結婚願望
私が彼女にプロポーズをしてから、既に3年と2週間が経っていた。
彼女に思いを伝え、「わからない」という返事をもらって以来、僕はマトモに寝付けた試しがない。仕事を詰め込んで精神的に疲労を溜め込んでも、趣味にしているレジデンスクライミングで肉体的な疲労を溜め込んでも、寝付いても一時間足らずで目が冷めてしまう。
その場で「ごめんなさい」と言われていれば、スッパリとした別れとともに切り替えができたのかもしれない。でも彼女は、わからないから待ってほしいという。彼女がもう別の人間とよろしくやっていることは知っているし、自分もそろそろ次の一歩を踏み出さなければいけないこともわかっているが、そのとき彼女に託された羊の世話が僕にその気をなくさせる。羊は1日に10エーカーに相当する干し草を食べる。その干し草を用意して与えるだけで、僕の生活はいっぱいいっぱいだ。
羊に草を与える生活がこれからもずっと続くのだろうと思っていたある日、懐のケータイが震えた。彼女からのLINEだ。3年と2週間に渡って、既読すら付かなったメッセージが既読になっており、その後に彼女のメッセージが続く。そのメッセージによれば、ついに彼女は僕との結婚を決意したようだ。しかし結婚の条件として様々な要望が書き連ねてあった。様々なことが書いてあったが、要約すれば僕にポジティブであれというような内容だった。気を抜くとマイナス思考になりがちな僕は、その気質は一生変えられないと思っていたが、こんな形で精神構造改変の機会を得られるのであれば、それもありなのかもしれない。
僕は彼女に感謝の言葉を返信し、彼女はそれに応じた。
この日から僕たちは夫婦として生活することになった。まずは親族友人を招きBBQをするのが、彼女の家の習わしということなので、まずは肉と野菜の串打ちが必要になるだろう。
了
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