第零章1  『転生部屋で目覚めました』

俺は峰岸亨みねぎしとおる37歳。


 派遣プログラマーとして連日連夜デスマーチに明け暮れるアラフォーのブラック企業の社畜おっさんである。始業は9時からなのに8時15分出社。帰宅は夜の10時というようなアホみたいな生活が日常……。


土日は外出する気力もなく基本無料のネトゲで遊ぶ毎日。35歳を過ぎたあたりからわずかながらではあるがお金に余裕ができたものの使い道はネトゲのガチャと、ソシャゲのガチャであぶく銭のように消える生活。


 食生活もひどいものだ。朝食は牛乳と食パン1枚、昼はコンビニパン、夜はスーパーのタイムセールの特売弁当。


 土日は高校の頃からプレイしているネトゲに集中するために、カップメンを作る時間すら惜しいので、食事に時間がとられないポテチやコーラなどで栄養カロリーを摂取する日々。


 ちなみにキーボードを油まみれにしないようにポテチ専用トングを使って食すのが俺流ジャスティスだ。会社で受けさせられる健康診断の結果は「D判定要再検査」ばかりだったけど、俺の勤めていたブラック企業が


 ”平日に再検査のために病院に行く”なんていう理由で有給を取らせてくれるわけももなく、休日はネトゲの時間を削るはずもなく、そのまま放置していた。


 死ぬときはあっけなかった。新しいソフトのリリースを間近にして親会社からの急な仕様変更2徹でバグ修正しているうちにどうやら人間としての体の限界がきたらしく、指先がピリピリっときて、眩暈めまいがしたと思ったら意識を失っていた。


 救急車で運ばれて病院で手術を受けるも時すでにお寿司おっさんギャグ。死因はくも膜下出血だったらしい。


 とまぁ……。最初から最後までいいことのない人生だった。俺が死んだことで親父とお袋に労災のお金がはいったかどうかが心残りと言えば心残りか――。


 これ以上トラウマをえぐるのも辛いので死後の話をしよう。そう――。みなさまお待ちかねの転生イベントである!

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