第一章4  『異世界転生者の仲間達』

 僕の上司ハーフリングのロリっ子ミミの質問拷問は続く。


 深呼吸――。冷静に思い出して説明しよう。

 僕の体調不良をミミが心配している。

 大丈夫だ僕は大丈夫だ。


「彼には治癒術師ヒーラー騎士ナイト重戦士ガーダー、シーフといった仲間がいた。いずれも精鋭揃いで真っ向勝負では勝てない。だから彼が仲間と別行動しているタイミングを狙う必要がった」


 治癒術師ヒーラーくらいは殺せたか。

 殺せるから優れているのか? 

 殺される人間は殺す人間より劣っているとでも?

 思考が支離滅裂だ。関係ない。事実だけ話せ。


「そうだね。きーちゃんは騙し討ちと初見殺し専門。相手に対策されたり事前に警戒されたらその時点でアウト。きーちゃんの闘い方は奇術師マジシャンみたいなものだからトリックを暴かれればその時点でゲームオーバー。

再戦コンテニューはムリかな。きーちゃんのレポートの通りなら、確かに真っ向勝負なら勝ち筋は無さそうだね」


 正しい評価だ。いっそのこと真っ向勝負で殺された方が危険な存在である異世界転生者桐咲 禊がこの世から一人減るから良かったかもしれないが。


「真っ向勝負での実力差については返す言葉もないよ。単純な一対一の戦力で言えば向こうの方が上。僕とは練度が違う」


 事実だ。


「きーちゃんは他の方法殺しの手段は考えなかった?」

「考えていたよ。彼の仲間は奴隷だ。だから懐柔も容易だから奴隷をこちら側に引き込んで自滅させようとも考えた」


 本当にそんなこと考えていたっけ?


「アサシンとしてはごく一般的な判断だね。でもなんでそれを実行しなかったの?」

「彼の仲間は彼への忠誠心――とは違うのか……。彼に対する人間としての好意が強く不和を煽って内部崩壊させるのは難しいかなと感じた。それが僕が懐柔をあきらめた理由だ」


 彼らはみんな仲が良さそうだったんだ――。

 本当に。遠くから眺めていても分かるほどに。


「好意ね――。それは彼への恋愛感情みたいなものかな?」

「仲間が彼に感じていたのは恋愛感情とは違ったと思う。彼に対する好意は異性としてではなく、人間としての好意といったものに感じた。

家族……みたいなものだったのかもしれない。シーフの子だけは例外的に異性としての好意を持っていたように感じられた」


 僕の家族の記憶は――。

 なぜだか思い出せないけど――。

 きっと家族とは暖かいものなのだろうな。

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