30時間目。打ち上げ②

タバコから戻ると俺の席は大崎麻美に占拠され、しかもその隣には麻倉舞が座っている

いや、君ら細いからいいかもだけどさ、狭くないの?


ということで、座る席が無い。幸いにもビールは空けたので、席移動は自由である

さて、どうしようか


「お?」


我らが女神である北野裕子が手を軽く振って呼んでいた

見るとテーブルには炭

大崎麻美がいたテーブルである。つまり、今席が空いていた

しかも四人席に一人のみ


「ここ座るな」


「はい、大丈夫ですよ。原田先生食べますか?」


それ炭

北野裕子それ炭

食べられないよ、だって炭だもん


「…新しいのを焼こうか、俺が焼くよ」


女神である北野裕子が炭を進めるということは、つまり炭を焼いたのは北野裕子か

意外だ…料理とか普通にできるイメージだったんだけど


「え?そんな悪いですよ!私が焼きます。もしかしてシーフード苦手でした?」


炭を指す北野裕子

そうか、それはシーフードだったのか。全く分からなかった


「いや、今ブタが食べたい気分でな」


北野裕子を傷つけるわけにはいかない。このまま流そう

その炭はやばい、だって炭だもん


「じゃあこれは私が食べますね」


「!!?」


え?食べるのそれ?待って!!炭だよ!!どうしよう!??生徒に食わせていいのか!!?本当にいいのか!!!?教師としてどうか…


「いや、俺が食べよう!腹減ってたしな」


無理だ…炭を食わせられない

半分残ってるよ、誰だ半分食べた猛者は…

残ってる炭をてきとーな皿に乗せて新しい割りばしを使って食べる


「どうですか?ちょっと失敗しちゃったんですけど…」


うん炭、ぱっさぱさ、凄いぱっさぱさ

焦げてるからソースの濃い味を打ち消すような苦い味が口に広がる

でも、これは北野裕子が作ったものだ


「うまい」


うん、炭だけど

炭なんだけど、頑張れば食えないことは無い、俺の手には偉大なる賢人が開発したビールさんがいらっしゃる。ビールさんがいれば大抵のものは飲める

中ジョッキを一気にあおり、新しい豚玉が来たので空気を含むようにかき混ぜて油を塗って焼き始める


「原田先生慣れてるんですね。私初めてで少し焦げてしまって」


少しじゃないぞ、北野裕子。あれは少しより凄いというのが正しいぞー

生徒にちゃんと技術と現実を教えるのが教師の仕事であるが、この笑顔の前で現実を教えていいものか…本当に…どうしよう

とりあえず、焼き方を教えておこう。教師だし


「初めてだとちょっと難しいよな。空気を含ませるように混ぜて丸く…ざっくり直径15㎝程度に抑えておいて放置」


おかわりビールが来たので飲む

タバコはダメだが、お酒は良いだろう


「はい」


小さなサイズのメモ帳を取り出すとメモを始めていた

北野裕子は本当に偉いなぁ、俺は感覚で焼いてしまうので慣れでやっている

スプーナー先生ならもっと説明が上手いんだろうけど、あとスプーナー先生の作るのは尋常じゃないレベルで美味い


「んで、こんな感じでぽつぽつと空気が抜けてきたら大体ひっくり返し時だけど、今弱火だから多分表面焼き色ないから1分くらい放置、中火なら即ひっくり返す」


「はい」


ほい、っとひっくり返す

まぁまずまずの焼き色だろ、炭よりも美味しくはなる


「注意として、焼き色を確認しちゃダメだからな。あとひっくり返してから上からパンパンと抑えたりするのはNGだ」


「なるほど、さっきやってしまいました」


え!!!?焼き色確認してあの炭!!!!?ちょっと製作工程見てみたいんですけど!!?


「北野裕子もしっかりしてると思ったけど、少し抜けてるところがあるんだな」


勉強もできるし、色々と動けるし、身体能力も高い、そして女神

料理ができないのは意外だ


「料理…あんまり作ったことが無くて…すいません。やっぱり不味かったですよね…?」


……


「えっとな、勉強とかと同じでさ、最初はできないもんだよ。料理とかも同じで作り慣れてくると慣れる」


罪悪感に負けるな!

行け!!!俺勇気出せ!!!


「さっきのだと、…まぁ確かに美味しいものではなかったけど、まぁ最初だからしょうがない。だからここから伸ばしてこう」


教師だからしょうがない、どうしようもない。

教えるのが俺の仕事だ


「なるほど、わかりました!今後とも、教えてもらえると助かります」


頭を下げる北野裕子

料理は出来れば損はない。それが仕事になることもあるしな


「任せとけ。とりあえず、普通のお好み焼きだ」


ソースをかける

この後は迷う


「マヨネーズはいるか?」


「はい、あっ少なめで」


俺のバイトの経験を生かす

網目模様にする。これはステーキ屋でバイトした経験で生かす

綺麗に出来たので良し。


「わぁ!凄い!縁日とかでみる外見になりました!これも慣れれば出来るんですか?」


「できるできる。俺はアルバイトで慣れたからできるようになったし、器用な北野裕子ならすぐにできるようになるぞ、ちなみに青のりは?」


「お願いします」


これが男子なら特に問題ないが、女子だと青のりは気になる人がいるはず

と思って女子に対しては一応聞くことが俺の中のルールである

ちなみにミヨキチは「関係ないです!おいしさ一番です!」だそうなので、青のり沢山入れて作っている

大丈夫そうなので、青のりをかけて1/4にカットして渡す


「あっ、美味しいです。さっき私が作ったのよりふわふわで柔らかいです」


でしょうね。さっきのは炭だから。あれは食べ物じゃなくて炭という

いや、まぁ食べれる程度の炭だからな。良くない


「ほっほーう!!じゃあこの私も食べてあげようか!!!」


ささっと横から北野裕子の隣に座り、3/4を持っていく本田ほたる

っていうかさ、いや、別にいいんだけどな。お前絶対作り終わるの待ってただろ

さっきからこっち見てるなぁとは思ってたんだよ


「うん!!普通!!!」


俺の分まで食いやがって何を言っている!!!


「舌を9回引き抜くぞ」


「えぇ!!?おかしくない!!!!!!!!!?」


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