24.主なき従者

止まった時計の針を動かそうとして指を切った


その時計の針は誰かの骨で出来ており

文字盤には誰かの血で書かれた数字が滲んでいた


骨も血も主人の与り知らないところで時計に成り切りその証拠に

骨は刻刻と動くことをいつの間にやら使命にしている風であったし

血は血で早く乾いて時を刻みたいと思っているようだった


その者の胸は疼いていた

従者のこの裏切りに身を震わせていた

「己れの骨だ、己れの血だ」と一貫して主張した

真実のみをというあの宣誓の際に上げた右手をもう一度掲げ

血の滴る食指の切断面を突きつけて見せた――


主人のそんな有り様など知る由もないのだろう

骨も血も時を刻み出してからは一体となって喜ぶばかりで

もう誰かに従えることもないという解放感からか

自分たちは元元時計の針と文字盤に書かれた数字であったと偽るようになった

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