第二章9  『悪剣遣い』

 その後の結末


 僕はへパイトスとの闘いの後に、究極の一振りManMadeManこと、球体関節の鉄人形を背負いながらほうぼうのていで第零課正史編纂室ミミの引きこもり部屋に戻った。


 まず、ベオウルフさんの殺し合い競争タイムアタックについてはベオウルフさんの圧勝――まぁ、はなから勝てるなんて微塵も思ってなかったからこれは問題ない。ベオウルフさんはあの殺し合い競争タイムアタックを宣言してから半日と立たずに目標を達成していたとのことだ。


 ただ、ベオウルフさんが双子剣オールフォーワンのヘカーテとの闘いから帰ってきた時にはベオウルフの手持ちの両手剣が全部お釈迦になってしまったそうだ。


 ”タイムアタック勝利の報酬”として、武器を調達するための経費を第零課正史編纂室が支払わされることになった。そんな約束はしていなかったのだが――無茶苦茶である。オリハルコン製武器一式の費用をどう確保するかについて、ミミは珍しく真剣に頭を痛めている様子であった。


 その代わりといってはなんだが、ベオウルフさんは僕にこっそりと因果応報剣フィードバッカーを返してくれた。さすがのベオウルフさんといえど、法外な費用を請求することに対して多少の良心の呵責はあったということなのか、ただの気紛れなのかはよく分からない。


 次に、へパイトスが切り札として用意していた”一刀十傑衆意思持つ十剣”ことメイドさん10人のその後の件だが、ミミの判断で第零課正史編纂室で非正規であるが雇用することとなった。とはいっても、ミミや僕の不在時に第零課正史編纂室の管理及び維持を任せるという形でのパートタイムの雇用契約になっているようである。


 あのへパイトスとかいうおっさんは、罪のない一般人を辻斬りするわ、悪剣カースドエッジとかいう物騒な兵器を造って犠牲者を増やすはと、まごうことなき悪人ではあったが、メイドと刀に対する熱意だけは本物であった。


 もし生きているのであれば、ロング丈のクラシカルメイド服の良さについて夜通し語り合いくらいの人間ではあった。惜しい人を亡くしたものだ――。まぁ僕が殺したんだけど。


 ミミから預かってきた究極の一振りManMadeManについてだが、ミミの方での調整が終わり次第、峰岸亨から略奪した異能”閉鎖図書館クローズド”を移植させようと考えているそうだ。


 究極の一振りManMadeManが自律思考ができる兵器になるそうだ。そのために、日々の研究とは別に、この作業にミミは精を出している。どんな物になるかは想像つかないが新しい戦力が加わるのはありがたいことだ。

 

 ”魂さえ入れられれば”といっていたへパイトスさんの無念も、ミミによって叶えられるのであろうから地獄の血の池地獄で泳いでいるへパイトスおじさんも喜んでいることであろう。


 僕はといえば、刺突剣レイピアによって貫かれた脇腹が痛すぎて、早くベッドに横になりたいというのが正直な感想だ。当然教会の治療室で正式な治療も受けてはいるので、致命的な問題はないとは思うが、痛いものはやはり痛いのである。


 ベオウルフさんが暗殺対象5人のうち4人を倒してしまうというイレギュラーはあったが、これにて悪剣遣い討伐は一件落着である――。

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