第2話

少し朝方に寒さを感じはじめた10月の終わり頃。

特に会社でやる事もなく、コーヒーを飲みながら特に興味もないネットニュースを閲覧していた。

「今日の夜いける?」

社長で親友でもある拓也だ。

社長の拓也とは小学校からの幼馴染で、自慢の親友だ。

短く刈り上げ、セットされた髪に綺麗に整えられた髭。

少し切れ長の目に眉尻の古傷。

ブランドのスーツを軽く着こなし、かすかに香るローションの匂い。

社に出入りするタレントやモデルのみならず、女性社員や来訪者の女性のすべての視線を一身に集める。

正直、僕も容姿に多少の自信はあるが彼には敵わないと自覚している。

大抵、彼からの誘いは断らない。

理由はいくつかあるが、接待以外は高級店で食事をした後だいたい高級クラブをハシゴする。

妻を愛してはいるが、やはり悲しい男の性からか鼻の下を伸ばし楽しんでしまう。

断る理由がないのである。

夕方6時をまわり、あたりも暗くなりはじめた頃に「そろそろ出ようか?」と拓也。

二人で会社を後にし、向かったのはいつもの高級店ではなく由緒正しき料亭だった。

少しいつもと感じが違うなと思いながらも、颯爽と暖簾をくぐり店内に入る拓也についていく。

案内された個室に入ると、二人の女性が僕らを待っていた。

一人の女性は以前から僕らが出入りしているクラブのママで名前は確か霞ママ。

もう一人の女性は見たことはないが、かなりの美女で若い。

お店の女の子かなにかだろうか。

大きな瞳に綺麗にセットされた茶色の髪。

ぷっくりとした魅力的な唇に、服の上からでも分かる大きな胸。

正直、業界でも滅多にお目にかかれないレベルの美女に一瞬。

いや、数秒目を奪われた。

「はじめまして。美香と申します。お会いできて光栄です。」

正直、妻と比べてしまう自分はさしずめ愚かな生き物だったのだろう。

そこから、楽しい夢のような日々がはじまるとまではその日の僕には想像もできなかった。

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