第五章21 『十二の牢獄』
車いすは大破したが、ソフィアも僕もなんとか生きている。
「大丈夫か、ソフィア」
「見たとおり、駄目だ。どうにもなりそうにないな」
ソフィアは弱気になっているわけではない。
彼女の
勝ち筋がないと結論付けてしまっているのだ。
「一つ質問。ソフィアは人か刀か?」
「私は――刀だ」
彼女が”
であるのであればまだ勝ち筋はある。
「ソフィア。おまえに
「効果はあるのか?」
「分からないが。いまできることをやるだけだよ」
「私の製造責任者の異能。試してみるのも面白いか」
――
ソフィアの全身が光に包まれる。
「
――
パンドラの周囲を12のガラスの牢獄が取り囲む。
この12の牢獄の番人はソフィア。
ソフィアはこの牢獄に投獄した囚人を逃さない。
「何――このガラスの
「貴様を私の牢獄に
「何を言って――」
「第一の番人――”
鎖がまるで独自の意思を持っているかのようにパンドラの足に絡みつき逃さない。さながら小さな竜がからみついたような姿。
「小賢しいまねを!」
鎖をほどこうとするほどに鎖はパンドラの足首を絞めつけ、苦痛を与える。第一の牢獄は
「第二の番人――”
意思を持つ10の剣がパンドラに襲い掛かる。パンドラは防御障壁を大盾の形状に変形させてこれを防ぐ。最後の一撃はソフィアの真打による一閃。大盾の防御障壁は破壊される。第二の牢獄は
「第三の番人――”
パンドラは、この一撃だけは絶対に食らう訳にはいかないと本能的に判断し、防御障壁を剣に形状変化させこれを破壊する。第三の牢獄は
「この程度かぁ!!!」
「第四の番人――“
パンドラは剣でこれを防ごうと剣を構える。これを大上段から剣ごと一刀両断にする。パンドラの頬を刀が掠め遅れて頬から血がにじみ出る。第四の牢獄は
「私の――顔を――絶対にっ――!」
「第五の番人――“
一撃で10の矢を放つことができる矢を放つ。パンドラは壊れた剣を形状変化――球状の防御障壁に戻し全弾を防ぎきる。第五の牢獄は
「ははは無駄――無駄よ。私には効かないわ!」
「第六の番人――“
無慈悲に振りおろされる雷槌。球状の防御障壁は全身を守ることはできるがその分、一点での攻撃に弱くなる。当然の帰結として防御障壁は砕け散り壁の内側に雷槌の侵入を許す。
パンドラはとっさに頭部を守るために両腕をクロスさせるが、雷槌は無遠慮にパンドラの両腕を骨ごとへし折る。第六の牢獄は
「ぎゃああああ!!!」
「第七の番人――“
連撃による超加速により、もはや斬撃ではなく風の刃。防御障壁を小盾の形状に変形させ耐えきる。双子剣の限界速度を突破――究極の盾と究極の矛の闘いは共に崩れ去るという結果となった。第七の牢獄は
「第八の番人――“
ソフィアの拳による連撃。パンドラは何百という小型の防御壁を空中に造り出すが、その全てを拳で打ち砕き、パンドラの顎にアッパーカットを決める。
パンドラは空中に飛び上がるも、無慈悲にも足に巻きつけられた竜の鎖により再び地面に引きずり堕とされる。第八の牢獄は
「やめて――もう」
「第九の番人――“
惨めに這いずりまわっているパンドラの顔面に強烈な蹴りをお見舞いする。防御結界の展開が間に合わずにサッカーボールのように吹き飛ばされるも、足首の竜の鎖がパンドラをソフィアのもとに引き戻す。第九の牢獄は
「第十の番人――“
ソフィアが地面に突き立てると地面が急速に冷却される。パンドラの足も氷つき、パンドラが動こうとした途端、
「待って……待って!」
「第十一の番人――“
ソフィアの手に最も馴染む愛刀――輝く剣。右腕と右の翼ごと両断する。第十一の牢獄は
「第十二の番人――“
ソフィアの最大の力をこめた回し蹴り。一点集中型の最強の防御障壁を軽く突き破り、みぞおちを貫く。十二の牢獄の崩壊とともにパンドラの足元の竜の鎖も消滅し、勢いのまま吹きとばされる。最後の牢獄も砕け散り――囚人は解放された。
「外道。そちらにボールがゆくぞ――トドメをさせ」
――
花園に咲く花が――パンドラの真っ赤な鮮血が
桐咲はその戦闘の最中に自分の周囲にじっくりと
車いすの少年の周りに
バラバラの天使の
肉片が散らばっていた。
「トドメだ。
肉片となってまで最後まで
恨めしそうな顔で桐咲を睨みつけ、
やがて燃え尽きてパンドラは消滅した。
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異世界転生者パンドラの心音停止を確認
おめでとうございます
「
「
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