第零章6  『ソフィアと過ごす異世界生活』

 万能の司書アンリミテッドブックことソフィアの声は俺以外には聞こえないので、街の人間からはたまに俺がぶつぶつ独り言を言っているように見えるようで、気まずい思いをしたこともあった……。


 まあ、ソフィアさんから享受できるメリットを考えれば誤差の範囲のデメリットである。俺が魔力供給する前提ではあるが、ソフィアさんは魔法を無詠唱で発動できるので、戦闘面でも頼りになる相棒だ。


 もっともあくまでも俺の魔力量に依存しているので、ムチャな魔法の使い方はできないんだけどね。俺が成長すれば、その分使い勝手も良くなることが期待できる。


 ソフィアさんはチート系能力とは言え、メタ的にさすがにそれくらいの制約がないと物語の展開が難しくなるという神様側の事情もあるのかもしれない。


 そんなこんなで異世界にきてしばらくのあいだ、ソフィア先生のサポートのもとで、ダンジョンに潜ってモンスター退治したり、ギルドの依頼をこなしたりという日雇い労働クエストをこなしていたわけだ。


――あれ? 転生前とあまり変わらない。


 そう。現実はなかなか厳しく、街のギルドの討伐依頼系の日雇い労働クエストをこなせば生活するには不自由はしないものの、なかなかまとまったお金は貯まらず……。という感じであった。


異世界転生してしばらくの間は「ハーレム王に俺はなる!」という目標を叶えられるのもいつになるやらという感じだった。


 異世界の沙汰も金次第――。

諭吉パワーは異世界でも健在である。


「ソフィアさん。日雇い労働は辛いっす……。楽にお金を稼ぐ方法はない…?」

《――楽して稼ごうとは安易な考えですね。マスター。そうですね。私の持つ知識を換金してはいかがでしょうか? 私の持つ素晴らしい叡智を使えば、ごく潰――マスターでもこの地方の街で成り上がることは容易と思われます。》


 そんなソフィアさんの提案サジェスト通りに行動したら、街一番のお金持ちになるのはあっというまだった。


 基本的にこの異世界は文明レベルは中世なので、農耕技術や医療技術や化学技術についての知識はかなりの値がついたのだ。物騒なので殺傷系の技術や知識は売らないようにしていた。


「今の俺を主人公とした異世界ラノベのタイトルをつけるとしたら『過労死して死んだと思ったら転生先で大賢者と呼ばれるようになったのだが?』こんな感じになると思うけどソフィアさんならどういうタイトルをつける?」

《――タイトルに大切な情報が欠如しています。私がタイトルを付けるとしたら「派遣プログラマー37歳。二徹したら死んだのだが? 異世界では転生時に授かったチートスキルのおかげでなんとか生き残れてます( ̄▽ ̄;)」の方が良いかと愚考します。いかがでしょうか? マスター。》


「いや――それさすがにタイトル長すぎるし、ソフィアさんの自己アピールが激しすぎるのだが……。あと俺の評価さすがに低すぎないっすか?」

《――マスター。僭越ながら私に対する高い評価は妥当なものと愚考します。あとマスターが主人公では表紙のイラストに華がなさすぐるので外見にもっと気を使ってください。ラノベは表紙が命です。》


「ソフィアさん自己肯定感高すぎな件について……。ところでお金も貯まったことだし、そろそろダンジョンを潜ったりする時にパーティーを組んだりしたいんだけど、どうしたらいいかな?」

《――マスター。ギルドで奴隷を雇ってみてはいかがでしょうか? ギルドのお墨付きの奴隷であれば闇市で契約するよりも金銭的には高額となりますがある程度クオリティーが保証されます。

ギルドは公的機関なので、怪しげな裏通りの人売りから買うのに比べればはるかに安全です。》



 万能の司書アンリミテッドブックソフィアさんからのそんな提案サジェストもあり、ギルド公営の奴隷商館を訪れた。

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