8時間目。じゃんけん
北野裕子のお見舞いに来ていたら、麻倉舞がやってきた
「わたるせんせーじゃん!どうしたの!?」
ここにいたら、普通に見舞いだと気づくだろうに。麻倉舞は成績は学力はある方だが、オツムが弱い
とりあえず、挨拶代わりに手を挙げる
「お見舞いに来てくれたんだ!そう、ただのお見舞い!プリン貰ったの食べる?」
北野裕子よ。それは俺の見舞い焼きプリンだ
まぁ、3つはキツイか。今気づいたよ。だって女の子がプリン3つなんて厳しいよな。入院生活で食っちゃ寝を繰り返していると思うし、そこらへんは考慮しとくべきだったな
「プリン!?食べる!」
「おい、麻倉舞よ。他の入院患者の方もいるんだから、少しボリュームを落とそう」
元気いっぱいなのは凄い良いことである。本当にいいことなのだ
お見舞いでなければ
「あ~ごめんなさい」
てっきり、いいでしょー?と言うかと思っていたが、素直にボリュームを落として反省したようにしょげる麻倉舞
やはり、まだ2か月くらいしか担当じゃないからか、意外であった
すまん、やっぱり口に出さないが偏見はいけないな…謝るわ
「でも舞ちゃん高頻度でお見舞い来てくれてありがとうね。明日には退院できるみたい」
「ほんと?良かったじゃーん!はい、これ今日のノート」
カバンからノートを取り出して、北野裕子に渡す
こいつ!麻倉舞!!お前、凄い良い奴じゃないか!!
しかもノートにゆっちー専用とデカデカと記載されている。
いかん、少し涙が出そうだ…目頭が…熱くなってきた
「そろそろ、時間もあれだし俺は帰るな」
流石に生徒たちの友情の邪魔をするのは、馬に蹴られて死ねと言われるくらいだと俺は思う。おっさんではないと思っているが、年長者は去るとしよう
そろそろお見舞い時間が終わるしな
「え!?わたるせんせ!ちょっと待ってよー」
立ち上がろうとしたら腕を掴まれる
麻倉舞よ離しなさい
「まいも帰るから一緒に帰ろ?」
上目遣いとかやめなさい
そういうのを覚えるのはまだ早い!具体的に言えば4年くらい
「そうですね。そろそろお見舞いの時間が終わってしまうので、舞ちゃんと御一緒に出たほうが良いと思いますよ」
北野裕子も援護攻撃をしてきた
折角友情の邪魔をしないようにと思ったが、確かに言う通りそろそろ時間が時間である。
麻倉舞もギリギリに来たな
「あ~そんな時間なんだ!時間あったから隣駅から歩いてふらふらしてたら意外と時間かかっちゃったみたい!」
アクティブ過ぎないか?俺隣駅から歩くとか無理だよ?隣駅からここまで4㎞くらいあるぞ?
これが…若さか…
いや、俺の学生時代もそんなことしなかったから、俺が出不精なだけか
「じゃあ、まいも帰るね。ゆっちーは明日から学校来れるのー?」
俺の腕を離し、立ち上がり帰り支度を始める
「うーん、多分明後日からになると思うよ」
明日退院だから、色々あると思うしそりゃ明後日になるわな
「じゃあ帰るから。とりあえず元気そうで良かったよ。出席で返事が来るのを楽しみにしてる」
「はい!頑張って元気よく返事をしますね」
ニッコリと笑う北野裕子。お前は良い奴だなーなんか泣けてくる。この純粋さを大人になってからも見失わないでほしいものだ。目下怖いのは夏休みだな!あれは人を変える魔性の大型連休だ
麻倉舞が帰り支度をしているので、俺も帰り支度を…って言っても特にすることはないので、立ち上がって麻倉舞待ちだ
「じゃあゆっちー帰るね!また学校で会おー!」
元気よく、手を振る麻倉舞。だから病室だと言ってるでしょうに
ただ、ボリュームは確かに下がっているので、凄い良い奴である
俺も軽く手を振りながら退室する
「わたるせんせーは電車?一緒に帰ろーよ!」
病院を出て大きく伸びをする麻倉舞
気持ちはわかるぞ。病院は少し息が詰まる感覚があるので、出たときは思い切り伸びをする。何故なら今俺もしてるからだ!!
「いや、む…バイクだから俺はこっちだ」
駐輪場の方を指さす。
危ない危ない
朝の教訓を生かし、ニンちゃんを娘と言わずにバイクと言えた俺。反省できる男である
駐輪場は歩行者用の出口とは反対なので、ここでお別れである
「バイクなんだー!一緒に帰ろ!?」
あー満開の笑顔
バイクでも電車でも言うことに変わりはないんだな
「いや、バイク押すのは辛いから普通に帰っていいぞ」
原付くらいなら考えたが、ニンちゃんは無理だ
重すぎる。押して歩いて500m進んだら褒めてほしい
そのレベルだ
ニンちゃんの体重は250㎞弱である。押すとしても厳しいものがある
「後ろに乗せてー?」
「無理」
今朝の再来か?
乗ってるのであれだが、バイクは危ないぞ
「えー!なんでー!?」
「危険だからだ」
「でもわたるせんせーは乗るんだよね?」
「…まぁそうだな」
「じゃあ後ろのっても安全じゃないの?」
それを言われると弱い。だって俺はスピード狂でも何でもないし、便利で気持ちいいからバイクに乗っているのだ
普通に道路交通法は守るさ
「…いや、そういうわけじゃなくて、ヘルメットもないし」
バイクに乗るには、ヘルメットが必要だ
それが無いと乗ることができない。なので、ヘルメットは持っているが断るための常套手段を使用する
「え?ヘルメットあるじゃーん!」
麻倉舞はバイクにつけてあるサイドバッグを軽くたたいた
「…」
なぜ知っている!!!!!!!!!!!!!!!!!
とりあえずの予備で突っ込んであるヘルメットの存在をなぜ知っている!!!?
本当にとりあえずなので、ただのジェットヘルメットだがあるにはある。
「もう時間も遅いしー、痴漢とか変質者に襲われそうだしーわたるせんせーが送ってくれたら安心だなー!」
まぁ、落ち着こうか
いや、わかるよ。言いたいことはわかるよ。
確かにバイクの後ろは凄い楽だよ。更に風が気持ちいいよ
確かに、麻倉舞は可愛い部類だと俺も思うし、18:00を過ぎたので危険性が増すと思うさ
言いたいことは分かる。そして、どちらかと言えば乗せてあげてもいいとは思う。
「じゃんけんだ」
教師と生徒がタンデムは何か駄目な気がするが、安全を意識するなら乗せた方がいいと思う。だが、何か駄目だと思う
だからじゃんけんである。全てを運に任せた
「ほっほーう!!このじゃんけんめちゃつよまいに挑むなんてわたるせんせー覚悟してよね!!」
妙に自信を見せながら、麻倉舞はあれをする
そう、じゃんけん必勝法のあれである。手を合わせて空を見上げる正式名称はわからないがあれである
「じゃんけん」
『ぽん』
勝負というのは非情だ
俺は何かと大事な時はグーを出す。そして、麻倉舞はパーを出した
本気で安全運転しよう
バイク乗ったことがなさそうなので、俺の言うことを聞いてくれよ麻倉舞
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます