44時間目。編入
「お兄」
こっちを見て目を見開くななみの髪をくしゃっと撫でる
これくらいは兄としてやってやらんとな
「理事長には念のため確認したんだけど、編入に必要な試験とかはななみの成績上不要。軽くあいさつ程度の面談をして編入できる。費用としてはこのまま通ってた学校の学費やらと比較すると若干安くなるとのこと。学年は同じだし俺のクラスになる。ウチのクラスならイジメとかする子もいないし、俺がちゃんと見れるし親父とお袋、そしてななみが良ければこっちは準備整ってる」
本当は色々と入学時期、入学試験、面接等の必要な手続きはあるそうなのだが、ななみが通っている学校はそもそもああああ学校よりも遥かに学力が高い
成績書も画像で持っていたので見せたが、オール4に5がいくつか。運動神経も良い。というかサンドバックばっかり殴って体幹が滅茶苦茶良い
なので入学試験は免除。入学時期は基本いつでもウェルカム状態なので問題なく。面接も顔合わせするだけらしいので、確定で編入はできる
俺の妹ということで古里さんも、贔屓しないなら問題ないのでお前のクラスに編入させるとの言質も頂いた
そもそも俺の成績は贔屓が皆無になるようにしているのでオールクリアだ
「そしたら…私はお兄のとこなら行きたい」
「お金なら別に気にしないわ。ただ共学でしょわたるのとこ。あの人怒るわよ」
「共学は許さん!!!!!!!!!!」
どこから聞き耳立ててたの?絶対共学ってだけ聞いてたと思うけどさ
玄関の扉が勢いよく開いて、殺気が漏れてる親父が参入する。あの死に体から復活してきたか
こうなった親父に関して俺は無力である
50歳を超えてもトレーニングを欠かさない親父は滅茶苦茶にガタイが良い。その拳は恐らく俺の顔面に放たれたら俺の首がへし折れる
「ほら来た。後はあの人を説得できるかはななみ次第よ。ママはななみのやりたいことを全力で応援するわ」
「ななみ。共学はダメだ本当に駄目だ。男は皆狼だ。ななみみたいに人類の至宝レベルで可愛いお前が共学なんて行ったら狼共が群がってくる!!」
親父の贔屓目発動すると、一般的にみると普通に可愛いななみが人類の至宝になるのか。それは凄いな
さぁ、俺は戦力外。お袋は傍観者
ななみVS親父のバトルが開始される。激アマ過保護の親父なだけにその対象が共学に行くということは決して許可をしないだろう。ななみの努力次第だ
第一ターン!
ななみHP:100
親父 HP:1,000,000
「共学はダメだ!絶対に許可しない!!違う女子高はどうだ?パパが色々調べてくるぞぉ」
親父の攻撃:説得
「えっと…助かるんだけど…お兄のとこがいい」
ななみは0ダメージ
ななみHP:100
親父 HP:1,000,000
「パパは私がお兄のとこに行きたいっていうの反対なの?」
ななみの攻撃:説得
「うぐっ!!」
親父に300,000のダメージ
娘のことになると100%イエスマンな親父、本当は許したいが共学はダメという葛藤が働いていた
若干ながら涙目になる親父。筋肉マッチョな親父がそんな目するとキモイな
第二ターン!!
ななみHP:100
親父 HP:700,000
「えっと……えっと…」
親父の攻撃:何とかしようと考え中一回休み
「駄目ならパパと口きかないよ」
ななみの攻撃:脅迫
「…!!!?????」
親父に600,000のダメージ
第三ターン!!
ななみHP:100
親父 HP:100,000
「だ…だが、わたるのとこは遠いだろう…ウチから2時間はかかる…ななみは朝6時に起きれるのか?流石に登校が現実的ではないと許可はできん。一人暮らしだけは絶対に許可できん!!」
親父の攻撃:ひねり出した理論的な説得
「…?お兄のとこから通うから別に気にしてないよ?」
ななみの反撃:一人暮らしじゃないから大丈夫
「グッ!!!!!!!!!」
親父に99,999のダメージ
っていうかウチ住むのか?まぁ現実的にはそうなるか…出資してくんないときついなぁ
親父の特殊攻撃:仲間を呼ぶ
俺に殺気込めた目で睨んでくる。これの意味はお前も説得しろである
無視
これは親父とななみの話だ
俺を巻き込むなという意味を込めてタバコを吸う
涙目でお袋の方を見る親父だが、お袋もタバコを吸う
親父の味方は0だ
「《パパ、お願い、私はお兄の学校に行きたい》」
ななみは花よ蝶よと育てられ思春期はあったかもしれないが、反抗期は特になかった子である。我儘という我儘も特にない
そんなななみのお願いという我儘は…過保護娘大好き親父からすると致死の一撃となる
親父に100,000,000のダメージ
即死
「…わたる…」
「なにさ?」
「ななみに言い寄ってくる男がいたら即報告しろ、お前も潰しにかかれ」
血涙でも出てんのかっていうレベルで怖いことを言ってくる
「はいはい。あ、ななみがウチ済むんなら食費が足りねえ。仕送りの5万を2万に減らすか、仕送り5万を払うのは変えなくても良いけど、ななみの小遣い5万から3万俺に分けて」
ななみはアルバイト禁止なので、お小遣いのみである
しかしお小遣いは5万。両親へ月々の仕送りと同額だ。流石に貯金を切り崩さないと微妙にまずいと思ってるので3万程はプラスしてほしい
「じゃあ仕送り2万でいいわよ」
そうか…ななみのお小遣いは不動なのな
俺の仕送りガシガシ料金上がったんだけど…ってか親父もお袋も別に仕送り無くても生活できるよな?
「退校手続きと編入手続きで1週間後くらいになるかしら?」
「あー、必要な書類はもう用意してあるから、退校手続きさえできれば。制服はななみのサイズは余ってるらしいからすぐ用意できるってさ」
念には念を入れて用意をしていた
「わかったわ。パパは忙しいと思うからママの方でやっておくわ。準備できたらわたるに連絡するから」
流石お袋、話が早い
「じゃあ、今日はななみが帰ってきた記念日ということで豪華な夕飯にしようか!!!!」
親父はもう諦めてななみの好感度上げを行うことにしたようだ
しかし、豪華な夕飯とか良いな。あー、寿司とかいいな。最近食ってないし
「パパ…食材買ってないんだから無理言わないで」
お袋に一蹴された親父
「ピザとか頼むか?」
代案が出てくる。ピザはこないだ食ったしなぁ。寿司が良い。でも俺にはその権限が無い。こういう時はななみの食べたいものがご飯になる。こいつ肉とか言いそうだな
「お寿司食べたい」
しかし、俺の予想とは違いななみの言葉で今日のご飯は決定した。お寿司だ
最高!!!
「お兄、ありがと」
うっしゃー!!とタバコを吸いながらビールを開けてるとななみからの感謝が聞こえてくる
こっちこそ寿司!!!助かるわ!!
グッと親指を上げてななみに向ける
「いぇい」
ななみも親指を上げて拳を打ち付ける
これでなんとかななみの問題も解決できたかな
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