第一章9 『略奪した異能――万能の司書』
「きーちゃん。略奪した異能が壊れてたってのはどういう意味……?」
「文字通りの意味だよ。僕の中に取りこんだ時には壊れていたんだ。”
「彼から奪った異能はどんな能力だったの?」
「もともとの能力は、あらゆる知識を自在に引き出すことができる自我を持った異能だったようだ。所有者の魔力量に依存するけど魔力の限度内であればいかなる高等魔術であれ無詠唱で発動できるという戦闘能力も兼ね備えていた」
「なんともチートなスキルだね。ミミ的には”あらゆる知識を引き出す”っていう部分が特に気になるけど。これはどうやって実行していたのかとかも分かる?」
「
その情報を独自分析の上、最適解を提示していたそうだ。自分で話しておきながら意味が僕にはさっぱり理解できないけど。ミミには分かる?」
「うん。ミミは意味はわかるよ。文字通りの意味なら――。そうだ、ところでせっかくだからちょっとためしに新しい異能を使ってみてよ」
「了解。
《
――――――――――――
提言1.焼身自殺
提言2.服毒自殺
提言3.飛び降り自殺
提言4.入水自殺
提言5.首吊り自殺
――――――――――――
「ミミには、きーちゃんが独り言をブツブツ言ってるヤバい人にしか見えないんだけど、その異能はなんって言ってるの?」
「なかなか
「はは……。すごい提言だね。自律思考を持っている異能というのは本当だったんだね。それじゃ次に”
「了解。
《回答不可。
「
「うーん。せっかく得た異能だけど現状は使えなさそうだね。それとも”
「仮に能力が劣化していなかったとしても使いこなすのは難しそうだ。今後他の異世界転生者を殺して異能を奪っても同じことだと思う」
「きーちゃん。どういうことかな?」
「説明しづらいんだけど、二本の腕しかない人間に後天的に無理やり3本目の腕を無理やり神経を繋げて植えつけたような感じかな。
この”
腕を事故で失って義手をつけた時の感覚が近いのかもしれない。そこに腕はあるけど自分の体の一部として自由に動かすのが難しいという感じ」
「なるほど、ね。きーちゃんの
今後の計画は
「ミミ。”今後の活動”っていうのはどういうこと? 他にも異世界転生者が見つかっているということか?」
「確定情報じゃないけど、異世界転生者の可能性が高い人物のピックアップ自体は完了しているよ。今後の活動方針については放課後にでも話し合おう」
「ミミに一つ質問がある。他にも異世界転生者と思われる者の候補者が複数人いる中でミミが峰岸亨を最優先の殺害の候補にした理由は何?」
「彼を最初の殺害対象に選んだ理由はその影響度の強さだよ。彼は無自覚な振る舞いによってこの国の秩序を破壊していた。
ミミたちの
「2ヵ月の間彼の行動を監視していた僕の感想としては、真っ先に始末しなければいけないほど危険な人間という感じはしなかったけどね」
そう。彼は僕と違って本当の意味で善人だった。
「うん……。それは見る角度というか立場の問題かな。当人の善悪は関係ないよ。
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