第五章8 『因果応報』
僕はさきほどソフィアに言われた
言葉の数々を頭の中で
彼女のいうことは正しいのであろう。
なによりも最も一番近い場所、つまり僕の魂
と一体化していた者の言葉だ。彼女が
そういうのであれば――そうなのだろう。
正義の英雄にもなれず悪鬼羅刹
にもなれないでミミの命令でもないの
ならば僕はどうすれば良いのだろうか。
いっそ全ての使命も約束も打ち捨てて
どこかのスラムに引き籠っていた方が
他人様に迷惑をかけないで済むのだろう。
そんなことを考えながら、
知らない街をあてどなく歩いていた。
明朝までに結論をだせ――か。
そういえば、『介錯くらいなら』してやる。
とか言っていたな。もし本当に僕を
殺してくれるのなら頼んでみるのも
やぶさかではないかな。あははははは。
そんな益体のない街の夜道を歩いていた。
視界も思考もぼんやりする。
心が波の無い
幻聴も聴こえない、幻視も見えない。
ここはそう、雑音のない――ただ静かな世界。
――あってはならない油断
ズドン
突然――背中に砲丸が直撃。
強烈な衝撃が走り、きりもみ状に
ふきとばされる――これは……蹴り?
ドシュ
吹きとばされた先に待ち受けていたのは――。
刺突武器――この形状は、エストック。
凶刃を突き立てた何者かが更に刃を
捻じ込み僕の肉を抉る――顔が見えない。
突きとばされた勢いで僕の体は
完全にエストックによって貫かれていた。
その姿は――蛾の標本。
まるで自分から剣に突き刺さりに
いったような滑稽さ。あはははは
****************
彼の物を 捕縛せよ
「
****************
束縛の詠唱術――。
これで完全に逃走は不可能。
左右の腕は術により完全に拘束。
僕の
体はエストックに貫かれたまま――。
もともと準備と仕掛けが無ければ
僕の強さはこの程度のものだ――。
中途半端半端なゴミに
ソフィアの言う通りだ。確かに僕が
死んでもこの程度の能力の暗殺者なら
ベオウルフさんじゃなくても代わりは
いくらでもいる。
ここが年貢のおさめどころか――。
僕に最初の一撃を与えたであろう存在が
近づいてくる――。
ああ……僕のよく知る
鬼族の少女――オルガ。
「まだ――てめーを楽にはさせてやらねぇ! ずーーっとお前を殺す瞬間を心待ちにしていたぜぇ! 暗殺者風情が素性の知れないフリーランスの探偵なんかを利用した――てめぇの間抜けさを悔いて死ね」
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