幻灯機

 駅についた。ここは目的だった駅の隣の駅だが、歩いて行けない距離ではないし、時間もあるから問題ないだろう。


 とても古びた駅で、今時自動改札ですらない。駅前にはキオスクではなく、トタン屋根のお土産屋さんがある。中に入ると民芸品の類が雑多に並んでいる。手に取ったタヌキの木彫は、よく見るとその手に魚と首の無い鳥を持って居ることがわかった。記念に買って帰ろうとレジに向かう間に、そのタヌキはキーホルダーのミニクイズ本になっていたので、それを店員に返すと、何も買わずにお土産屋さんを後にする。


 駅前のロータリーには立方体と輪で構成された象徴的な彫刻が設置され、その横の交通安全標語がその雰囲気を台無しにしていた。


 駅から見えるあの公園を抜けて本来の目的地へ向かおうと歩き出すと、昨日会うはずだったトウヤマが現れる。折角だからと一緒に公園に向かうと、いまでは珍しい幻灯機の遊具があった。


 幻灯機を前に僕、トウヤマの順に立つ。大きな僕の虚像に小さなトウヤマの虚像が重なっている。僕とトウヤマの位置を入れ替えると、巨大化して行くトウヤマに僕が吸収されていくような感覚になる。


 幻灯機の遊具にも飽きた頃、また公園の中を進んでいくと、ジャングルジムで屯する小学生を見つけた。その少年たちはゲームボーイを通信ケーブルでつなぎ、ポケモンをしているようだった。その少年たちとポケモンを交換した後に、公園を後にする。


 大通りに差し掛かった辺りで、トウヤマは別れを告げ、救急車に弾き飛ばされてその場から消えた。


 大通り沿いを目的地に向かって歩き出してから20分後、トウヤマから電話が掛かってくる。


トウヤマ「来週会える?」


僕「木曜日なら大丈夫」


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