾンレッドが沈んでいるであろう場所の近くまで船で移動した。


ニールが覚えている限りに進んで、その周囲をソナーで探っていく。


沈んでいるかもしれない場所にいくつか目星を着けて、調査する順番を決めていった。



その作業に手間取り、ニールの予想していたより時間が掛かってしまった。


東にあったはずの日が西へ傾いている。


暗くなるにつれて潜るのが危険になるので、あまり遅くなると日を跨ぐことになってしまう。


クリムゾンレッドを早く引き上げたいニールは、デッキでじっと待っているのが焦れったくなっていた。


「ニール、ソナーで周囲をマッピングしたよ。この地図に印を付けたから、順番に回って探してきて」


「よし、やっと出番か」


待ちくたびれたニールが勢いよく立ち上がる。


マップを水着に括り付けて颯爽とデッキの手すりに腰掛けた。



ダイビングを目前にしてヒロが最後に忠告した。


「気を付けてね。海は謎だらけでどんな生き物がいるかもはっきりしていない。化け物みたいな生き物もいるって聞いてるから、ちょっとでも危ないと思ったら上がってね」


「えっ、化け物……?」


動揺するハルにヒロが追い討ちを掛ける。


「歯が何重にもなってて狂暴な怪物が猛スピードで泳ぐらしいよ」


ハルは再び顔を引きつらせた。


ここにきて早くも後悔し始めているようだったが、ニールは中止させられないうちに、そそくさと海へと入った。

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