第五章20 『へパイトスの娘達』
あたり一面いろとりどりの花で覆われた天界の楽園のような花園。パンドラという天使は花園で横になり、すやすやと寝ている。
「天使。寝てるね」
「今が絶好の機会。外道は準備でもしていろ」
「了解」
「
抜剣――両断――決着。
「あら、随分と乱暴な起こし方ね」
パンドラは
「寝起きにしては随分と機嫌が良いな」
「目覚めはいい方なのよ私。決めたわ。明日遊ぶおもちゃはあなたにしてあげる」
「そう、つれないことを言うな。今日遊んでくれ――よ!」
横薙ぎの一閃。天使の羽を何枚か斬り落とす
「ふふふ」
「
影打10本と、真打1本。
合計11本の刀剣の同時召喚。
影打の10の刀が宙に浮かぶ。
ソフィアが握るは真打。
「ゆけ――娘たち」
ソフィアが指揮者のように
振るうと10の刀剣が意思を
持つように前後左右360度の方向
からパンドラに向かって襲いかかる
「そんな飛び
天使の唯一にして最強の能力
防御結界の現出。マッハ30の
炎の矢を防ぎきった天使を
つつむ球状の防御結界。
「いや――それはどうかな。
潜在能力を極限以上に引き出す
究極の一振りであるソフィアは
この刀の精神干渉を受けることはない。
刀剣によるメリットのみが享受可能。
「砕けろ」
潜在能力を最大まで引き出した
上段からの力任せの一撃により
防御結界は砕け散り、防御結界に
阻まれていた10の影打が
パンドラに襲いかかる。
「こんなもの――っ!」
刀の牢獄からギリギリのタイミングで脱出。
衣服と髪を切り裂くことに成功するが
パンドラの肌にまでは到達しない。
「10の刀の全方位攻撃を避けるとはな。
連撃を重ねる度に速度が加速する剣。
持ち手はソフィア。
ソフィアは防御結界に阻まれ
まるで石を叩き続けるような
感触を感じながら、連撃を打ちこみ続ける。
その速度は乗算的に増していき
――今の速度は音速を超える。
「こんなの……」
天使の額に汗が伝う
ピキピキ
「防御結果強化!」
バリバリ
「押し切られ――っ!」
バリィン
「死ね――」
音速をも超える一撃は
防御結界を突き破りパンドラの
絹のような柔肌を傷つける。
ぽたぽたと血が流れ落ちる。
「ぎゃああああ」
今まで知らなかった新鮮な感覚――。
などと、当事者になった今、
パンドラが感じるはずもない。
天使の翼で上空に逃げようと膝を
そのパンドラの一瞬の間は、
ソフィアにとっては最高の攻撃のタイミング
「逃さない――
ザン――
オリハルコンをも焼き斬る、
一太刀が袈裟狩りに振り降ろされる。
天使を両断する一撃。
身を捻り回避しようとして背面を見せる。
だが、背中にある翼は回避しきれずに
“
地に――堕ちる。
「天使の翼というからもっと高貴なものだと思ったが、いざ斬り落としてみれば生物的というかグロいな。ニワトリとかとも構造的にはさほど変わらんか」
パンドラの心の中に名状し難い
感情が
彼女が居た天界には存在しなかった
怒りという新しい感情の体験。
――もはやそんな感情を
彼女は理解したくもない。
「ふざけるな! 地を這う虫風情が! 大人しくしていれば調子に乗りやがって! ただで死ねると思うなああああ!!!」
天使の本気の構え。防御結界に使用していた力を攻撃エネルギーへ変換。全身を守る球状のバリアから小手状に変換、範囲を限定することで凝縮。
その形状はクリスタルで出来た小手のようであった。
ソフィアは
「真剣白刃取りっていうんですってねぇ――お前の演武もいい加減見飽きたわ!」
厳密には白刃取りなどではない。球状の防御結界をナックルグローブの形状に形状変化させ、片手で
攻守逆転。これが天使という種族――圧倒的な力の差。
地面にうずくまるソフィアの顔面をまるでボールのように蹴り飛ばした――。車椅子に座っていた桐咲はソフィアを受け止めようとした結果、受け止めきれずソフィアを抱えたまま地面に這いつくばることとなった。
「虫の分際でよくもこのわたしに傷をつけてくれたわね。その罪は万死に値する。文字通り一万回殺してあげるから。いまから覚悟しておいてね」
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