第7話 バックドラフト

約40分を掛けて6階まで順に見廻りを終えた。

警備室へ戻ろうと歩きながら雨が降る外を見た。


「ん?」


屋根の雨が地面に落ちるのをただボーと眺めていたら人影が目についた。

雨の中を走る男の姿に違和感を覚えて早足で警備室へ向かう。

気になったのは来た方向である。


「確かこのリモコンだよな…」


ブラウン管の白黒モニターへ手にしたリモコンを向けて操作を行う。

リアルタイムに24時間録画されているので気になる男の来た方向であるビルの裏口の映像を見ながら巻き戻しすると…


「中から出てきた?」


このビルの裏口はオートロックになっており一度閉まると外から開けるには鍵が必要である。

だが中から開けるのにはドアノブを回すだけなのだ。

ビルの裏口の奥は壁になっておりそこを乗り越えてやって来るのは無いと判断したから気付いた事であった。


「嫌な予感しかしないな…」


暗がりの警備室で一人、独り言を口にしながらビル内部のカメラで男の姿を巻き戻しながら追いかけた。

男はビル内部を少し迷いながらも裏口を目指していた様で、最初の出所が2階のテナント事務所である事を突き止めた。


「一応見ておくか…」


再び懐中電灯を手に取り警備室を出ていく…

そして、そのテナントの事務所前に来て気付いた。


「臭うな…」


焦げ臭い臭いに顔を歪めて曇りガラスの覗き込むように見てみるとそれに気付いた。

明るい…これは…火だ!?

慌てて預かっていた合鍵でドアを解錠し、ドアを開くと共にその身は一瞬にして火に包まれた。

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