3時間目。HR

8:50

地獄の朝礼が終わり、いつも通りに教室へ向かう


2年3組、それが俺の担当するクラスだ

学級崩壊の気配すらない平和なクラスである


「はーい、おはよう諸君」


ドアを開けてご挨拶

挨拶は人間としての基本である。元気よくハッキリと


『おはようー』

「ハラワタ先生今日もアホ面だね!!」

「良い面構えだな!」

「わたるせんせっ!アホ面ー!!」

「先生ーもう帰りたいですー…」

「俺も帰ってゲームしたいわー!」

「わたる先生ー寝ぐせついてるよー」


カオス

平和なクラスであるが、カオス

いつものことである。もうウチのクラスに関してはハラワタ呼ばわりは流すことにした

構うから定着するのだ。構わなくていいのだ。アホ面言ったやつは後で成績下げてやる(そんな権限ないが)

まぁ、きちんとおはようとあいさつを返してくれるので、いい子たちである


「はーい、おはよう。本田ほたる!寝ぐせはどこだ!?」


聞き流してはいけない言葉が聞こえた

寝ぐせはまずい。よくぞ見てくれた本田ほたる!!

俺の寝ぐせを指摘してくれた少女、本田ほたるは髪を茶色く染めた少しギャルに近い性質のギャルである。可愛らしく明るく活発でクラスの中心の一人である

クラスカースト的にも高い。成績も優秀で周囲とのコミュニケーションも良い。若いがかなりポテンシャルが高い子だ


「嘘でーす!」


良い笑顔です


「7回首ねじ切るぞ」


慌てて髪の毛を触って確認した俺が馬鹿じゃないか!!


「こわっ!!可愛い生徒の言うことなんだから許してよ!」


にこやかに笑う本田ほたる。うん、まぁ可愛い生徒なので許そうじゃないか

しょうがないんだ。思春期だもんね。反抗期だもんね。でも君、4月から数えて8回目だよ?そろそろさ、仏の2.5倍は許してる俺だけどそろそろ怒っちゃうぞ


「はーい、アホに騙されたけど出席取りますよー」


ここで流れを切らないと授業に間に合わない。5月くらいにこのノリに付き合っていた時は出席を取る前に授業のチャイムがなってしまって、坂上先生にほどほどにしてくださいね。と軽く怒られてしまった

なので、ざっくり流れを切り裂く


ウチの学校は5分前行動が原則なので、08:55の出席確認にいなかったら遅刻だ

遅刻10回で遅刻指導が入る

生徒指導の人がやるので、俺には関係ないと言いたいが、関係なくはない

遅刻指導対象がクラスにいるとネチネチ言われるんだよ


順調に出席を取るが、やはり予想通りある席が空白である

ドタドタと廊下から足音が響く


奴だ


「まぁギリギリセーフってとこか、立花弘ぃ!!!!」


「はいぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!」


廊下まで響くように大声で

それに返すように教室のドアが勢いよくバーン!っと開かれる


「立花弘ぃ…お前、またぎりぎりだぞ」


遅刻直前常習者である立花弘(たちばな ひろし)

遅刻指導には引っかからないが良い感じに遅刻もどきを繰り返すクラスのお調子者である

お調子者なだけに、この騒動もクラスの名物で終わっているが担任としては遅刻指導対象にならないかビビるのでやめてほしい

ホントにやめてほしい。古里さんに睨まれたら蛇に睨まれた蛙どころでもなく、龍に睨まれたノミである


まぁ言っても聞かないので、しょうがない

本当は時間を守らないと外資系でもない限り、信用を失う可能性が高いので高校生くらいの時には守れるようにしたいのだが、そんなことを高校生に言っても響かない

俺も高校生の時に時間は大事だと言われたが、無視してたレベルである

要は時間を守らないといけないと、実感しないと気を付けられないのだ

だって、俺も遅刻したからな。そりゃしょうがない。だって朝の寝る時間は何よりも貴重なのだ


「すいません!ちょっと目覚まし時計がストライキを起こしましたぁ!!!」


「…ほう」


なんか、どっかで聞いたことがあるような気がするな

というか、聞いたというか思ったというか、何か1時間くらい前の俺が目覚まし時計さんに心の中で文句を言ってた時と同じ言葉な気がする

そうか、お前も同士か立花弘よ。しかし、同情することはできない

何故ならお前は生徒、俺は先生だからだ。というかまぁギリセーフなのでOKということにしておこう


「はいー、じゃあ続きいくぞぉ」


このクラスには今一つだけ空席がある…2週間前から学校に来なくなってしまった

その空席に目を向けるが、今日も空席のままだ

早く彼女が来れるように祈ろう


ちょっとだけセンチメンタルに語ってしまったが、命に別条が無いただの肺炎による入院である

そろそろ退院時期か、明日にでも病院に見舞いにでも行ってやろう


時間通りにチャイムが鳴る


「はーい、じゃあ授業を始めるぞー」


用意していたプリントの束を整える


「わたるせんせっ!」


元気よく手を挙げるギャル

まぁギャルと言ってもそんな化粧も濃くないし、というか薄化粧くらいだし、綺麗な金髪にパーマかと思う癖毛、金髪だからギャルという短絡的思考

クラスの中心の一人でもある麻倉舞(あさくら まい)だ。ギャルななりして、頭はそこそこ良いし授業態度も良い。安心できる生徒だ


「まい思うんだけどー、1時間目って英語だよ?」


Oh......

教室のドアを見ると、英語の教師であるデル・スプーナー先生がまだかな?というジェスチャーをしながら俺を見ていた

生粋のアメリカ人であるが、日本好きで日本語がペラペラ、英語もペラペラのバイリンガルである。黒人で度入りのサングラスをいつも付けており、ガタイがマジでマッスルなので、どこかのSPかな?と思う程である

しかし、気さくな性格で人当たりもよく、猫を5匹飼っている愛猫家でもある


・・・授業に遅刻はいけません


「…Thank you Mai Asakura!!Good Bye!!!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る