9時間目。バイク運送


バイクで送ることになった訳であるが、タンデム馴れしていない素人を後ろに乗せるのはビッグスくらいであろう。

俺のニンちゃんはちゃんと後ろの人間にも乗り方を教えないと事故になる

まぁ、生徒に何かを教えるのは教師である俺の仕事である。問題はないはずだ

・・・最悪の最悪の最悪で事故や転倒した場合は周囲にバレないように空間転移をする覚悟を持っておこう。事故っても空間転移すれば慣性などの外部からの力が全てリセットされるので、怪我はしないと思う


「あー、じゃあまずヘルメットだな。ジェットヘルメットはあるが麻倉舞が良ければ俺がいつも使ってるヘルメットの方を使って欲しいんだが」


ジェットヘルメットはあるが、完全に予備用である。

フルフェイスヘルメットであれば、顎周辺は守れるので万が一の事態が起きた場合の生存率が上がる


「使う!」


即答である。麻倉舞よ、お前はちゃんと自己管理が出来て偉いぞ!


「じゃあ、授業開始だ。後ろに乗った後はどうする?」


「わたるせんせーにしがみつく!!」


大・・・・・・・・・・・・・不正解!!!!!!


「駄目です!!」


「えー!?ドラマとかでまい勉強してるよ!?」


「ドラマとかでのタンデムを信頼してはいけない」


死にたいなら別であるがな


「まず、掴むのは俺の腰かキツイならベルトを掴め。手袋はー俺のやつだとサイズが合わないから軍手しかないが、それで我慢だ」


よくあるシーンの、タンデムの後ろの子が抱き着くなんちゃらシーン

体重移動すらできず、後ろの人のビビりにも影響され、曲がることすら困難になる

一番やってはいけない行動の一つである


「ベルトだね!わかった!!」


「んで、厳しかったら頑張るが、なるべくバイクが傾いたらその方向に傾いてくれ」


必須スキル

運転手からすると、後ろの人間は荷物と同然である

荷物が勝手に右左動かれると厳しい。だから怖いのもあると思うが合わせてくれると楽だ。

本当に厳しい場合はハンドルで曲がればいいので、頑張れる


そして、一番大事なのは


「あと、麻倉舞。スカートはダメだからな!少しダサいし、腰らへんがブカブカかもしれんがカッパのズボンはあるからそれを穿いてくれ」


そう、麻倉舞よ。お前はスカートなのだ。しかも一般的より少し短いのだ

そんなので、バイクに乗ってみろ。ただの痴女だ

流石にズボンは置いてないので、常備しているカッパを渡す

ちゃんとバイク用なので生地はしっかりしているが、女子が着るには色が少し黒色であるため、合わない。制服だし


「はーい!」


ちゃちゃっと馴れた様子で、そのままカッパを穿く

いや、隠せよ。いや、見えてないけど。少しは躊躇えよ


「最後に、カバンは…どうしようかな。お前のリュックサックとかじゃなくて、肩掛けカバンだよなぁ。お腹側にくるようにして、俺の背中に挟んでおけ」


「おっけー!!」


これくらいかな。なんとか行けそうだ

麻倉舞は要領が良い子なので、そこまで不安はないがキチガイじみた安全運転を心掛けよう

ヘルメットを着けさせる前に、インカムを起動しておく。俺もジェットヘルメットにつけてあるインカムを起動して、通話状態にしてから被る


俺はニンちゃんに跨り、エンジンをかける。やっぱり空ぶかしは必須だ

エンジンが完全にかかったことを確認してから、


「よし、じゃあバイクに乗ってくれ」


「おー!ヘルメットで会話できるってすごい画期的ー!!」


インカムって普通に知らんのか…まぁバイクに興味ないと知らないものか?


「どうやって乗ればいいー?」


「俺の両肩を掴みながら左足を足場に乗せてから、立ち上がるようにしながら跨れ」


「りょうかーい!!」


2~3回くらいは失敗するかと思っていたが、意外にもキチンと体重移動をこなして普通にタンデムシートに座る


「んで、えーと、ここらへん掴めばいいんだよね!?」


両手で軽くベルトを巻き込みながら腰が掴まれる

問題なさそうだな。本当に初めて乗るのかと思うくらいだ。


「問題なさそうだな。えーと家どの辺りだっけか?」


「こっから学校のほう向かってでっかいドンキあるとこの方!」


「あー了解。とりあえず、そっちの方に向かうから近くなったら道案内してくれ」


そして、ゆっくりと出発

本当に意外にも最初は体重移動も慌てていたが、10分ほどで馴れたようで特にストレスなく走ることができていた

多少なり、スピーカーからうっひゃー!!とかはやいはやーい!!とか歓声が聞こえてきたが、まぁバイクに乗ることの喜びを感じてもらったのであれば良しとするか。


道を指示してもらい、朝倉舞宅の前に辿り着く。一軒家で少し土地代が安いこの周辺で、The 普通の大きさくらい。

いいなぁ一軒家・・・やっぱり将来住むなら一軒家だよなあ

庭付き一戸建てペットに猫を飼って、たまの休日に仲良い御近所さんを招待してBBQとかなぁ

おっと、運転中だ。思考はやめて集中しよう


「着いたぞー」


家の前に止まって、エンジンを切る

通話も不要なので、インカムでの通話も切断する


「ありがとっ!!」


勢い良く、バイクを降りるとそのまま家に入った朝倉舞


「・・・」


ヘルメットとカッパを着けたままで



朝倉舞よ・・・それ、俺のなんだけど?


え?どうしよう?インターホン押した方がいいか?それともトイレとかだったのか?

ちょっと待ってた方がいいのか?


どうするべきか悩みながら、バイクを端に寄せて停める

とりあえず、5分くらい待った方がいいか・・・


2分程度ボケっとしてると、家のドアが開く

慌ててドアを開けたのか、勢いが良かった

そこから出てきたのは、朝倉舞ではない。恐らくお母様ではないか?


「えっと、原田わたる先生ですよね!!?」


俺を見かけると、小走りに近づいてくる

礼儀として、ヘルメットを外してから会釈


「はい、朝倉舞さんのクラスの主担任の原田わたるです」


「ウチの娘がご迷惑を!!」


めっちゃ勢いよく頭を下げられてしまった

いやいやいやいやいやいやいやいや!!!!


「頭上げてください!!そんな迷惑はかけられてないですから!!」


「いえいえいえいえ!!!!こら!!舞も早く来なさい!!!!何が送って貰っちゃったー!!よ!!」


開きっぱなしのドアからヘルメットとカッパをパージした姿の朝倉舞が顔を出す

めちゃくちゃ目が泳いでる。そうか、怒られてたのか

きっと、見てみてー!バイク後ろ乗っけてもらったんだー!!とか言って乗っけた人が担任でしたって感じに見える


わたるせんせーヘルプ!!

という目で俺を見るな朝倉舞よ・・・俺もどうしていいかわからん


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