第六章8 『切断と結合』
「間抜けな奴!
少年の背中に仄かな光が灯る。
意識が失われた少女の髪の一本一本が
熟練した外科医の手術の指先のように
繊細かつ迅速に少年の傷跡を縫い上げていく。
思考も感情も体の自由も奪われてなお、
少女の無意識は、少年を助けようと動く。
今、少年の止まった
少女がもたらした真なる奇――
「――跡などはこの世界の神となるこの私が認めなぁあいいいぃ! 無駄だぁああ! 過去に起こった事象の
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愚かにも少年は再び立ち上がった。
氷のように冷たくなった体。血の気のない表情で。
ダガーを構え、目の前の男に襲い掛かる。
だが少年は刃を振り上げるも虚空を切るのみ。
少年の行為は全て無駄だったのだ。
慈愛に満ちた表情で男は少年にピリオドを与えるべく迫る。
慈愛の刃で、男は少年の頭蓋を破壊し確実なる死をもたらした。
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起こるべき未来を記した宣言書。
男の宣言と同じ現象が、
この世界でまもなく再現される。
ここに記された事はこの世界の
未来に起こる――唯一絶対の真実。
「親からもらった体をもっと大切にしろ! 一人の人間の命は世界よりも重い! 人の命は地球の未来! 死んで罪を償うよりも生きて罪と向きあえ! あなたが死んだらみんなが悲しむ! 生きていれば良い事あるさ! 死ぬなそなたは美しい! 生が終わって死が始まるのではない生が終われば死もまた終わってしまうのだ! 死ぬのは甘えだ! 死ぬのは逃げだ! 死ぬのは恥だが役に立つ! ゆうしゃきりさきしんでしまうとはなにごとだ! 諦めるな絶対に死ぬな! 苦しくても悲しくても死ぬんじゃない! 頑張れ! 頑張れ! 頑張れ! 頑張れ! だのむがらぁああ死ぬぅなぁああああー! 桐咲ぃいいい死んじゃぁああ嫌だぁああ―あーはっーはっはっはっはっは!!」
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――――少年は再び立ち上がった。
氷のように冷た――――――――――い表情で。
ダガーを構え、目の前の男に襲い掛かる。
―――少年は刃を振り上げる――――――。
少年―――は――――――――――
慈愛に満ちた表情で男―――にピリオドを与えるべく迫る。
―――刃で、男―――の頭蓋を破壊し確実なる死をもたらした。
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少年は再び立ち上がった。
氷のように冷たい表情で。
ダガーを構え、目の前の男に襲い掛かる。
少年は刃を振り上げる。慈愛に満ちた表情で
男にピリオドを与えるべく迫る。
刃で、男の頭蓋を破壊し確実なる死をもたらした。
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グチャリ
「あぎゃっ……?」
蜘蛛の糸の「
の特性を組み合わせた応用技。少女の髪を介し
一なる門に通じている少年は、
事象に対して限定的な干渉が可能。
「――と、みせかけてまだ生きているんだろうね」
少し間を置いてから、少年は断言する。
何の根拠もない推察。
ただの過去の経験から導き出した、勘。
――
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密室世界に 出口なし
此処に在るは 動機のみ
舞台役者は
扉は閉ざれ 幕は開ける
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この部屋は外部の空間から隔絶される。
この部屋の所有権はこの空間を
生みだした少年に移り、この部屋は
桐咲の統治する領域となった。
――
この部屋で今生きている人間は死ぬことができない
「
頭蓋が破壊され、蟹味噌のように脳梁を
掻き混ぜられた男が勢いよく燃える。
「熱いぃいいい――!! だのむがらぁああ火消じでぇえええ」
宣言を受け、なお男は生きている。
条理を覆す異形なる存在。
千年を超える時を生きた
超常なる人間の成す神秘。
おそらく何らかの異能または技術。
だが、いくら考えても分からない
手品の仕掛けに
「やっぱりね」
男はやがて、肉になり、骨になり、
灰になったが、なおも燃え続ける。
魄は失われても。魂は永遠に失われない。
「天国に行っても地獄に行っても詭弁を並べて幸せに暮らしそうなので、この世界で生きたまま永遠に燃え続けていてください。僕を恨まず、頑張って生き続けてね」
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