5時間目。放課後の飲み会
ようやく放課後である
地獄の昼過ぎは、やはりというかなんというか死んだ魚の目をした今井健吾がいた
いや、同じ男として気持ちはわからないでもない
でも、最後のHRでも特にクラスに違和感などは無かったので、本田ほたるは告白されたことを言いふらす子ではないということである
俺はお前を信じてたぞ、本田ほたるよ
さて、放課後
というよりも、飲み会の始まりである
古里さんが酒好きなので、ウチの教師達はだいたい月イチくらいで、来れる人だけ来る定例飲み会が開かれる
ウチの教師達で共通なのは、全員酒好きということだろうか
確実に古里さんの意向である
そして、飲み会代の半分は古里さん持ちという良待遇のおかげか、全員酒好きだからか
来れる人だけの飲み会は、ほぼ全員参加の飲み会である
佐助に来てまずやることは席取りである
ミッション・・・デル・スプーナーを探せ!!
日本好きのスプーナーは、めちゃくちゃお好み焼きを作るのがとても上手い
イカつい笑顔でもんじゃ煎餅作ったよと提供してくれる程である
ふっくらふわふわのお好み焼きを食べたいならスプーナーに作ってもらうのが1番だ
スプーナーが世話好きというのもあるし、鉄板奉行でもあるため、率先して全部やってくれる
楽して、美味しいご飯にありつけて、お酒を飲むという最高の環境だ
「!!?」
いつもなら、早めに来て席を確保しているスプーナーがいない
まさか、早く来すぎたか・・・
いや・・・スプーナーは開始一時間前には既に店の前で待機してる男だ
20分前にいないなんてことはありえない
どうしたんだスプーナー!!?
「坂上先生、本日スプーナー先生は?」
アワアワしててもしょうがない
幹事である坂上先生に聞くのが一番だ
「スプーナー先生は、本日飼っている猫ちゃんが少し具合悪そうだったので、今回は欠席するとのことです」
なるほど、スプーナー先生は外出中に家の様子がわかるようにしているらしく、休み時間によく猫達の様子を見ていたりする
その様子を時々タバコのタイミングが一緒だった時に見せてもらうこともあるが、物凄い可愛かった
猫を飼いたくなった
恐らくそれで様子を見てた時に、具合が悪そうな子がいたのだろう
「それは大変ですね。わかりました」
猫達の具合も気になるが、絶望である
なにしろ、俺は着任してまだ間もない
大体の教師は俺よりもベテランが多いので、その時は俺が作ることになりそうだ
交代制ならまだいいが、さすがに作ってくださいとは言いづらい
古里さんと一緒のテーブルなら絶望だ
予約されているテーブルを確認すると4.4.4.4.2と分けられているので、迷うことなく空席の2人席に座る
2人であればそんなに食べるペースは早くならなそうだし、ゆっくりできそうだ
そして、テーブルの位置は完全に下座である
歴が浅い俺が座っても、何も違和感がない
これで同じ歴の雄太郎が座れば完璧である
何しろ同期だ!交代制ルールの導入も容易い
とりあえずタバコでも吸うか・・・お好み焼き屋はタバコが吸えるから助かる
1本取り出して口にくわえて火をつける
肺に煙を入れて、吐き出す。ハードボイルドに憧れて、吸うようになったが今や必需品だ
あぁ、早くビールが飲みたい
「!!?」
しまった!俺は勘違いをしていた・・・
この2人テーブルで古里さんが座ったら詰む
逃げ場がないではないか!!別に古里さんが嫌いとか苦手とかではないが、酔って失礼なことをしてしまった時にはリアルに記憶を消されて廃人になってもおかしくはない
そう考えると、お酒が飲めなくなってしまう
古里さんが来る前に4人テーブルに移らなくては
「原田先生ーここ空いてます?」
女神!!
「ミヨキチか、空いてるぞ」
脳内ほわっとガール!今のお前はまるで女神だ!!そうか、ミヨキチは1番新人だから普通に考えて下座を選ぶよな
「じゃあ失礼しますね。あとミヨキチ禁止ですよ!ハラワタ先生」
おっと、つい無意識に言ってしまった
同僚からハラワタ先生は避けたい。いや、マジで・・・
「あー、悪い田中先生つい癖で」
「はぁ・・・もういいですよー就業時間終わったので、学校じゃダメですからね」
大きく溜息を吐かれる
まぁそうだな、就業時間外だし先生呼びは止めとくか
すると、時間になり飲み会が開始となる
「ミヨキチ呼ばわりOKなので、お好み焼きは交代制にしてもらえると助かります」
お前もそれ狙いだったかミヨキチよ
だが、その提案はそもそもこちらからしようとしていたことなので、是非もない
流石にミヨキチとはいえ女性が対面に座っているのだから、吸い途中のタバコを消す
「もちろんいいぞ!」
「あと私はタバコの煙気にしないので吸っても問題ないですよ?」
それは早く言ってほしかった
「それは助かる!何飲む?生でいいよな?」
ミヨキチはこの学校の教師であるため、当然ながら酒好きである。歓迎会の時には普通にビールを飲んでいたのを記憶している
「お願いしますー」
あとは適当にお好み焼きでも頼むか
好き嫌いは特にないのでメニューをミヨキチに渡す
生ビールが到着して、乾杯が済んだ後に気になったので聞いてみることにした
「ミヨキチは料理できる方か?」
ミヨキチが着任してから、佐助は初めてであるので料理の腕はさっぱりである
お昼もコンビニでサラダパスタとかを食べているので自炊してるかもわからない
サラダパスタって腹にたまるのか?
「お好み焼きくらいなら大丈夫ですよー」
とりあえず、お好み焼きをひっくり返して顔面にぶっかけられるとかそんなことが無いのは安心した
佐助では、坂上先生にお好み焼きを作らせてはならないという鉄の掟がある
理由は坂上先生がひっくり返すと何故か対面の顔面に直撃するそうだ
実際見た事は無いが、古里さんですら坂上先生に作らせず、自分で作っているのを見た時に信じることにした
「じゃあその腕前を見せてもらおうか」
注文した豚玉が運ばれてくる
「ふっふっふ、何も面白くない普通のお好み焼きを見せてあげますよ」
腕まくりして、気合十分で作成開始するミヨキチ
結論的には、本当に無難なお好み焼きを食べることとなった
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