第9話 薬のために…
「ほ、本当にそれだけで良いんだな?」
「あぁ、簡単な事だろ?」
男から手渡された小さい箱。
それをある場所に置いて箱を開けるだけで薬が貰えると言われ受け取った。
数ヵ月前に目の前の帽子を被った男から勧められるがままに吸引した薬…
なんでも合法な薬同士を組み合わせて作られたこの薬は覚醒剤ではなく全く新しい興奮剤とのことであった。
副作用もなく血液内にも残らないとの事なので一度使ってみたのが失敗であった。
「じゃあ早速今夜…」
「いや、行う日は来月の月頭だ」
「えっ?それじゃあ薬は…」
「安心しな、いつものよりかは弱いやつだがこれをやるよ」
そう言って渡されたのは錠剤であった。
「1日一粒だけにしろよ」
「あ…あぁ…分かった…」
1日一粒…
そんな約束が守れるわけもなく俺は1日目は一粒…2日目は二粒…
気付けば四日を残して全ての薬を使いきってしまった。
そこからは地獄であった。
仕事は辞めて家に閉じ籠り寝ているのか起きているのか分からない時間を過ごした。
だが、決行のその日だけは忘れなかった…
「はやく…はやく薬が…」
日が沈みかけた時間に俺はフラフラと自宅を出ていくのであった…
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