転生者スレイヤー
くま猫
序章 『転生者スレイヤー』
月光が闇夜をかすかに照らしている。目の前に標的――。異世界からの転生者だ。
「おい――姿を現せ臆病者! てめーが命を狙っている男はここにいるぞ」
目の前の男が――何かを叫んでいる。そうだ、僕が命を狙っている対象はこの男だ。転生者――転生者は世界にとって危険な存在。
――気配を闇に溶けこませ男と距離をつめる
「■■■■はどこだ……。答えるなら、お前の命だけ"で"許してやる」
男が誰かの名前を聞いている。
誰の名前を誰に? 僕に?
男の声が聴きとれ……ない。
頭が――割れそうだ。
『『転生者は殺さなければならない』』
そうだ。僕は今夜は2ヵ月間
付け狙っていたこの男を殺すために
ここにいるのだ。
――落ち着け。深呼吸だ。
僕は転生者に向け、球状の炸裂弾を
ボーリング玉のように中空に放り投げる。
それは――
それは一瞬だけでも男の意識を引きつければ、一撃で爆殺できるだけの致死量を持つ死の塊。球状の炸裂弾は男に向かって転がってゆく――。
ゴロロ…ゴロン――
「があぁああぁあぁああああああああああ!!!!!!!!!」
――。男が球状の炸裂弾を見て叫んでいる。獣の
――ズドン
激しい光――遅れて轟音――そして爆炎。炸裂弾の中の鋭利な鉄片が男の全身に突き刺さり、まるで――
目の前の男の右脚部と右上腕が欠損――。炸裂弾の鉄片により片眼も無残に抉られている――。僕はある程度の距離はとっていたが、鉄片が僕の頬を掠めた――。
確実に致死に至る量の炸裂弾。本来であれば四肢が千切れて肉片になっていなければおかしい……。
だが――。この男はまだ――立っている。
「
その体でいまから何をしようというのか?
僕は――本来は死んでいる”はず”の
この男に対し明確な死を与えるため……
――夜色に溶ける不可視のダガーを4本投擲する
男は上体を捻ることで僕の投擲した3本のダガーを回避する――そのうちの一本が脇腹を抉る。内臓が破れたのか――おびただしい量の鮮血が溢れる
「あらら。**************************で確実に君を殺せるだけ*****んだけど。まだ息があるとは意外! *****************――よね? 所詮は****************だもんなぁ――****」
そこにはケタケタと笑うひどく醜い男がいた。――僕のことだ。相手を激昂させるだけの感情も意味もない相手の精神を揺さぶることを目的とした単語の組み合わさの――最適解。
思わず吐き気を催す――。駄目だ。あと少しだけ――。意識を保たないと。
「動揺を誘うことのみを目的にした感情も意味もない単語の羅列――。それは言葉ではなくただの音。語り合うことに――意味はない」
見抜かれていた――。僕の暗殺者としての詐術も……まだまだか。突如目の前の男の
男と女の二つの声が重なって聴こえた。あるいは幻聴か――。くそ――。よりによって戦闘の最中に。
「
《
******************
生あるものに災いを!
《――死にゆくものに絶望を!》
善行成すもの罰せられるべし!
《――悪行なすもの呪われるべし!》
******************
詠唱後に、男の体に残された左腕から闇夜のなかにあっても異質な『黒い球体』闇よりも深い
黒い球体はまるで死の体現――。光を食らうその
周囲の光を食い散らかし――その球体は僕の眼前に迫っていた――。
■■。僕の作戦は失敗だ――。悪人に相応しい醜悪な末路――。■■を残して先に僕だけ楽になる罪を……。
許さないまま――生きてくれ――。
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