43時間目。メンヘラ


歴史探求部の活動は大崎麻美が決めない限り基本的には帰宅部扱いとなる

すなわち顧問の俺もいつもと変わらない

ななみが来てから2週間ほど経つ

部活発足からも2週間弱。大崎麻美はとりあえず帰宅部で満足しているようだ


学校に行かなくても学力はちゃんと維持したいらしいななみは毎日朝俺を半分死にながら見送り、二度寝して昼くらいに起きて勉強をしているらしい

授業時間に合わせて教科書を開き、体育の代わりにランニング5㎞走ったり等ちゃんとやっている。ただし、美術や家庭科などはめんどうということでゲームしているとのこと

わからないところは夕飯後のゲーム前に教えてくれーと言われるので教えている


まぁ、将来使うかどうかと言われれば美術何て使わないし、家庭科も料理できればなんとかなるしなぁ


「とりあえず」


「んー?」


現在自宅の日曜日

ぐーたらして下着姿でベッドに寝転んでアイスを食べながらゲームをしているななみがいる

もう慣れた


「とりあえずさ」


「うん」


「親父とお袋に言わないと」


連絡取れてる報告はしても、ウチにいることは言っていない

家出が2週間続いている


「えぇ、めんどう」


「俺も一緒に行くから、これキツイ」


携帯をななみに向けて投げる

ななみが携帯を見るとそこには親父からの鬼のような連絡が来ている

「ななみはまだ帰ってこないのか」

「いつ家出は終わるんだ」

「本当に連絡が取れているのか」

「早く連れて帰れ」

「おいどうなってる」

「はやく返事寄越せ」

「おい」

「こら」

「返事」

「おい」

「おい」

「おい」

と鬼のような通知が来ている


「……ごめん。うん、行く。一緒に行こ。うん。ごめんお兄」


ななみは凄い反省している顔だった

うん、良かった。授業一時間終わると通知が100件来てるんだ最近

一日放置すると1000件溜まるんだ。なんだこれ噂のメンヘラ(親父)か?いらねえよそんなん


「ニンちゃんで移動?」


「あぁ、だからスカート禁止な」


「ん。お兄よろ」


ボストンバッグに入っていた服は全て着用済みで洗濯してタンスに入れている

しかしこいつは私服を合計3着分しか持ってきていない。下着だけは7着あるが

私服…スカートしか持ってきてないんだよなぁこいつ


「ほい」


俺のジャージを渡す。少しダボつくがまぁ何とかなるだろ


ななみが俺のバイクに乗るのはこれが初めてではない。タンデムするのは99%ななみだ

そのおかげでバイクの乗り方を理解っている。免許取りたいと言っていたが俺と親父の危ないから却下により諦めたという経緯がある

いや、ホントバイク危ないし。俺なら事故っても空間転移で無傷でいられるし。俺がタンデムすればななみが怪我することとか無いし


バイクで40分

それが俺の住んでる家から実家までの距離だ。電車だと50分程度

上使うと25分くらいで着けるんだけど、15分程度の差であれば上を使う必要ないし


「……流石に怒られるかな」


インカムを通して会話をしている。ウチに近付くにつれて不安が大きくなるみたいだ


「…いや、多分お前じゃなくて俺が怒られる…ってか殺されるから守ってマジで」


ウチの親父の過保護レベルが高すぎる。俺には過保護0%のくせにななみには100%だ

恐らく連れて帰るのが遅いということで1~2発くらいは殴られることを覚悟しないとまずい。殴られたくないからななみを盾にしよう


「しょうがないなぁお兄は」


背中をポンっと叩いてくれる

良し、これで俺の安全は保障できた

そしてニンちゃんを実家の駐輪場に停める


瞬間


ドアが勢いよく開いた音が響き渡る

ウチの実家はマンションだ3LDK、既に俺の部屋は無い

そして駐輪場からウチの部屋まで直線距離で50mほどあるはず


「親父か!」


ヘルメットを外してななみからもヘルメットを回収

仕舞っていると階段を駆け下りる音がマンション中に拡がる


「わたるてめぇええええええええええ!!!!!!!!!!!!!」


めっちゃ切れてる!!!!!?

2週間娘に会えないだけでこうなるのか!?将来やばくね!!?ななみ社会人になったらどうなるのよ!!!!!!?

拳を握り締めて振りかぶりながらこっちくるんですけど!!!!


「パパキモイ」

「…ガハっ!」


俺を守るようにななみが前に立ち、死の宣告を放った

効果は抜群だ。ななみの口からその言葉が放たれ、親父の鼓膜を震わせた瞬間に血を吐きながら地面に突っ伏した


「じゃあお兄行こうか」


「お…おう」


それを無視して階段を登り始める

しょうがない。あれを俺が起こそうとすると多分殴られる。ななみが無視するなら無視でいいのだ。

お袋は過保護ではあるが、暴力的ではない


「ななみお帰り!!全く心配したんだからね!!!きちんと返信を寄越しなさい!!!!」

「あっわたるもななみ連れて帰ってくれてありがとう」


俺はついでである。お袋はななみの腕を掴むと椅子に座らせた

きちんと説明しなさいオーラが出ていた。これはぶち切れてるな


ウチの家族ヒエラルキーは

お袋(ぶち切れ) > ななみ >> お袋 >>>>>>>>>>>> 親父 >>>>>>>>>>>> 俺

である。俺の権限は無いに等しい。おかしいな。俺息子なんだけどな


「えっと、今の学校行く気なくなったからお兄んとこに潜り込んで勉強は続けてるけど。学校にもうお金は払わなくていいよ」


すげえ淡白

説明約2行で済んだよ

でもそれは恐らく通らない。高校を中退するって言うことはそんなに簡単なことじゃない


「わたるのとこいるのは逆に彼氏とかできてなくて安心したけど…ななみ…あんた高校を中退をするってこと?」


「えっと、そこまで考えてなかった」


「将来どうするの?働くにしても高校中退だとフリーターくらいにしかなれないわよ。立派な大学は出なくても良いけどきちんと大学出て、やりたいことをきちんと見つけなさい。どうするの?通信制に通うの?」


おぉ、流石お袋。ちゃんと色々と考えてくれている

親父ならお嬢様学校に凸りに行くか、特に気にせず中退OKと言いそうである。今外で死んでいるが


「えっと…」


全然考えていないななみはどうすればいいの?と俺の方を見てくる

いや、まぁこうなることは予想してたよ


「親父や、お袋が金を出してくれて、ななみが良ければウチの高校に編入できるけど」


念のために古里さんに聞いておいて良かったわ


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