第四話 幽霊探し
「行こうか」
「どこにですか?」
「幽霊を探しに」
「信じるんですか?!」
「いや。ただ非科学的な物を簡単に受け入れるほど僕は馬鹿じゃない。そして君の考えだとそこに外ヶ崎善次郎もいる。僕は幽霊の謎を解く、君は殺人犯を逮捕できる。一石二鳥だ」
急にやる気になった久山が天井を見ながら部屋をグルグルとしだす。
「ここには監視カメラの類はないの?」
「屋敷内にはありませんが、外には。と、言っても屋敷の裏にはないそうです」
「なるほどね」
久山がリビングを出て行く、そして屋敷までも出た。森野もそれについていき、二人は裏へと向かった。
少し小高い場所にある屋敷の裏には海が広がっている。低い崖っぷちで、監視カメラのない大富豪の屋敷の裏側にしては本当に何もなく、警戒心すらもない。
「泥棒に入ってくれと言わんばかりですね。せめて監視カメラはつけるものですけど」
「裏側を映されたら困るとか?」
先程の台車の時と同じ顔をする。
つまりこれはヒントだ。
まるでこの家を知っているかのような口ぶりだが、これが警視庁の頭脳の底力だと森野は思った。
そして裏側をくまなく観察する。
足跡が付く可能性を考えて足は踏み入れない。家の陰からまるでそこに犯人がいるかのように覗く。
壁には窓が並んでいるのみ。一階にリビングの大きな窓、二階には娯楽部屋らしいお洒落な淵の窓、そして三階には……
「八つの窓……え?八つ?」
森野は三階の様子を思い出す。階段の踊り場に一つ、そして部屋は六つ、捜索時、一部屋に窓が一つなのは確認済みだ、つまり窓の数は七つではないとおかしいのだ。
「まさか、三階に隠し部屋が」
「そのようだね」
興奮し始める森野に対し、先に気が付いていたのか久山は冷静だ。やはり推理では科捜研に勝てないのかもしれない。
「先輩に連絡して応援を呼びましょう!」
焦るその腕を久山はまたも掴んだ。
「僕の幽霊がまだ明かされていない。幽霊が部屋の開け方を知っているかもしれないよ?」
もう知っていると言った口ぶり。
「……ヒントを下さい。」
「これが最後のヒントだ。君が見た幽霊は、善次郎の子どもかもしれない」
「いえ、彼に子どもはいません」
「いるよ」
急に真面目な顔つきになる久山。
その目はウズウズと燃えていた。
「しかし身辺者を調べても子どもは一人もでてきませんでした」
「大富豪の得意技「お金で隠してしまおう」かもね。でもね、いるんだよ」
そして折り紙の入っていた封筒からもう一枚紙を出す。それは古く、ところどころ切れていた。
「家系図ですか?」
善次郎の名前もある。
「こ、これは?!」
家計簿とは逆で、今度は森野が久山の手からひったくった。
そこには善次郎の下に二人の子どもがいた。一人は「外ヶ崎宗一」そしてもう一人が……
「外ヶ崎……宗治……」
それよりも驚いたのがその二人の母親だ。「とも子」と書かれていた。宗治の母の名だ。
「これは俺? で、でも兄貴がいるなんて一言も聞いた事がないし、見た事もない」
何かの間違いだと震えながら家系図を持つ森野。
その前でその様子を見つめる久山がゆっくりと口を開いた。
「弟は兄を見る事が出来なかった。何故なら外ヶ崎宗一は監禁されていたからだ。ある理由で」
「それは一体?」
「その話はあとにしよう。善次郎は「外ヶ崎家の汚点」として宗一を世間から隠した。彼の母親を家政婦にし、妻の存在すらも隠した。妻・とも子は臨月でしばらくして弟・宗治が生まれた」
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