愛狂
フロムK
第1話
「パパ〜!パパ〜!」
昨晩の酒が抜け切らず、なかなか起き上がることのできない体を娘の結衣が激しく揺する。
我が子ながらこういう時は少し、2歳になる娘が憎らしく思える。
重い体をなんとか起こし、僕の上に乗りはしゃぐ結衣を捕まえ軽く額におはようのキスをする。
ありふれてるが幸せを感じる瞬間でもある。
結衣を抱えリビングへの階段を降りると、キッチンで妻の結季が訝しげにこちらを見つめている。
昨晩酔って帰った僕を戒めているのか、もしくは今日の家族サービスを催促しているのか。
どちらにせよ、ここは申し訳なさそうな顔をするのが正解だと僕は知っている。
先にあるように、僕には愛する妻と娘がいる。
結季とは友人の紹介で知り合い、僕の猛烈なアタックから交際がはじまり今に至る。
妻の結季は絶世の美女とまではいかないが、学生時代モデルにスカウトされるくらいの美人だ。
見た目とは裏腹に料理も得意で家庭的、かなり気が強いのがたまにキズだが自慢の妻である。
現在33歳の僕は、五年前に親友が設立した会社に立ち上げから加わり現在は専務取締役として働いている。
設立から8年、いわゆる芸能プロダクションとして女性モデルやタレントのスカウトから育成や管理を手掛けている。
夢を追い、華やかな世界に憧れる彼女達を夢の実現の為に手助けする。
建前上はそんな信念を掲げ、日々邁進している。
本音を言えば、かなり儲かる。
家賃25万のマンションに住み、車はベンツ、時計はパテック・フィリップ、靴はルブタン。
年齢にしてはかなり贅沢な暮らしをしているわけだ。
仕事柄、接待が多く夜は家を空ける事が多い。
それでも結季は小言を言いつつも家事に子育てに本当に良く僕を支えてくれている。
これ以上に望むものはない。
人とは欲深く愚かな生き物である。
昔なにかで見かけた言葉に僕ならこう返すだろう。
今の僕とは真逆の生き物だね。と…
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