第一章6 『教会の卒業生』
「まずは2人の分断。そして各個撃破。これが最初に僕が達成しなければならない必須条件だった」
「各個撃破はアサシンの闘い方の中で基本だね。
だけど、弱体化したとはいえあのシーフの彼女相手では、きーちゃんでは荷が勝ち過ぎていると評価していたんだけど――」
ミミの瞳は僕に本質だけを話せと
「ミミの分析は正しい。マタタビ酒によって獣人の彼女の弱体化していたからといって、勝てる相手ではない。だから彼女の過去の情報や戦闘事例を調べたんだよ。――彼女がこの教会に在学していた時代のね」
シーフの子――カッツェは
だから闘い方の弱点の特定も容易だった。
「彼女の情報を調べるのは容易だった。何故ならここは学校の過去の歴史を補管する”第零課編纂室”だからね。過去にこの教会を卒業した彼女の情報を特定するのは容易だった」
「なるほど、ね」
ミミも知っていただろうけどね。
「彼女がその後どういった経緯で奴隷になったかは僕の預かり知るところではない。だけど、彼女の行動パターンや弱点や特性、戦い方のクセについては十分過ぎる以上の情報がここにはあった。殺すのに必要な情報はここに全て補管されていた」
「そうだね。彼女は特に異質な存在だったから情報はここにたくさん保管されているね」
「彼女は、在学時は単騎で敵陣に攻め込むという戦闘スタイルに特化していて誰かを護りながらの闘いは苦手ということが分かっていた。
これは僕の推測だけど、在学時に彼女の独断専行が行き過ぎて、同行した仲間を死亡させたことがトラウマになっているからだと思う」
「トラウマ……か」
ミミはなにか考えているようだ。
それは僕には関係はないことだ。
――報告を続ける。
「そんなトラウマを抱えた彼女ならば、夜間の襲撃者に単騎で挑んでくることは容易に想像できた。この推測は、普段の彼への想いを考えれば当然の行動でもあった」
そう。カッツェにとっては峰岸亨は
自分の命より大切な存在だったのだから……。
だから彼女の最後の言葉は、自身の命乞いではなく、
峰岸亨を見逃して欲しいというものだったのだ。
その最後の願いすら叶えることはできなかったけど。
「さすがはきーちゃん。戦いは始まる前に勝敗が決していたということだね」
残念ながらミミ、それは違う。
そこまで入念な準備をしていても
実際はかなりの苦戦を強いられた――。
「そうだね――。闘う前から勝敗は決していた。彼女は教会の卒業生だから”気配遮断”を修得した相手がどのような相手かは即座に理解したはずだ。
だから人気のない裏路地に入った段階であえて僕の気配遮断を弱めた。僕の暗殺者としての殺気を彼女を釣り上げるための撒き餌として使ったんだ」
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